阪神・岩崎 亡き恩師・斉藤鉄夫さんが導いてくれた道 座右の銘「続けること」の原点とは

2025年5月18日(日)5時15分 スポーツニッポン

 ◇セ・リーグ 阪神5—2広島(2025年5月17日 甲子園)

 【記者フリートーク】阪神・岩崎は、座右の銘を聞かれると常に、こう答えている。

 「続けること」

 野球教室で子供たちと向き合う時も「続けることを大事にしてください。継続。この言葉を大切にして野球をやってきました」と投げかけている。

 「続けること」「継続」。アスリートなら息をするほど当たり前なのかもしれない。それでも、地道に踏みしめる一歩、一歩が予想だにしない場所に連れて行ってくれることを岩崎はずっと前から知っている。

 原体験は、野球を始めた中学1年の時。初めて指導を受けたコーチで、恩師の斉藤鉄夫さんに「毎日、俺の家まで走って来い」と命じられたことが始まりだった。指定されたルートは往復で約8キロ。2人で一つだけ決めたルールが自宅を出た時刻を書いた紙を斉藤さんの自宅の郵便ポストに入れて引き返すことだった。

 斉藤さんは翌朝、朝刊と一緒に、その紙を回収して走ってきたかをチェック。岩崎は高校入学直後までの3年間、一日も欠かさず小さな紙切れを握りしめて走り続けた。

 「どんなに暑くても寒くても、体調が悪くても、雨がめっちゃ降っていようと、部活後に寝落ちして夜中に目が覚めてからでも、本当に毎日走り続けた。一日も欠かしてない。距離をカットしたり、途中で歩いてしまったりしたこともあったけど、続けましたね」

 岩崎だけでなく過去にも多くの教え子たちにこの“ミッション”を課した斉藤さんは後に「本当に3年間続けたのはお前だけだ」と本人に伝え、分厚くなった1000枚以上の紙切れを見せてくれたという。

 「継続することを好きになった原点です」

 昨秋、斉藤さんは91歳で亡くなった。23年の年末に会ったのが最後。「また静岡に帰ってきた時に会えたらいいですね」と再会を約束したが「少しだけ間に合いませんでした」と願いはかなわなかった。「2年前が最後になりましたけど、自分にとっては凄く大切な時間でした」

 今でも帰省した際は思い出の自宅まで走っている。「あの道は必ず走っている。誰も住んでいないけど家の前までは行って。斉藤さんには続けることの大切さ、強さを教えてもらった。おかげでプロまで上がれて、まだ現役を続けられている。まだまだ続けていけるように。どうか安らかに眠ってほしいです。ありがとうございました」

 ただひたすらに前だけを向いて走ってきた道が今、通算100セーブという節目につながっていたのだと実感する。それは斉藤さんが導いてくれた“道”でもあった。 (阪神担当・遠藤 礼)

スポーツニッポン

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