スープラの先祖「セリカXX」に試乗! 39年前のクーペは今でも快適?

2024年3月13日(水)8時0分 マイナビニュース

日本ではかつて、「スペシャリティカー」と呼ばれるクルマが流行したことがあった。ホンダ「プレリュード」や日産「レパード」などがしのぎを削る中、トヨタ車で人気を誇ったのが「セリカ」だ。当時はオシャレで快適なクルマだった「セリカXX」は、令和に乗っても気持ちいいのか。KINTOに借りて乗ってみた。
スペシャリティカーとしてはリーズナブル?
KINTOが展開する「特選旧車レンタカー」では、あこがれの旧車に気軽に乗ることができる。筆者も「セリカ 1600GT」や「MR2」などに試乗してきた。今回の試乗車は1985年式のトヨタ「セリカXX 2000GT」だ。「スープラ」の先祖ともいわれるセリカXXは、いったいどんなクルマなのか。
セリカはトヨタが1970年から2006年まで7世代にわたって製造していたクーペだ。国内で初めて登場したスペシャリティカー(スポーツカーのスタイリングに乗用車の快適性を持たせたクルマを指す)として、日本のみならず欧米でも人気を博した。試乗したセリカXXは、スポーツ仕様として1982年に登場した追加グレードである。
セリカXXの最大のトピックは、これまでのセリカよりもロングノーズとなり、新開発の1,988cc、直列6気筒DOHCエンジンを搭載していたこと。高速で回転するシリンダーヘッドや常に高い燃焼効果を得られる「T-VIS」(吸気制御バルブをエンジン回転数に応じて開閉するシステム)を採用することで、160PSの最高出力と低燃費を両立した。
それでいて、販売価格は約218万円(当時)とリーズナブルだった。比較対象ではないかもしれないが、1980年代初頭、似たようなスタイリングで日本を代表するスポーツカーとなっていた日産「フェアレディZ 300ZX 2シーター」が約325万円、トヨタ「ソアラ 2800GT エクストラ」が約300万円だったことを考えると、排気量など異なる点は多いものの、当時のセリカXXのコスパの高さがわかっていただけるだろう。
試乗したセリカXXのボディカラーは、ほんの少しクリーム色がかったようにも見えるホワイト。全体のフォルムは現代のクルマでは見かけなくなった角張ったデザインで、車外から見るととても窮屈そうな印象だが、乗り込むとその考えは一変した。運転席からの視界は想像以上に良好で、フロントはロングノーズになっているもののゆるやかにカーブしているため、長さはまったく気にならない。
狭い路地なども走行してみたが、スペシャリティカーにしては取り回しがよかった。ちなみにボディサイズは全長4,660mm、全幅1,685mm、全高1,315mmだ。
このクラスにしては十分なパワー
肝心の走りはというと、率直にいえば速くはない。ただそれは、ほんの少しアクセルを踏み込んだだけで素早い加速力が得られる現代のクルマに乗り慣れてしまっているからであって、当時の2Lクラスのスペシャリティカーとしては十分なパワーだ。
乗り心地もすこぶるよく、路面の凹凸や路肩の段差の揺れもさほど気にならない。幹線道路はもちろん、路地でも思った以上にキビキビ走れるのには驚いた。加えて、KINTOが十分に整備を尽くしている極上車なだけあって、旧車にありがちな硬くて重いクラッチとは無縁。スムーズにギアチェンジできるし、エンジンの回転数を上げたときの小気味よいエンジンサウンドも健在だ。急ブレーキにならない程度の強めの減速をしても、ブレーキがしっかりと効いてくれる。そういった面でも、正規販売店のメンテンスが施された旧車には安心して乗れる。
2シーターなので仕方ないが、後席への乗り込みには苦労する。乗り込むときはまだいいのだが、座ると足の置き場に困るほど狭い。シートは柔らかく、座面が深く沈み込むため、いざ降りようとすると足場が狭くて踏ん張れない。体を起こして車外に出るのには苦戦した。大人4人が乗車できる構造にはなっているものの、後席は体の小さな子どもが乗るか、荷室として使うほうが良さそうだ。
そのほかの使い勝手も確かめてみた。まずラゲッジスペースだが、こちらは思っていた以上に広く、大きめのボストンバッグでも2〜3個なら余裕で積めそう。スペースに深さはないが、後席の背もたれを倒せばラゲッジスペースとの境目がなくなるため、長尺の荷物なども積みやすいはずだ。
この時代のスポーツカーではよく見かけたリトラクタブルヘッドライトもチェックしてみた。ロービームにするとヘッドライトが起き上がる仕組みだが、点灯するまでに3秒ほどのタイムラグがある。素早くライトを点灯させたいときはやきもきするだろう。個人的には、リトラクタブルではなく通常のヘッドライトのほうが使いやすいと感じた。
セリカXXはちょうどいい旧車?
当然のことだが、セリカXXは初代セリカ1600GTと比べると格段に進化している。計器類も見やすくなっているし、運転席の座り心地も向上していて、快適なドライブを楽しむことができる。
旧車には興味があっても、古すぎる車種はハンドルが重かったり、アイドリングが不安定だったりして乗りにくいことがある。1〜2時間程度の運転ならまだしも、半日以上の長距離走行となると、それなりの覚悟が必要だろう。ただセリカXXなら、39年前のクルマとは思えないほど快適だし、内装もそこまで古さを感じない。つまり、ちょうどいい旧車なのだ。それでいてスポーツカー並みの走りを堪能できるとなれば、借りない手はない。1人でのドライブはもちろん、子どもを含めた2〜3人程度での1泊旅行も余裕でこなせるはずだ。
セリカXXをレンタルしたい場合は「KINTO Vintage Club」にアクセスしてみよう。ただ、トヨタのどの店舗で借りられるかは、時期によって変わるそうだ。2024年5月31日までは「埼玉トヨペット・GR Garage 浦和美園」で貸し出し中。レンタル料金は8時間3万円〜となっている。
室井大和 むろいやまと 1982年栃木県生まれ。陸上自衛隊退官後に出版社の記者、編集者を務める。クルマ好きが高じて指定自動車教習所指導員として約10年間、クルマとバイクの実技指導を経験。その後、ライターとして独立。自動車メーカーのテキスト監修、バイクメーカーのSNS運用などを手掛ける。 この著者の記事一覧はこちら

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