進歩が見られない湘南。G大阪戦で迫った降格危機【J1リーグ2023】

2023年8月21日(月)14時0分 FOOTBALL TRIBE

黒川圭介(左)畑大雅(右)写真:Getty Images

2023明治安田生命J1リーグ第24節の全9試合が、8月18日から20日に各地で行われた。同リーグ最下位の湘南ベルマーレは19日、敵地パナソニックスタジアム吹田でガンバ大阪と対戦。最終スコア1-2で敗れている。


今節も最下位からの脱出を逃し、J2リーグへの降格が現実味を帯びてきた湘南。戦術面の進歩はほぼ見られず、深刻なチーム状態だ。かねてより湘南が解決できていない問題は何か。ここではG大阪戦を振り返るとともに、この点について解説していく。




ガンバ大阪vs湘南ベルマーレ、先発メンバー

相変わらず悪いビルドアップ時の配置


この日も[3-1-4-2]の基本布陣で臨んだ湘南は、GKや最終ラインからのパス回し(ビルドアップ)がままならない場面がしばしば。原因はウイングバックの立ち位置の悪さだ。


前半5分の湘南の攻撃シーンは、まさにこの典型例。ここでは湘南のDF畑大雅(右ウイングバック)が基本布陣[4-1-2-3]のG大阪のFW宇佐美貴史の手前まで降りてボールを受けたため、相手のプレスの標的に。味方MF田中聡にボールを預けて一度は事なきを得たものの、今度はDF杉岡大暉(左ウイングバック)のポジショニングが悪く、アウェイチームは局面を打開できなかった。


杉岡が味方センターバックとほぼ同列の位置、加えて自陣のタッチライン際でボールを受けたことで、G大阪のDF髙尾瑠(右サイドバック)がここを急襲。髙尾のボール奪取からホームチームの速攻が始まり、MFファン・アラーノのスルーパスに反応したFWイッサム・ジェバリが湘南GKソン・ボムグンとの1対1の局面を迎えている。オフサイド判定に救われたとはいえ、湘南にとっては大ピンチだった。


湘南ベルマーレ DF畑大雅 写真:Getty Images

ウイングバックが自陣後方の大外のレーンや味方センターバックとほぼ同列の位置、もしくは相手のサイドハーフ(ウイングFW)の手前まで降りてボールを受けてしまう湘南の悪癖は、第11節柏レイソル戦あたりから改善されていない。これらの位置でウイングバックがボールを受けても、自身の傍にはタッチラインがあるため、左右どちらかのパスコースが消えてしまう。また、相手のサイドハーフやウイングFW、及びサイドバックのプレスをもろに浴びる立ち位置のため、ボールを失う確率も上がる。このデメリットが今節も如実に表れてしまった。


センターバックとウイングバックが大外のレーンで共存してしまい、この縦のパスコースを相手のサイドハーフ(ウイングFW)に簡単に封じられてしまう現象も、湘南は未だに修正できていない。センターバックやウイングバックが放つロングパスもG大阪陣営に読まれており、ゆえに湘南はボールロストを繰り返した。


ウイングバックは相手のサイドバックとサイドハーフ(ウイングFW)の中間エリア、もしくは相手サイドバック(ウイングバック)と正対してドリブルを仕掛けられる立ち位置をとる。GKや最終ラインからのパスコース作りは、中盤の底を務める田中や2インサイドハーフに任せる。こうすることで湘南は常に複数のパスコースを用意でき、相手にプレスの的を絞らせない攻撃を繰り出せるだろう。


ガンバ大阪 DF黒川圭介 写真:Getty Images

漫然としたプレスで失点


最終ラインから丁寧にパスを繋ごうとするG大阪に対し、湘南は[5-3-2]の布陣による撤退守備へ移行。時折ハイプレスを繰り出そうとする意図が窺えたが、ボールの奪いどころやプレスのかけ始めのタイミングがはっきりせず。G大阪の右サイドバック髙尾が自陣後方のタッチライン際や味方センターバックとほぼ同列の位置に立つ場面があったため、ここへパスを追い込んだうえで集団的にプレスをかければ湘南にとってチャンスだったが、こうした狙いも感じられなかった。


迎えた前半36分、自陣タッチライン際でボールを受けようとしたG大阪DF黒川圭介(左サイドバック)への畑のプレスが遅れ、湘南はボールを奪いきれず。漫然としたハイプレスを掻い潜られると、その後G大阪陣営のパスが宇佐美、アラーノ、MF山本悠樹の順で繋がる。ジェバリのラストパスをペナルティエリアで受けたアラーノに先制ゴールを奪われた。




湘南ベルマーレ 山口智監督 写真:Getty Images

「自分たちから奪いに行くところが欠けていた」


後半11分、湘南は敵陣でのパスミスからG大阪の速攻を浴びる。自陣ペナルティエリアまで攻め込まれると、湘南DFキム・ミンテの腕に山本悠樹が蹴ったボールが当たる。これがキムによるハンドの反則と判定され、G大阪にPKが与えられた。


このチャンスを宇佐美に物にされ、リードを2点に広げられた湘南のその後の猛攻は、勝ち点に繋がらず。後半アディショナルタイムに、コーナーキックからの2次攻撃でFW大橋祐紀がゴールを挙げたものの、反撃もここまでだった。


湘南の山口智監督はG大阪戦後の会見で、自軍の守備を反省。特に前半のパフォーマンスを悔やんでいる。


「今日は前半の戦い方に尽きると思います。消極的でしたし、自分たちから奪いに行くところ、アグレッシブに前にゴールを目指すというのが欠けていた試合になりました。僕の伝え方がよくないのはあると思います。ボールホルダーに対してどういう時に行くのかというのは、伝えていても試合で相手が違うなかでやれていない。僕の持っていきかたがよくないと思うので、そこは伝え方を工夫しないといけない。自分自身のところが問題だと思っています。相手がいて、景色が変わると力を出せないところもあるので、そうではなくて色々用意をするなかでできるように僕も伝えることができればと思います」(湘南ベルマーレの公式ホームページより引用。一部省略・補正)


未だに改善されない攻撃配置、ボールの奪いどころが定まらない漫然としたプレスは、山口監督を含むコーチングスタッフによる落とし込み不足が原因と言わざるを得ない。特に今季は、試合中の戦術修正で事態を好転させた試しがほぼ無いのも気がかりだ。J1リーグ残留への道のりは厳しいが、この苦境を湘南がどう乗り越えるかに注目していきたい。

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