高級クーペにこそ必要だった人間主導のチューニング。レクサスLC500【ベース車両一刀両断!!︎】
2020年5月22日(金)17時27分 AUTOSPORT web
モータースポーツ専門誌のauto sport本誌では現在、スポーツカーをはじめ、ホットハッチ、セダン、スポーツクーペなどあらゆる市販ロードカーを“ぶった切る”ピリ辛・市販車インプレッションを不定期連載している。同企画に登場するのは、モータースポーツの中でも、いわゆる“箱車レース”と呼ばれるカテゴリーにおいて、レーシングマシンのベースとなるロードカーたちだ。
今回はそんな『ベースマシン一刀両断!!』シリーズの第18回目レクサスLC500編をお届けする。 2017年にスーパーGT GT500クラスに投入されたレクサスのラグジュアリークーペ、LC500。内外装には気品が感じられるが、肝心の乗り心地はどうだろうか?
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2019年スーパーGT GT500クラスで戴冠を果たし有終の美を飾ったレクサスLC500。販売台数がかなり少ないため、街中で目にしたことがある人は多くないだろう。
メーカーが“ラグジュアリークーペ”とアピールするように、LC500は純粋なスポーツカーでもなければ、スーパーカーでもない。
上質で高性能、スタイリッシュで快適なクーペ、というのがコンセプトなのだろう。大排気量エンジンのFR、ロングノーズに低いキャビン、2+2シーターというフォーマットは、まさに旧き良き時代からの伝統的クーペ。日本にはあまり例がなく、ドイツでも類を見ない。
エンジンはLC500が5.0リッターV8、ハイブリッド仕様のLC500hが3.5リッターV6となる。
今回の試乗車は通常のLC500。排気音は極めて乾いた快音で、まるでフェラーリのV8NAを回しているような気分になる。
しっかりと調教されていて、低回転域や低負荷時はまるで静かだ。スロットルペダルを踏み込み、エンジンの回転数が上がると豹変するのだが、パワフルという印象は薄い。
それはノンターボという点も影響しているだろうが、2tという車両重量や太すぎるタイヤも足を引っ張っている。
トランスミッションは10速ATで、低いギヤではパワーを抑えているようだ。ヨーロッパのスポーツモデルのような“ガツガツ感”はまったくなくスムーズさを維持したうえで、それなりに素早くシフトしようとする。
室内は意外なほど広々としていて、圧迫感はなくラグジュアリーな素材やデザインも相まって快適だ。
このクルマはホイールベースも長いので、少し緩めのジワッとした、接地感の高さが安定性を引き出すような乗り心地を求めたくなるところだ。
しかし、残念ながら走り出してすぐに、その期待は裏切られる。前後左右に細かな揺すられ感が残り、目眩するほど頭が振り回されるのだ。
■LC500に必要なのは「人の感覚に基づくチューニング」
その原因は、ゆるすぎるコンプライアンス・ブッシュだ。20インチを超える大径タイヤからの入力を逃がす狙いなのだろうが、これが災いして信号などで停止したあとには、ロッキングチェアのように車体が前後に揺れるのだ。
これはLSでも共通したレクサス車の特徴である。震度4程度では何も感じないくらいの“強者”でなければ、かなり不快な乗り心地である。
おそらく、開発陣はとにかくハーシュネスを小さくしたかったのだろう。それを実現するためにテスターの数値にこだわってしまうと、コンプライアンス・ブッシュはとにかくゆるくするしかなくなる。
もっとテストドライバーの能力を信じ人の感覚に基づいてチューニングすれば、これほど酷いことにはならないはずだ。
また、ボディ剛性が不足しているようで、タイヤの接地感は薄い。エンジンルームを見るとストラットタワーの上部がアルミになっているのだが、アルミなのは頂点だけで剛性的には確実に不利な構造になっている。
おそらく、見た目が立体的なアルミのほうがカッコイイと思ったのだろう……。
プロモーションとしては「サーキットへ繋がる」というようなフレーズも出ているが、そのままサーキットで性能が発揮できるようなラグジュアリークーペに、何の価値があるのか?
「本質的に高性能で、快適性の高いクーペをベースにレーシングカーを作ったら素性が良かったので、速くてチャンピオンになれました」というのがスジではないのか。
セラミックのブレーキや快音のV8よりも、まずはマトモな乗り心地がLC500には必要なのだ。
取り回しや視界を含めて、普通に運転するにあたって不都合な点はない。だからこそ個人的には、タイヤをフロント19インチ、リヤ18インチくらいに落とし、足まわりをセッティングし直して、真のラグジュアリークーペに仕立て直したい素材だと思っている。
■レクサスLC500 主要諸元
車体 | |
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車名型式 | DBA-URZ100-ACUBH |
全長×全幅×全高 | 4770mm×1920mm×1345mm |
ホイールベース | 2870mm |
トレッド 前/後 | 1630mm/1635mm |
最低地上高 | 135mm |
車両重量 | 1940kg |
乗車定員 | 4名 |
駆動方式 | FR |
トランスミッション | 10速AT |
ステアリング | 電動パワーステアリング |
サスペンション前/後 | マルチリンク(スタビライザー付)/マルチリンク(スタビライザー付) |
ブレーキ 前/後 | ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク |
タイヤサイズ | 前:245/45RF20 後:275/40RF20 |
エンジン | |
型式 | 2UR-GSE |
形式 | V型8気筒 |
排気量 | 4968cc |
内径×行程 | 94.0mm×89.5mm |
最高出力 | 351kW(477ps)/7100rpm |
最大トルク | 540Nm(55.1kgm)/4800rpm |
使用燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
タンク容量 | 82L |
auto sport 2019年11月29日号 No.1519より転載