琢磨インディ500密着:グリッドは大きくポジションアップ「クルーやエンジニアのおかげ」

2018年5月21日(月)13時18分 AUTOSPORT web

 今年のインディ500予選初日のバンプデイを終えた段階で、チーム間の勢力図ははっきりとしたものになり、佐藤琢磨のレイホール・レターマン・ラニガンの3台は明らかに苦戦していた。


 プラクティスからの暗中模索の状態から抜け出すにはほど遠く、今年はエントリー35台から2台がバンプアウトされるわけで、その2台にならないように必死だった。


 かろうじて琢磨29番手、グラハム・レイホール30番手、オリオール・セルビア31番手と薄氷を踏むような思いで予選を通過したのだった。


 予選2日目のポールデイは、初日の予選10番手から33番手と、予選トップからの9番手までの2グループに分けられ、予選後方から順に1回ずつアタックし、そのタイムでグリッドが確定する。


 つまりレイホールの3台は予選開始早々にタイムアタックに出ることになる。その予選開始前に45分間のプラクティスがあったが、レイホールの3台はその時間で最後のトライを試みていた。


 特に琢磨はトウに入ったものの、ノートウ(単独)でのスピードも18番手まで上がり、向上の兆しも見えていた。決して18番手という順位は褒められたものではないが、今のレイホールでは十分にポジティブな要素だった。


 琢磨の表情もいくらか明るくなったように見えた。


「試してみて良くなった所もあるので、予選にはいかせると思う」と言い残して、予選に向かった。


 昨日のように雨を気にすることもなかったが、気温の上昇や風向きは予選にとっては重要な要素だった。


 アテンプトのラインに並んだ30号車は、セルビア、レイホールの次にアタックにのぞんだが、琢磨はマシンに乗り込むギリギリまで、エンジニアのエド・ジョーンズで携帯で連絡を取り合っていた。メカニックもマシンの回りを忙しなく動きタイヤやウイングの調整をしている。

ポールデイのアテンプトに挑む佐藤琢磨


 オリオールとレイホールは、前日同様に225mph台の平凡なタイムに終わり、今日もタイムアップは望めないかと思っていた。だが、琢磨はコースに出るとタイム計測開始1周目から、順調なタイムを刻んでいく。


1周目/226.856mphに始まり、2周目/226.637、3周目/226.468、4周目/226.268と計測4ラップとも時速226マイル台でまとめあげて見せた。昨日から見れば大きなジャンプアップだった。

前日よりスピードアップして走行を終える佐藤琢磨


 しかも琢磨の後に走り、昨日琢磨より好タイムだったライバルチームが、タイムを出せずにどんどんと順位を落としていったのだ。


 おそらくポジションを上げるために攻めてセッティングをしていたであろうアンドレッティ・オートスポート勢はザック・ビーチ、ステファン・ウイルソンの若手は沈み、アレクサンダー・ロッシなどは4ラップ目に大きくタイムを落とし最後列の32番手まで落ちてしまったのだ。原因はタイヤのパンクチャーだったと言われているが。


 他にもプラクティスでは好調だったシュミット・ピーターソンのロバート・ウィケンスやチップ・ガナッシのエド・ジョーンズらも琢磨より後方に落ちている。


 琢磨の古巣AJ.フォイトのトニー・カナーン、マテウス・レイストの2台が10番手、11番手と大健闘しており、シボレーパワーの底力を見せつけられた。


 本当にインディ500の予選というのは、奥が深く終わってみるまでわからないと、つくづく思う。


 もちろん昨年4番手2列目に並んだ琢磨にして見れば、16番手というグリッドを手放しで喜ぶことはないだろうが、昨日から今日にかけての大きなポジションアップについては、チームのレイホールにとっても明るい話題だった。


「16番手というポジションで大喜びはできませんけど、今のチーム3台の現状を考えるとポジティブな1日だったと思います」


「昨日の反省をもとに大きく考え方を変えて、絶対的なスピードは見つかっていなかったので、少しダウンフォースを付けてでも4周のアベレージスピードを落とさないようにしようと考えました」


「僕の順番の時には気温も上がっていて、いやでもダウンフォースを付けなきゃいけない状態だったし、タイヤの内圧も調整したりして、4ラップとも226mphをキープできたし良かったと思います」


「僕のクルマのクルーもエンジニアたちも、0.1マイルスピード上げるために本当に良くやってくれていたし、彼らのおかげでこのポジションになれたんだと思います」とチームに対する感謝も忘れなかった。


「明日月曜からまた決勝に向けてのクルマ作りが始まりますが、今日の予選で見つけた良い部分を決勝のマシンにいかすこともできるし、プラクティスの中でパック(集団)の中では良い部分も見つかっているので、月曜と金曜のカーブデイで良いマシンに仕上げたいですね」


 2012年に代表されるように、インディ500では後方から追い上げるレースを幾度か見せてきた琢磨。決勝も予選と同じようなビックジャンプを期待したい。

サインに応じる佐藤琢磨

ファンとの触れ合いに大きな笑顔を見せる琢磨


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