最高のワークスドライバーへ。世界で戦うスヴェン・ミューラーに聞くポルシェの育成プログラム【ル・マン24時間連載企画3回目】

6月15日(金)10時45分 AUTOSPORT web

 今年から2019年にかけて、2回のル・マン24時間を含む『スーパーシーズン』を迎えているWEC(FIA世界耐久選手権)。いよいよ6月16日にレーススタートを迎えるが、LMPクラスとともに注目したいのが、自動車メーカーが多数参加しているGTEクラス。ポルシェ911 RSRがランキングトップに立つが、スーパーGT300クラスにD’station Porscheで参戦中のポルシェワークスドライバー、スヴェン・ミューラーにポルシェのドライバー育成について聞いた。


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 WEC世界耐久選手権をはじめ、IMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップなどさまざまなスポーツカーレースで活躍するポルシェ。2018年の現在は、WEC、IMSAがLM-GTE規定に沿って作られたポルシェ911 RSRで参戦。その他には、ヨーロッパのGT3レース最高峰であるブランパンGTシリーズに参戦するマンタイ・レーシングをはじめ、ポルシェ911 GT3 Rで参戦する世界中のカスタマーレーシングチームを支えている。


 そして勝利の栄冠をつかむために、ポルシェは高いポテンシャルをもつ911シリーズのレーシングカーだけでなく、『ポルシェ ワークスドライバー』と呼ばれるトップドライバーたちを揃えている。彼らはワークスマシンをドライブするだけでなく、世界各国で開催されるGT3用レーシングカーである911 GT3 Rに乗り込み、チームを勝利に導く役目をもつ。


 そんなワークスドライバーのなかで、いま最も注目すべき若手として躍進しているのがスヴェン・ミューラーだ。2017年から日本のスーパーGTにも参戦し印象的な速さをみせているだけでなく、2018年のニュルブルクリンク24時間レースでは予選2番手を獲得。また、ル・マン24時間レースではポルシェGTチームのドライバーとして起用された。


■ポルシェのブランドとともに戦うチャンス


 スヴェン・ミューラーは2009年までレーシングカートを戦い、2010年にドイツのジュニアフォーミュラであるADACフォルメル・マスターズに参戦。2012〜13年はヨーロピアンF3を戦った。「もちろんその頃の僕の目標は、F1ドライバーになることだったんだ」とスヴェンは当時を振り返る。


 しかし、現代のF1においてその世界にたどり着くためには、資金力と政治的なコネクションが必要だ。それでもF1の世界に入ることができるのはほんのひと握り。そんなとき、スヴェンはサーキットで声をかけられた。


「ポルシェのジュニアプログラムのマネージメントをしていた人が、僕に『トライアウトを受けてみないか』と声をかけてくれたんだ。GTドライバーとしてプロフェッショナルな仕事を受けられるチャンスだったし、ポルシェというブランドとともに仕事ができる。それに将来に向けて安定した役割を得ることは、何より大事だと思ったんだ」


 一流のレーシングドライバーにとって、今はF1に行くだけがすべてではない。自動車メーカーとのコネクションを作り、プロとしてきちんと収入を得ることも大切だ。スヴェンはこの誘いに乗り、ジュニアプログラムの一員となった。

今年のニュルブルクリンク24時間にも参戦したスヴェン。ル・マン24時間ではどんなパフォーマンスをみせるのか


■速くなるだけではないプログラム


 ジュニアプログラムでは、2000年代にポルシェのファクトリードライバーとして活躍したサッシャ・マーセンがコーチを務め、コース上のテクニックやスピードを磨くためのテクニックを伝えた。もちろんそれだけではなく、スヴェンはさまざまなことをこのプログラムで学んだという。


「マーセンの教えに加えて、メディアへの対応を教えてくれるスタッフもいるし、フィットネスのためのスタッフもいる。ポルシェのファクトリードライバーと一緒にトレーニングキャンプに参加することができるんだ」


「そしてプログラムでは、ポルシェ カレラカップ、もしくはポルシェ モービル1 スーパーカップに参戦するためのバジェットを提供してもらえるんだよ」


 ご存知のように、ポルシェ モービル1 スーパーカップは、世界最速のワンメイクシリーズであるカレラカップのなかでも最高峰に位置づけられる。ここでチャンピオンを獲れば、ファクトリーレーシングカーに乗るだけの実力があると認められるのだ。そしてスヴェンは2015年に4勝でランキング2位につけると、2016年に3勝。10戦中8回の表彰台登壇という高いパフォーマンスを示し、その資質を認めさせた。


「僕はジュニアプログラムで3年間を過ごしたけれど、本当にさまざまなことを学ぶことができた。スーパーカップでチャンピオンを獲得したことが、成功につながったことのひとつだと思う」


「それに、新しい車両の開発プログラムにも携わることができたんだ。たとえば、5月に発表された新型911 GT3 Rは僕が開発に携わっている。これは本当に重要なことで、僕くらいの若いドライバーがマシン開発に携わることなんて、他のメーカーには絶対にできない。ポルシェはジュニアプログラム出身のドライバーに、積極的にプロの仕事をさせてくれるんだ」


昨年、2017年からスーパーGT300クラスに参戦しているスヴェン・ミューラー。今季開幕戦では2位を獲得

■「今からル・マンが本当に楽しみ」


 そんなスヴェンは、近年911 GT3 Rをドライブしてアメリカ、そして日本では「D’station Racingにチャンピオンを獲らせるため」にスーパーGTに参戦しているが、いよいよ今週末、ル・マン24時間ではワークスドライバーとして911 RSRをドライブし、超激戦区と言われるLM-GTE Proクラスでの上位進出を狙う。


「2015年に古いRSRでル・マンを走ったことはある。でもその時はリザーブドライバーだったので、プラクティスしか走ることはできなかった。だから今年、初めて94号車のドライバーとして大先輩のふたりとル・マン24時間を戦うことがすごく楽しみなんだ」とスヴェン。


「ポルシェは今年、4台のRSRを走らせることになるんだけど、GTEプログラムのなかでは過去最大だ。先日、モンツァでテストを行ったんだけど、すごくいいフィーリングを感じられたよ」


 スヴェン・ミューラーにとって、今回のル・マン24時間への挑戦はポルシェワークスドライバーとしての最大の挑戦ともなる。2年間のスーパーGT参戦で日本への愛情を深めている彼は、日本で培った技術の集大成をル・マンにぶつける。

1992年2月7日生まれ、ドイツ・マインツ出身のスヴェン・ミューラー


ポルシェ911 GT3 RでスーパーGT300クラスに参戦しているD’station Porsche

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