【インタビュー】タフ且つクリーン! 浦和の堅守を支えるアレクサンダー ショルツの流儀「DFにアンラッキーは存在しない」

2023年6月30日(金)17時30分 サッカーキング

[写真]=URAWA REDS

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浦和レッズに加入し、3シーズン目を迎えるDFアレクサンダー ショルツ。力強くスマートな守備で失点を防ぎ、3度目のアジア制覇に大きく貢献した。彼の活躍なくして守備面での安定感は生まれていないだろう。また力強いドリブルも魅力で、PKは職人レベルでさえある。

日本を愛する背番号28に、Jリーグでのプレーや後半戦への意気込みを聞いた。そして「ウィン・ウィン・ウィン以外はない」と口にする、その言葉の意味とは。

取材・文=石田達也

日本に来るよりも、去ることの方が難しい

——来日3年目を迎えました。日本での生活にも慣れ、オフも満喫しているようですね。先日、松島(宮城県)に旅行されていたことをSNSで知りました。
ショルツ SNSはあまりアクティブな方ではないのですが、写真を投稿するとファン・サポーターからいつも良い反応が返ってくるので驚いています。今回はオフが数日間あったので「家族でどこに行けばいいか」と周囲の人たちに相談をして決めました。日本は梅雨の時期だったのですが、行った時は雨が降ることもなく、楽しい時間を過ごすことができました。浦和のファン・サポーターは日本全国にいますね。宮城県に住むファン・サポーターの方たちからお薦めの場所やお店、訪れた場所について、たくさんの情報を教えてもらいました。

——改めて、日本のどんなところが好きですか?
ショルツ たくさんあるので難しいですね。日本に来るよりも、日本を去ることの方が非常に難しいと今では感じています。日本は深くて丁寧な国です。短期間で日本のことを理解するのは難しい。長い時間をかけて、理解できることがたくさんある国なのだと思います。

——日本を好きになっていただき、ありがとうございます! ショルツ選手はJリーグにフィットするのが、とても早かったと思います。いち早く適応するため、どんな工夫をされたのでしょうか?
ショルツ 何かを大きく変えようというわけではなく、ヨーロッパでプレーしたことをそのまま表現しています。ヨーロッパに「バイバイ」と言って、軽い気持ちで日本に来た訳ではありません。謙虚なマインドで日本に来ました。素晴らしい環境や仕事が与えられたことは、自分にとってもの凄く大きなチャンスなのです。もちろん適応するためにハードワークもしました。そこは自分の強みだと思います。どのようなチームなのか、どのようなクラブなのか、どのようなスタイルでサッカーをするのか。昨季の自分と今の自分を比べると、おそらく全く違う部分を見てもらえると思っています。今季は監督も変わり、目指すスタイルも違います。その中で適用し、常にベストを尽くそうと努力をしています。

——Jリーグにはアジリティに優れたアタッカーが数多くいます。そういった選手に対して、守備面で心掛けていることはありますか?
ショルツ 日本人のアタッカーと対峙するのは、かなり厄介なことです。彼らには“ネバーギブアップの精神”があります。ヨーロッパの選手たちは得点することだけを考えて、守備で多少サボったりもしています。日本の選手たちは、常にファイトの姿勢を保ち続けながら戦っています。なので、自分がボールを保持している時が一番やりにくい時間帯でもあるのです。客観的に見ても日本の選手たちの平均レベルは非常に高いと思います。その平均レベル以上の選手たちはヨーロッパなど海外に移籍しています。ただ、自分がベストを尽くせば、間違いなくゴールを許さないレベルに達していると思うので、自分が後悔しないようなプレーを心掛けています。私は30歳で経験値もかなり蓄積し、迷いなく自信を持ってプレーが出来ているからこそ、Jリーグに適応できているのだと思っています。

——昨年、松尾佑介選手に「ドリブルがチームで一番上手な選手は?」と訊いたら「ショルツ選手は大きいがボールを隠しながら運んで行く。取られる感じがせず、見ていて安心感がある」と答えてくれました。ご自身はどう思われていますか?
ショルツ 実際に良いドリブラーだとも思っていますよ。ただし、昨季は左センターバックでプレーをしていましたが、今季は右センターバックです。動き方も全く違います。第8節の札幌戦では自分のドリブルから得点を決めることができましたけど、あのような局面は中々生まれないかもしれません(笑)。

