【現地発】ワールドカップまで1年――。メガクラブ移籍か、絶対的地位の確立か。三笘薫は何を求めるか「もちろんそれは1つの目標」
2025年5月30日(金)6時0分 ココカラネクスト

充実の1年を送った三笘に相次いだ移籍の問い。その質問に本人はどう答えたのか。(C)Getty Images
精一杯に答えた三笘の“心情”
ブライトンに所属する三笘薫の周辺があわただしい。
今季の三笘はプレミアリーグ36試合に出場して10得点、4アシストを記録。2021年8月にヨーロッパにやってきて以来、単純な数字のみで見ても最高の1年を送った。加えて年間を通したパフォーマンスの観点を含めた総合的な判断でも、十分な内容だったと捉えていいだろう(完全主義者である本人からすると、それとは程遠いものだと一蹴されるはずだが……)。
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周囲を納得させた結果が、今年1月に開いた冬の移籍市場で、サウジアラビアの名門アル・ナスルからの8000万ポンド(約153億円)とも言われた2度に渡る高額オファーであり、シーズン中盤から沸き上がり続けているメガクラブ移籍の噂である。
本人はどのような想いを抱いているのか。現地時間5月25日に行われた今季のプレミアリーグ最終節(トットナム戦)後の囲み取材で、記者の一人が三笘に次のような内容の質問を投げかけた。
「(1月に)サウジへ行かなかったことはフットボーラーとして意思表明であり、移籍するのであれば、レベルアップができるクラブ。サッカー選手として成長できる環境でなければ、移籍の意味がないという考えか?」
これに「そう捉えてもらって大丈夫かなと思います」と間髪入れずに答えた三笘は、「レベルアップという意味では(昨季に)ヨーロッパリーグを経験して、例えばチャンピオンズリーグ(CL)という舞台もある。選手として魅力を感じるのは自然だと思うが?」という質問に対しても、少し笑みを浮かべながら次のように答えてくれた。
「(どうしても去就の話を)引き出したいんですね(笑)。まあまあ、そうっすね。もちろんそれは1つの目標ですけど。目の前のことをやっていけば出てくることかなと思うので。もちろん、将来のことは分からない。まずは、怪我をしっかりと治して、次のシーズンに臨むってところと、コンディションを上げることだけかなと思います」
取材前には、ブライトンの広報担当を通じて「移籍に関することは答えられない」としていたが、それでも、今言える精一杯の応対をしてくれるのが三笘と言う男である。
この言葉からだけでも、彼の心情はうかがい知ることができるのではないだろうか。今月20日に28歳となり、サッカー選手として最も脂の乗った年齢を迎えた三笘は、中堅クラブを“卒業”してステップアップするのに、今夏がラストチャンスとなる可能性も高い。
そうした動向は、必然的な流れだけに、一般論で考えても、彼がどこに照準を合わせているのかは容易に計り知れる。ブライトンのサポーターでさえも批判することはできないはずだ。
無論、移籍が決まれば、シーガルズ(ブライトンの愛称)ファンは大きな悲しみに包まれるだろう。三笘は、現チームの中核であり、クラブのアイコンとも言える存在。何より、特大な戦力ダウンになるのは必至である。

バイエルン移籍報道なども出ている三笘。そうした喧騒にクラブ関係者も黙ってはいなかった。(C)Getty Images
三笘の引き留めは「支障をもたらす可能性もある」
思い出されるのが、最終節から1週間前の出来事である。
三笘が途中出場から自身のゴールを含む2得点に絡む活躍を見せた第37節のリバプール戦後、スタジアムからブライトン市街地へと戻る満員電車の中のことだった。筆者の後ろに立っていた、酒に酔って少し頬を赤らめた初老のサポーターが「日本から来ているのかい? 私は昨年日本を訪れたよ。とても良い国だ」と、話しかけてきた。
筆者は面倒だなと思いつつも、「ミトマは移籍すると思いますか?」と聞いてみた。すると男性は「カオルは絶対に残るはずだ!」と豪語。しかし、それも束の間、「でももしブライトンを出ることになっても、それは致し方ない。我々にはCL出場の可能性がなくなり、カオルはCLでプレーすべきレベルの選手だから……」と急激にトーンダウンしていった。
そして、三笘の移籍に関する噂話が再び熱を帯びた状況で迎えた、敵地でのトッテナムとの最終戦前。スパーズ(トッテナムの愛称)の番記者と談笑している最中にも「ミトマはどこのクラブに行くんだい?」と質問された。試合後には、懇意にしているブライトンの番記者で、自身もブライトン・ファンという彼に「残念だが、これが(三笘を見る)最後の試合になるのかな?」と、悲しげな顔で問いかけられた。
さらに加えれば、ブライトンの関係者と世間話を交わした際にも、こう語っていた。
「もちろん、カオルはチームで重要な存在だから、(上層部は)引き留められるのであれば、引き留めたいのは間違いないはずだ。ただ、このクラブのビジネスモデルを考えても、出ていきたい選手を引き留めることはできない。
これまでの成功例を見ても分かるとおり、若い選手を獲得して成長させていくのがブライトンのやり方であり、無理に止めるようなことをしたら、今後に若い選手をチームに連れてくる際に支障をもたらす可能性もある。もしかしたら、(7年間クラブに在籍し、33歳でドルトムントに移籍した)パスカル・グロスのような展開もあるかもしれないから、それに期待したいけど(笑)」
ブライトンに関わる誰もが認めたくない事実である一方、現地にいる関係者はもちろん、ファンでさえも、三笘が今夏中にバイエルンやアーセナルといったCLへの出場権を持つヨーロッパの有力クラブへ移籍するのが「既定路線だ」と考えている。

ワールドカップ出場を決めた日本代表の絶対的主力である三笘は、代表での青写真をいかに描いているのか。(C)Getty Images
「何を言っても何か言われるだけなんで」
一方で、ワールドカップまで1年となったタイミングでの移籍は、新たな環境に順応できないなどのリスクを兼ねるのも確かだ。あえてそうした状況を回避する選手もいるが、このことについて本人は、「人それぞれだと思いますけどね。僕はどうか分からないですね……」と話している。
そして今後について再び問われた三笘は、「いや、僕も本当に何も言えないです。分かんないですし、何を言っても何か言われるだけなんで。今はまず自分の身体を治すことだけですね、しっかりと。代表が呼ばれてはないので、その期間を利用して、まずは治して次のシーズンに臨むことだけかなと思います」と言うに留めた。
1年の激闘を終えた最後の取材を終え、ミックスゾーンを立ち去る三笘の後ろ姿に、来シーズン以降も彼のプレーを間近で見続けたい筆者は懇願するかのようにこう投げかけた。
「移籍するなら、イングランド国内でお願いしますね!」
一瞬だけ後ろを振りむいた彼は、こちらに笑みを浮かべながら去っていった。
総合的に考えれば、今夏中のメガクラブ移籍は100パーセントに近い確率で起こるに違いない。ただ、その行先がイングランド国内なのか、それとも欧州の有力クラブなのかは、いまだ決まっていないというのが現状だ。
いったい、どのような結末が待っているのかは、まだ分からない。いずれにしても、しばらくは三笘の動向から目が離せない状況が続きそうだ。
[取材・文:松澤浩三 Text by Kozo Matsuzawa]
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