涌井、ダルも心酔したトレーニングのスペシャリスト 異色の経歴を持つ71歳が、新天地に選んだのは...
2025年5月14日(水)8時38分 スポーツニッポン
イースタン・リーグ参加2年目のオイシックス新潟アルビレックスBCに異色の経歴を持った人物がいる。プロ野球選手としての経験はないが、西武、ロッテでトレーニングコーチなどを歴任した大迫幸一氏(71)だ。今季からトレーニングアドバイザーに就任。プロ野球の舞台を夢見る選手らを心身ともにサポートしている男が、本紙のインタビューに応じた。(取材・山田 忠範)
——ロッテを退団した15年以来、10年ぶりの球界復帰。オイシックスのトレーニングアドバイザーに就任したきっかけは?
「イースタン・リーグ1年目だった去年に大きく負け越し(41勝79敗6分けで最下位)て、球団が“厳しい指導者が欲しい”とのことだった。そこで知り合いを通じて“おもしろいのがいる”となって、自分のところにオファーが来た」
——西武で10年、ロッテで4年のトレーニングコーチの経験も買われた?
「自分は言いたいことを言うし、71歳だけど、まだまだ元気。チームを強くしたいし、1軍のあるNPBチームに選手を輩出していくため、武田監督や野間口ヘッドコーチらとも相談しながら、“何でも屋”として頑張っていきたい」
——西武時代は涌井(現中日)、炭谷、ロッテ時代は益田、鈴木大(現楽天)ら選手に寄り添いながらパフォーマンスの向上を支え、日本ハム時代のダルビッシュ(現パドレス)から相談も受けるなど選手からの人望は厚かった。
「(西武の退団が決まっていた2011年のシーズンの)最後は選手たちに胴上げもしてもらって、いい思い出になっている。もうプロ野球界には戻らないつもりだったけど、西武を退団した翌週にロッテから連絡があった。ありがたいことです」
——西武、ロッテで多くの選手をサポートした経験を還元するためにも、新天地ではどんな指導を心がけているか?
「一番は教育。レベル的には、そんなに変わらない。何が違うかというと、体力面と意識だと思う。(シーズン中に)1軍に上がるという目標がない中、どうモチベーションを持ってプレーするか。基本的にはドラフトで指名することが大きな目的で、勝った、負けたは関係ないのかもしれないけど、勝たないと個々の数字も残らないし、(各球団の)スカウトや編成も見てくれない。勝つ、という意識をまず持ってほしいし、そのために必要なことがあれば、サポートしてあげたい」
——西武、ロッテでも、若手が一流選手へと成長していく過程を見てきたと思うが。
「試合前の練習が終わりました、で終わりではだめ。“ロッカーでぼーっとしている時間があったら、足りないところを練習しろ”と選手には言っている」
——現在も涌井のオフの自主トレを担当している。プロで結果を残している選手たちの考え方や調整法などを伝えたりしているか?
「自分からは言わないようにしている。聞いてきたら、もちろん教える。何人かには“涌井さんは、どんな練習をしているんですか?”と聞かれた。投げる技術は素晴らしい。でも、そこに行くまでに、裏では体づくりであったり、いろいろなことをやっている。そこに行くまでには、どうすればいいか。伝えられるものは伝えている」
——今季もここまで15勝22敗と借金を抱えているが、新潟のファンは温かく見守っている。
「いずれはイースタン・リーグで頂点を狙えるようなチームになりたいし、ぜひ、ファンの皆さまの力で強くしていただきたい。夢をかなえるため、ともに進んでいけたらうれしいです」
○…西武、ロッテで計14年間、トレーニングコーチとして選手に寄り添ってきた大迫氏は、現在も各球団に多くの“教え子”がいる。現役を引退しても編成部員やスカウトに転身するなど幅広い人脈を持っているだけに、ドラフト指名を目指して汗を流す選手たちへ多くの助言を送ることができそう。「球場でいろいろな人と会って“大迫さん、何やっているんですか?”と言われる。離れていた期間が長かったから懐かしい感じがいい」と充実の日々を過ごしている。
◇大迫 幸一(おおさこ・こういち)1953年(昭28)7月19日生まれ、東京都出身の71歳。国士舘大体育学部を卒業後、フィットネスジムなどを経営。01年から西武で、12年からはロッテで、1軍トレーニングコーチなどを歴任。プロ野球選手だけでなく、水泳やゴルファーのトレーニングアドバイザーなども務める。今季からオイシックスでトレーニングアドバイザーに就任。1メートル73、79キロ。