ドジャース・大谷 ドジャースタジアム7本目の場外弾の日は近い!?伝説スタージェルとの共通点
2025年5月14日(水)1時30分 スポーツニッポン
ドジャースタジアムの外野席外壁の裏側には、ホームベース形の記念プレートが6枚掲示されている。全て同球場での場外本塁打を記念したものだ。5月編の「Monthly Shohei」では、7枚目の最有力候補となる大谷翔平投手(30)のドジャースタジアム初場外弾の可能性や、同球場で最長不倒弾を放った伝説のスラッガーの凄さに迫る。(取材=奥田秀樹通信員)
ドジャースタジアムの外周コンコースから外野席を見上げると、左翼から右翼にかけてホームベース形のプレートが6枚並んでいる。全て場外本塁打を記念したプレートだ。
右打者が放った左翼側は4枚。ポール側からスタントン、タティス、ピアザ、マグワイアと並ぶ。左打者による右翼側は、ウィリー・スタージェル(パイレーツ)が放った同球場最長不倒の507フィート(約154.5メートル)と470フィート(約143.3メートル)の2枚だけだ。
大谷は昨年7月21日のレッドソックス戦で7枚目になり損ねた。30号ソロは右中間席を越え、屋根の下で看板付近に落ち、弾んで場外へ消えた。大谷も「目視できなかった」と振り返った473フィート(約144メートル)超特大弾。生え抜き18年目のカーショーが「あそこまで飛ばすのは見たことがない」と目を丸くするほどの一打だった。
ド軍のロバート・バンスコヨック打撃コーチは「翔平はいずれドジャースタジアムで場外弾を打つ。スイングスピード、ブラスト(高いスイング速度でバットの芯を捉えたスイングの数)は常にリーグトップクラス」と解説する。12日(日本時間13日)時点で大谷の平均スイングスピードはメジャー7位76.5マイル(約123キロ)ながら、ブラスト数62はメジャートップ。バレル率(長打になりやすい打球速度と角度の組み合わせの割合)24.5%、ハードヒット率(打球速度95マイル=約153キロ以上の打球の割合)66.4%は過去8年で最高の数字だ。
大谷の最長飛距離はエンゼルス時代の23年6月30日ダイヤモンドバックス戦の右翼への493フィート(約150.3メートル)。それを超える伝説級の一発が飛び出す日はそう遠くない。
≪スタージェルと大谷の共通点「誰も席を離れない」≫ドジャースタジアムの最長不倒記録を持つスタージェルは、歴代32位タイの通算475本塁打を誇る左の強打者で、何よりも飛距離が規格外だった。
パイレーツの実況アナウンサー、グレグ・ブラウン氏(64)は、インターン時代に現役時代の姿を目撃している。「彼は全米各地の球場に特大本塁打の記念物を残している」。交流戦がない当時はナ・リーグ球場の約半分で最長不倒記録を保持していると言われた。エクスポズ(現ナショナルズ)の本拠オリンピック・スタジアムでの本塁打は、当時の推定飛距離535フィート(約163メートル)。着弾地点の赤い座席は、黄色の座席に交換され、04年の球団移転時に外されて、カナダの野球殿堂に寄贈された。
1メートル88、85キロの強打者のパワーの源は何だったのか。ブラウン氏はバットをぐるぐる回す独特の「ウインドミルスイング」に注目し「投球を待つ間ずっと回していて、ボールが来る直前に準備を整える。打球音も飛び方も他の打者とは明らかに違った」と証言した。
スタージェルより5歳年下で、70年代にカブスやドジャースでプレーしたリック・マンディ氏(79)は、ド軍専属解説者兼実況アナウンサーを務めている。大谷がドジャースタジアムで場外弾を打てば、左打者では73年5月8日のスタージェルの470フィート弾以来、52年ぶり2人目となる。「2人は共通点が多い。パワーが桁外れで、打球が高く上がる。スタージェルも、大谷の打席も、誰も席を離れない。売店のスタッフさえ販売をやめ、打席を見つめている」と唯一無二のパワーが秘める魅力を説いた。
◇ウィリー・スタージェル 1940年3月6日生まれ、米オクラホマ州出身。58年にパイレーツと契約し、64年に一塁手や左翼手でレギュラーに定着。71年に48本塁打で初の本塁打王となり、チームを世界一に導く。73年に44本塁打で2度目の本塁打王、119打点で初の打点王に輝き、79年には39歳で史上最年長のシーズンMVPを受賞。82年に現役引退後はブレーブスで一塁ベースコーチなどを務めた。背番号8はパ軍の永久欠番で、88年に米国野球殿堂入り。01年に腎不全のため61歳で死去。パ軍一筋21年のメジャー通算成績は2360試合で2232安打、475本塁打、1540打点。
≪アドラー氏 大谷は「引っ張り」増 打つなら右翼≫大リーグ公式サイトでデータ分析を担当するデービッド・アドラー氏は、今季の大谷のミートポイントの変化から、場外弾が出る日は近いと予測した。
23年後半から打者が打球を打った際のバットの位置「コンタクトポイント」と、空振り時にもバットがボールに最も近づいた位置の「インターセプトポイント」の計測を開始。両ポイントとも投手寄りの選手ほど「引っ張り」が多く、捕手寄りなほど逆方向への「流し打ち」が多くなる。
「翔平はパワーヒッターの中では、誰よりもボールを引きつけて打っていると指摘してきた。だから中堅から左翼方向への本塁打が多い。ただ、今季は、そのポイントの数字に変化が見える」
24年の大谷の平均コンタクトポイントは、ホームベースの前方からマイナス3.7インチ(約9.4センチ)。今季はマイナス1.5インチ(約3.8センチ)で、彼のコンタクトポイントは2インチ(約5.1センチ)投手寄りに移動したということ。引っ張った打球が増えている」と指摘した。「特に打球速度95マイル(約153キロ)以上のハードヒットボールを見ると、コンタクトポイントはさらに前で、昨季より2.5インチ(約6.4センチ)も前だ」とも付け加えた。
「彼はいずれドジャースタジアムで場外弾を打つ。打つとなればやはり引っ張った時、右翼になるだろう」と分析家の視点から「その瞬間」を占った。(杉浦大介通信員)