第104回インディ500予選詳報:高速アタックでマルコ・アンドレッティが父を超える初ポール奪取

2020年8月17日(月)12時15分 AUTOSPORT web

 第104回インディ500の予選は、今年も週末の2日間を使って行われた。


 新型コロナウイルスのパンデミックで3カ月遅れの開催となっているため、プラクティスから暑い日が続いた。


 予選1日目の土曜日は最高気温が摂氏31度に達し、そのコンディション下でエントリー33台すべてが4周連続のアタックを行い、予選2日目のポールポジションを争う最速の9人が決定した。


 予選1日目のトップはマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・ハータ・オートスポート・ウィズ・マルコ・アンドレッティ・アンド・カーブ・アガジェニアン)で、彼は231.351mphをマークした。


 2番手はライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)が231.330mphを記録。


 3番手はアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)の231.268mph。4番手にジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)で231.195mphとアンドレッティ勢がトップ4を占めた。


 5番手はスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)で231.155mph。ここまでがホンダが独占。


 シボレー最速は6番手のリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)で231.114mph。19歳のルーキーがファストナイン唯一のシボレーユーザーとなった。


 7番手はスペイン出身の23歳。アレックス・パロウ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・チーム・ゴー)。こちらもルーキーだ。スピードは231.034mphを記録し、ここまでが231mph台だった。


 8、9番手はレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのグラハム・レイホールと佐藤琢磨のものとなった。琢磨は優勝した2017年に続く2回目のファストナイン進出だ。


 予選2日目、午後1時15分にファスト9シュートアウトがスタートした。朝方は雲が多く、予選開始時になっても気温は27度と低いままだった。しかし、今日はメインストレートで追い風が吹いており、マシンのハンドリングに影響を及ぼすのは明らかだった。


 最初にコースインしたのは、昨日9番手だった琢磨。最速のドライバーには最後にアタックする権利が与えられるルールだ。


 琢磨はは230.805mph、230.916mph、230.659mph、230.520mphという実に安定した4周を行い、230.725mphをという数字を出した。


 彼が昨日記録した230.792mphよりやや遅い。これは風の影響だ。


 2番手以降のドライバーたちは風のために思うようにスピードを出せない、あるいは、安定したスピードを保てない事態に陥った。涼しさが232mph台を出させるのではなく、昨日より低いスピードで勝負はつくこととなった。


 ディクソンは風対策も成功したようで、スタートから2ラップ続けて231mph台をマークした。しかし、4周目が230.337mphにダウン。平均は231.051mphだった。それでも琢磨からトップを奪うことには成功する。

アテンプトへと向かうスコット・ディクソン


 残るは4人。全員がアンドレッティ勢だ。先頭のヒンチクリフは、1周目に230.395mphしか出せなかった。ロッシも1ラップ目が230.708mphと戦闘力を欠いた。ハンター-レイも同じだった。


 アンドレッティ・オートスポートはダウンフォースを削り過ぎていた。自分たちのマシンをエンジニアもドライバーも過信していた。


 3人が失敗した後、最後のアタッカーとしてアンドレッティがコースイン。彼なら難しいコンディションでもマシンを乗りこなして高いスピードを出すのか? チームメイトたちと同じ道を辿るのか? セッティングを調整してスピードを獲得するのか? 大いに注目が集まる。

マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・ハータ


 1周目のマルコは231.826mphをマークした。ディクソンの1周目より僅かに速い。


 2周目は231.146mphで、連続でディクソンを上回る。ところが、3周目が230.771mphへとダウンした。3ラップ平均で比較するとディクソンが速く、ディクソンの4ラップ平均とマルコの3ラップ平均では、マルコにアドバンテージはあった。すべては最後の1周で決まることになった。


 マルコの最終ラップは230.532mph。4ラップ平均は231.068mphで、0.017mph差でポールポジション獲得となった。タイムで表すと0.0113秒の僅差でアンドレッティ3世が初のインディ500ポールポジションを手に入れた。彼のマシンセッティングはダウンフォースがチームメイトたちより多めに設定されていたようだ。


「朝起きたら風が吹いていたので、祖父マリオの口癖を思い出した。“風はドライバーをビビらせるが、風がクラッシュをさせるわけじゃない”というやつだ。彼の言いことは正しかったね」とマルコは笑った。


 風に翻弄されながらも4周を走り切って栄誉をものにしたのだ。


「最高だ。チームとホンダが素晴らしい仕事をしてくれた。2周目に風の影響を感じ、“これは大変なアタックになるぞ”と思ったら、実際に3、4ラップ目が危なっかしいものになった」


「ディクソンとの差はかなり際どいものになる。そう思った。ただ、相手が出したスピードは知っていたので、どれだけのスピードを出せばいいのかが僕らにはわかっていた。最後に走る者に与えられるアドバンテージだ」


「そして僕らはベストのグリッドを獲得した。前に誰もおらず、クリーンなエアを浴びながらスタートを切ることになる」とマルコは語った。


 アメリカンモータースポーツの名門アンドレッティ家としては、1987年のマリオ以来となるポールポジション獲得となる。父マイケルも達成していないインディ500PP獲得を、マルコはやってのけ、マイケルもそれを喜んでいた。


 4回目のポール獲得をディクソンは惜しくも逃し、2番手となった。


「マルコが速いのはわかっていた。自分たちのセッティングはもう少しニュートラルでもよかったし、予選アタックの中で何かを違えていたら、もう少し速く走れていたかもしれない。とても多くの要素が絡み合い、今日の結果は出たと思う」と話した。

マシンに乗り込む佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)


 琢磨は昨日は予選9番手だったが、大きくポジションを上げた。


 ディクソンは5位から2位へのジャンプしたが、琢磨は9位から3位。ディクソンが1列前に行ったのに対して、琢磨は2列も前進だ。逆にハンター-レイは1列目から2列目へ、ロッシは1列目から3列目へと後退した。


 昨日の時点での琢磨は、2列目に上がることを目指していたが、それも簡単ではないと映っていた。それが、風の吹く難しいコンディションとなって、琢磨が優位を見出した。


「ある程度高いスピードで安定した4周を完成させれば上位に食い込める」という琢磨の読みは見事に的中した。


 それを狙えるセッティングを考え出し、コースで堅実なドライビングも遂行する。琢磨ならではのパフォーマンスだった。


「フロントロウはとれも嬉しい。もちろんポールポジションを狙いたかったけれど、昨日の状況を見ていたら、ポールは難しいと見えていた。フロントロウは夢のような結果」


「昨日の3回目のアタックと、今朝のプラクティスで走ったことが物凄く大事だった。予選に向けたマシンの準備もあるし、チームは今朝、僕らを走らせたくなかった。それをボビー・レイホールとチームのエンジニアたちが許してくれた。そこにはとても感謝しています」と琢磨はコメントした。実績と情熱で掴んだフロントロウグリッドと言える。


 予選4番手はルーキー最上位のヴィーケイで、5、6番手はハンター-レイとヒンチクリフ。そして、7番手がパロウ。ふたり目の驚くべきルーキーだ。予選8番手はレイホール。PPを狙っていたロッシだったが、彼は9番手となった。


 これで第104回決勝レースに挑む33グリッドが決定。今年、予選通過を目指すバンプアウト合戦はなかったが、ハイスピードでスペクタルなアタックが繰り広げられた。


 21日にレース前最後の走行となるカーブデイを迎え、23日にいよいよ第104回インディ500の決勝レースがスタートする。

10万ドルの賞金ボードを持つマルコ・アンドレッティ


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