【コラム】「人間はみんな同じ」…壮絶な幼少期を送ったバロテッリが世界中に伝えたいこと

2018年6月14日(木)13時27分 サッカーキング

人種差別撲滅を願うバロテッリ [写真]=Getty Images

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 屈辱の2018 FIFAワールドカップ ロシア欠場となったイタリアは、バカンスを楽しむ選手たちでいっぱいだ。この期間を利用して、十分な休息を取り、新しいシーズンに備えてほしいところ。夏の移籍市場も本格的に動き出すのはW杯終了後と見られている。ミランのジャンルイジ・ドンナルンマ、フィオレンティーナのフェデリコ・キエーザら、アッズーリの若手選手の動向も気になるところだ。そのドンナルンマと同じ代理人、ミノ・ライオラ氏が担当するマリオ・バロテッリ(ニース)の自伝本『サタン』が出版された。有料放送SKYのジャーナリスト、アレッサンドロ・アリチャートがバロテッリの生い立ちから現在まで、特に人種差別に遭い苦しんだ部分に焦点を当てたストーリーとなっている。

 ガーナ系移民の両親を持つマリオが、北イタリアの街ブレシアのバロテッリ家の養子として迎えられたことは有名だ。黒人の外見から、幼い頃から周囲の厳しい視線と態度に悩まされてきたという。小学校の時の二つのエピソードをこの本の中で語っている。「学校で机の中のおやつがなくなった時、クラスメイトたちは真っ先に俺がやっただろうと思っていた。調べることもなく……。それともう一つ、思い出すだけで涙がこみ上げてくることが起こった」

 サッカーが文化として馴染んでいるイタリアでは、子どもたちの人気の遊びもサッカーだ。マリオも放課後、宿題を済ませて近所の子どもたちが集まるところへ行った。「チャオ! サッカーしようぜ!」と声をかけると、子どもたちからはこんな言葉が返ってきた。「ノー! マリオはダメだよ」。それに対し「えっ? 宿題ならやってきたよ」とマリオが答えると、その理由は残酷なものだった。

「ノー、お前は黒人だから」

「俺が黒人だから、他の奴らの目には違うものとして映っていたんだ。それから数年後、また新たな真実を知ることになった」とマリオは当時を振り返った。

 サッカー選手としての才能が認められ、インテルの一員としてピッチに立っていた2009年4月、ユヴェントスとの試合中に「猿!」「黒人!」「アフリカに帰れ!」という罵声が飛んだ。当時のマッシモ・モラッティ会長はこの一件に断固として抗議した。

 同じ年の6月、事件はローマで起こった。U−21イタリア代表の遠征中だったマリオは、チームメイトたちとテラス席でくつろいでいた。「遠くからバイクに乗って近づいてきた二人組が『黒人はムカつくぜ! クソ野郎!』って怒鳴ってきた。それからバナナの皮を投げてきた」。それは的を外れたが、『お前はバナナを食べる猿と同じ』。あからさまな侮辱行為に、マリオは再びショックを受けたのだった。

「時代は変わりつつある。次の世代にこれらの問題についてバトンタッチしていかなけれはならない。子どもたちに、人間はみんな同じなんだということを教えていかなけれはならない」とマリオ。我が子のピアちゃんとリオンくんに父親として伝えていく使命がある。2012年のある日、マリオが着ていたTシャツには、次のフレーズがあった。

『Not only am I Perfect.I'am Italian Too!』完璧な人間なんていない。俺だってそんなイタリア人さ!

文=赤星敬子

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