——改めて、アジアチャンピオンズリーグ優勝おめでとうございます! 今回のACL制覇はチーム、ショルツ選手個人に何をもたらしたと感じているのか教えてください。
ショルツ ACL優勝までには長いストーリーがありました。2021年の天皇杯でマキ(槙野智章氏)が素晴らしいゴールを決めて出場権を勝ち取り、タイで集中開催されたグループステージ、埼玉での決勝トーナメントを経て、ようやくファイナルという流れでした。全員が努力をして、ここまで辿り着きました。ACLを勝ち取った意味は大きく、「浦和=アジア王者」というイメージも重要です。今回のACL優勝に携わることが出来たこと、自分の仕事を証明できたことを本当に嬉しく思っています。ご存じの通りアル・ヒラルとの決勝はタフな試合でした。息もつけないような局面が多くありましたが、しっかりと自分たちでマネジメントをし、優勝を勝ち取ることができました。自分のキャリアを振り返ってみても、ACL優勝は大きなハイライトになると思っています。

——そして年末に開催されるFIFAクラブワールドカップへの出場権を手に入れました。
ショルツ 勝ち進むとヨーロッパや南米の王者と戦うことになるかもしれませんが、まずは目の前の相手に勝つことが重要です。開催が近づけば近づくほどモチベーションも上がっていきますし、勝ちたい気持ちも大きくなっていくと思います。何度も言いますが、この大会で勝ちたいです。

自分はクリーンなプレーヤー

——リーグ戦では現在4位(※6月15日 インタビュー実施)と好位置に付けています。 ここまでのリーグ戦を振り返っての手応えや課題について教えてください。
ショルツ 2試合連続でドロー(第16節鹿島戦、第17節横浜FC戦)なので、感情的には前向きでポジティブな答えというよりも、もっともっと上に行かなければいけないという気持ちです。ここまで8勝していますが、一方で8試合(5分3敗)勝てていません。毎日レベルアップを目指してピッチ上で仕事をしています。もっともっと自分たちの力で上を狙いたいと思います。

——現在リーグ最少の12失点と堅牢な守備が光っています。 ショルツ選手とマリウス ホイブラーテン選手のセンターバックコンビは、 今季のJリーグで屈指だと思います。
ショルツ マリウスは素晴らしいDFです。忘れてはいけないのは、我々にはJリーグナンバーワンGK西川周作が後ろに構えているということです。DF陣をフォーカスするよりも、西川選手にフォーカスしてもらった方が良いかもしれません(笑)。ただ、チームに安定感をもたらすことが自分たちの仕事だと思いますし、これからもっと順位を上げていくためには、この安定性を向上させなければなりません。

——このインタビューで、どうしても聞きたかったことがあります。まずはPKを確実に決めていること。この秘訣はなんでしょうか?
ショルツ デンマーク時代に前線の選手たちが何度か外していて「自分が蹴った方がチームを助けられるかもしれない」という思いを抱き、蹴り始めてみたら多くの場面で決めることが出来ました。それを蓄積するうちに良い感覚を掴みました。蹴れば蹴るほど経験が蓄積するので自信にもなりますし、PKキッカーという面でも成長しています。もちろん「いつか外すこともある」と、自分に言い聞かせながら蹴っています。「蹴って決めて、蹴って決める」。その繰り返しです。

——もう一つはイエローカードをもらわないクリーンなプレーを続けていることです。
ショルツ 自分はクリーンなプレーヤーだと思っています。これまで累積警告で試合を欠場したことはありません。ボールにアタックする時はしっかりとアタックし、スピードを出し過ぎるプレーを避けながらプレーをしています。 爆発的な勢いでアタックするとミスが生じる。そういった動きがカードを提示されることにつながると思っています。もう一つ、個人的にはPKを与えていないという部分も非常に興味深いデータだと思っています。現代サッカーではハンドでPKになる場面が増えています。アンラッキーな出来事だと捉える選手もいるかもしれませんが、DFにとってアンラッキーは存在しません。それがDFの仕事だと思っています。

——リーグタイトルを狙う上で、今後の戦いに向けて必要だと考えていることや意気込みを教えてください。
ショルツ 自分たちはカップ戦にはパーフェクトなチームだと思っています。一方でリーグ制覇はタフで簡単なことではありません。トップ・オブ・トップになるためには、 常に勝ち続けなければなりませんし、自分たちがここまで落としている勝ち点は納得できるものではありません。我々は勝ち続けなければなりません。“ウィン・ウィン・ウィン”以外はないと思っています。

——「ウィン・ウィン・ウィン」に期待しています! ちなみに次回インタビューでは明本考浩選手が登場する予定です。明本選手はどんな選手ですか?
ショルツ 熱い男で常に100パーセントを出す選手です。その反面、クレイジーな一面もあります(笑)。もっともっと集中力を高めてプレーをすれば、さらに良いキャリアを送ることができると思っています。

——最後に明本選手に伝えたい、ここだけのメッセージはありますか。
ショルツ 「一緒にご飯を食べよう!」と言ってくるのですが、彼が財布を出したところは見たことないので、次回は明本選手の財布を見られることに期待しています(笑)。

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