グリッケンハウス、30時間テストを完了。新型ル・マン・ハイパーカー初陣に向け「信頼性は心強い」

2021年6月3日(木)11時1分 AUTOSPORT web

 WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに第2戦からデビューするスクーデリア・キャメロン・グリッケンハウス(SCG)のドライバー、ピポ・デラーニによれば、先日行なわれた『グリッケンハウス007 LMH』の30時間テストでは、マシンの信頼性に「とても心強い」兆候が感じられたという。


 テストは5月の28〜29日、スペインのモーターランド・アラゴンで行なわれた。ピポ・モチュール製V8エンジンを搭載したノンハイブリッドの新型ル・マン・ハイパーカー(LMH)は、GT3のレース出場のため不在となったロマン・デュマを除く6人のドライバー、すなわちデラーニ、ライアン・ブリスコー、リチャード・ウェストブルック、フランク・マイルー、オリビエ・プラ、グスタボ・メネゼスの手によりドライブされた。


 007 LMHは来週末にポルトガルのアルガルベ・インターナショナル・サーキットで行なわれるWEC第2戦ポルティマオ8時間レースで、ブリスコー/ウェストブルック/デュマがドライブしレースデビューを迎える予定だ。




 セブリング12時間を3度制しているデラーニは、いくつかの小さな問題はあったものの、クルマは安定したペースで走ることができ、目標は達成されたとSportscar365に対し語っている。


「ドライバーというのは、パフォーマンスに関して、どこを改善できるかなどの詳細を常に考えているものだ」とデラーニは説明している。


「だけど、それは今回のテストの本質ではなかった」


「とにかく走って、走って、走ることが重要だった。そして、僕らはそれを成し遂げることができた。とてもポジティブで、自信を与えてくれるものだったよ」


「それは、今年のル・マンを純粋なスピードではなく、信頼性によって勝てる可能性があるという希望を与えてくれた」


「もちろん、まだやるべきことはある。だけど、いまマシンが持てる力を発揮して走ることができるというのはとても心強いし、テストで壊れたのは簡単に直せるものばかりだった。その点においては、非常にポジティブだ」


 3月にイタリアのモンツァで行なわれた007 LMHの2回目のテストでステアリングを握っていたデラーニは、それ以降クルマが大幅に進歩したことを示唆している。


「モンツァではトラクションコントロールなど、いくつかのものが機能しなかった」とデラーニ。


「いくつかのシステムを機能させることができているという点で、いまは良い進化ができている」


「トラクションコントロールをよりスムーズにするため、やるべきことはまだたくさんある。だけど、チームがモンツァから今回のテストに至るまでに、車内のすべての電子機器とシステムを急ピッチで開発してくれたことは心強い」


 SCGのオーナーであるジム・グリッケンハウスは、テスト中に「実際の問題は発生しなかった」と述べ、バレルンガ、モンツァ、そして今回のスペインでのテストにわたって合計8000kmを走行したあとに破損したケーブルが主な障害だった、という。


「我々はより良いケーブルを作っているところだ。より確実なものにしたい」とグリッケンハウスはSportscar365に対し語った。


「我々は最終的には多くのことを行なったが、問題が発生すべきことをテストし、その場合はただちにマシンをガレージに入れた」


「給油とタイヤ交換など、クルーに対するテストも数多くこなした。クルマはとても強い。走りに走った。708号車については(トータルで)10,000kmだ」


「708号車は現在、完全なるリビルトを行なっており、シャシーは交換される」


「我々はレースのように24時間を走り、最後の4時間は(方針を)変更した。ノーズを外し、スプリングに問題が発生した状況をシミュレートした」




■『第2世代』シャシーでは、20kgの軽量化を達成



 アラゴンには新たなシャシーである709号車も赤いカラーリングを施して持ち込まれ、ポルティマオでのレースを前にシェイクダウンが行なわれた。


 シャシー交換ののち第3戦のモンツァに投入される708号車について、グリッケンハウスは「第2世代」のホモロゲートされたシャシーになると説明している。それは、これまでサーキットテストの大半を行なってきたオリジナルのものより20kg軽量化されるという。


「クラッシュテストのあと、シャシーから20kgの重量を減らすことができた」とグリッケンハウスは説明している。


「シャシーに問題はなかった。重量が20kg軽くなったことにより、クルマのバランスは少し良くなった。709号車は(すでに)この新しいシャシーになっている」




 アラゴンでのテストは、ミシュランのリヤ2輪駆動向けの新たなLMHタイヤを使用した、SCGのもっとも大規模な走行セッションとなった。SCGのタイヤは、トヨタGR010ハイブリッドで使用されている四輪駆動のタイヤや、アルピーヌ・エンデュランス・チームのノンハイブリッドLMP1マシン向けのタイヤとは異なるものだ。


 これについて、デラーニは次のように述べている。


「僕はひとりで、また他のドライバーとシェアして、レース・スティントを走った。タイヤに関するいくつかの作業を組み合わせ、ひとりが使ったタイヤをもうひとりも履いてみたりした」


「この面では、いくつかの点において、実際のパフォーマンスにおける有望かつポジティブな兆候が見られた。そして、他の点ではいくつかの疑問が生じていた」


「トラックコンディションが大きく変化するサーキットなので、その点では非常に難しかった」


「そして、熱がクルマのフィーリングを変える。だが総合的にみればタイヤに対して要求の高いトラックなので、とてもポジティブなものだった」


 ミシュランのタイヤはダブルスティントの前半では概ね良好に走行できるが、2スティント目では予想よりも早くタイムが落ちることが分かったと、グリッケンハウスは語っている。


 またグリッケンハウスによれば、ミシュランは今回、2021年のシーズン後に後輪駆動車で使用される可能性のある「次世代」タイヤも持ち込んでおり、このスペックはレースシミュレーション走行を通じて、よりデグラデーションが少ないものだったという。


■LMP2との同時走行で、タイム差が判明


 アラゴンではリシ・コンペティツィオーネとドラゴンスピードがオレカ07・ギブソンを持ち込んでテストを行なっており、グリッケンハウスとしてはLMP2マシンとのギャップを直接観察できる機会ともなった。


 007 LMHはダブルスティントの前半でLMP2よりも「1.2〜1.5秒」ほど速かった、とグリッケンハウス。だが、2スティント目ではその差が劇的に縮まったという。


 グリッケンハウスは、レースにおいてふたつのプロトタイプクラスの間での適切な“階層化”を作り上げるためには、最初のスティントでのマージンをさらに大きくする必要があるという懸念を表明している。


「アラゴンでは、LMP2のスティント中の最速ラップよりも、明らかに1.5秒速かった」とグリッケンハウス。


「だが、タイヤが2スティント目に入ると、そうはならなかった。これは単に物理の法則だ」


「タイヤがなくなると、誰も1秒半を取り戻すことはできない。ACO(フランス西部自動車クラブ)はそれを知っている。誰もショックを受ける必要はない。トヨタが言う『LMP2とは異なるフィールドにいる必要がある』というコメントに耳を傾けるのなら、それが答えだ」

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