「俺は本当に、障がい者なのかもしれない」授業中に静かにできない“ひょうきん者の中学生”→検査でわかった『驚きの結果』

2025年5月18日(日)17時0分 文春オンライン

「おそらく、何らかの障がいがあるのでは……」。中学時代、担任の教師のすすめで「障がい」の有無を確認するテストを受けさせられた、札幌のギャグ男さん(28)。テストで家の絵を描いたり、数字を数えるうちに、大人たちの顔色がみるみる変わっていく。テスト終了後、彼に突きつけられた「驚きの結果」とは? 新刊 『普通じゃない:知能が小3で止まったぼくがラッパーをやっているわけ』 (彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/ 後編 を読む)



写真はイメージ ©getty


◆◆◆


ひょうきん者の中学生


 地獄の小学校時代を耐え抜いて、俺は中学生になった。


 周りと同じように、地元の公立校に進んだんだ。この頃の俺は、いじめられっ子から抜け出して「クラスのひょうきん者」みたいなポジションに収まっていた。地獄の時代から比べたら、大した出世だ。お笑い番組と、新庄のおかげだな。


 中学に入ってすぐの頃は、ほんと楽しかったな。


 いろんな小学校から、知らないヤツがたくさん来てさ。まったく新しい環境で、新しい友だちがたくさんできた。


 ただ授業の方は、相変わらず頭に入ってこなかった。


 特に英語なんかはお手上げ状態だ。いきなり「ABCD……」なんて言われても、そんなもん習ってないし。英単語とか文法とかの前に、そもそもアルファベットが何なのか理解できなかった。


 だから授業中は寝てるか、起きてるときは教室をウロウロ歩き回ってふざけてばかりだった。同じところにじっとしてることが苦手なんだ。


 教室は、それなりに盛り上がっていたような気がする。そうやってみんなを笑わせて、人気者になりたかった。


 このまま明るい自分を貫けば、楽しい中学校生活が送れる……と、思っていた。


 雲行きが怪しくなってきたのは、入学して1カ月くらい経ったときのことだった。


 学校から母さん宛に、電話がかかってきた。


「息子さんが授業の邪魔になっています」


「検査を受けさせてください」


「おそらく、何らかの障がいがあるのでは……」


 母さんは、そんなことを言われたらしい。


 学校から電話が来てることは分かったけど、俺は詳しく何を言われたのかまでは知らなかった。日頃の授業態度を注意されたんだろうな、くらいにしか思ってなかったんだ。そりゃ、自分が真面目な生徒ではない自覚くらいはあったからね。


 母さんも検査がどうこうとか、そんなことまでは俺に言ってこなかった記憶がある。


 しばらくして、今度は母さんと一緒に直接学校に呼び出された。


 嫌な予感はしていた。学校から親同伴で呼び出されて、「ハルキくんは良い子ですね」なんて褒められるワケないんだから。どうせ長い説教を聞かされるハメになるんだと、うんざりしていた。


「ハルキくん、なんで呼ばれたか分かる?」


 用意された教室に行くと、先生からそう聞かれた。


 向こうには先生の他に、いつもの学校では見かけない大人も交ざっていた。何か様子がおかしい。これは普通に怒られる場面じゃないぞ、と気付いた。


 学校側の要望は簡単で、とにかく俺に検査を受けてほしいという話だった。言葉を選んでいるのか、やたら回りくどく説明されたけど、要するに俺が「障がいを持ってるかどうか?」の検査だ。向こうに混ざっていた知らない大人は、その検査センターのスタッフらしかった。


「一応、検査を受けてもらうだけだから。大丈夫だと思うけど念のため」


 ……みたいなテンションでひたすら説得された。俺と母さんは混乱しつつ、渋々検査を受けることを約束した。


運命の検査


 これは俺の人生を左右する検査だ。


 本能的にそう思った。


 病院みたいなワケのわからない施設に連れて行かれて、俺の「障がい者テスト」が始まった。向こうには、3人くらい大人がいたかな。母さんは、外の待合室で不安そうに待機していた。


 せっかく友だちができたのに。


 楽しい中学校生活になりそうだったのに。


 やっとつかんだ幸せを、こいつらに潰されると思った。こいつらは悪魔だと思った。


「ここに、絵を描いてみて。ハルキくんが思う、お家の絵」


 ナメやがって。子ども扱いかよ。


 俺は腹が立った。


 仕方なく、言われた通り絵を描いた。家があって、人がいて、太陽が出てて。そんな絵だ。別に得意なわけじゃないけどさ、それくらいは俺だって描けるよ。


 そしたら、それを見ていた大人たちの顔色がみるみる変わっていくのがわかった。


「この絵は、どういう意味で描いたのかな?」


「意味っていうか、描けって言われたから……」


 ヤツらは黙り込んだ。


「……じゃあ今から言う数字を覚えて、復唱してみて」


 これはクリアできた。


「次は、その数字を逆から言ってもらえるかな?」


「……」


 言葉が出てこなかった。


「俺は本当に、障がい者なのかもしれない」


 嘘だろ? 俺ってこんなこともできないのかよ。なんで、こんな風に生まれてきてしまったんだ。俺は本当に、障がい者なのかもしれない。


 事実が受け入れられなくて、頭が真っ白になった。

〈 「母さんはめちゃくちゃ泣いていた」中1で知的障害が発覚→まわりから特別な目で見られる存在に…当事者のラッパー(28)が明かす「障害者として生きる哀しみ」 〉へ続く


(札幌のギャグ男/Webオリジナル(外部転載))

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