S耐富士10時間耐久に挑む:藤井「1時間延びたことで戦い方も違う」

2017年8月29日(火)11時5分 AUTOSPORT web

 9月2日(土)、3日(日)に富士スピードウェイで開催されるスーパー耐久シリーズ第5戦『SUPER TEC』。ここ数年、1年ごとに1時間ずつ延長され、今年は10時間レースとして開催される。


 現在の国内レース最長となる「SUPER TEC」への意気込みやスーパー耐久シリーズの魅力を、スーパーGTにも参戦するドライバーたちに伺った。


 ST-Xクラスで1号車スリーボンド日産自動車大学校GT-Rをドライブする藤井誠暢は、昨年のチャンピオンにして、今年も開幕2連勝を達成。ここ2戦は足踏み状態が続いて、ランキングトップは明け渡してしまったものの、もちろん狙うはシリーズ連覇。果たして『SUPER TEC』はどう戦うのか? 昨年よりも1時間延びたことで戦い方も変わると藤井は語る。

昨年のS耐富士戦を勝利したスリーボンド日産自動車大学校GT-R


「昨年を振り返ると9時間をノーミスで、トラブルやペナルティなく走って、気がつけば独走で優勝できたんですが、そこから1時間伸びて、この1時間って意外と長いと思うんですよね。長いというのはドライバー的にというよりも車両的にです」


「9時間も大丈夫かなって、当然不安にもなるんですけど、9時間ならばノートラブルで走れたけど、クルマにはさらにストレスがたまります。特にこの暑い時期はブレーキも使う富士で、そこから伸びた1時間を、伸びる分を見据えたペース、クルマをいたわりながら走らないと確実にチェッカーは受けられない。そういう意味でいうと9時間と10時間では戦い方は違うかなと個人的には思っています」


 たかがプラス1時間、されどプラス1時間。昨年までのレースとは戦い方が異なってくることを熟知しているのは、耐久レースの経験豊富な藤井ならではのコメントといえよう。そして、もうひとつの違いに対しても、意見を述べてくれた。


「今年やっぱり大きく変わったのはハンディウエイトが大きくて、開幕戦、第2戦を連勝して早い段階で60kg積んだことで、その後の2戦が正直苦しいレースになってしまいました」


「今回はウエイトが半分になって、半分になった状態をテストで試したら、意外と速さを取り戻しています。やっぱりウエイトによってボケていた部分がすごくあって、逆に言うと30kgでも重いんですけど、昨年の富士は積んでいなかったので、そういう意味でいうとウエイト分の30kgで10時間、1時間増えるのがどういうふうに影響するのか、ちょっと読めないところではありますね」

開幕から2連勝を飾ったスリーボンド日産自動車大学校GT-R


 さまざまな意味で、今年のスーパー耐久に影響を及ぼしている新たな規定に対して、あくまで慎重に挑まなくては長丁場のレースでは結果は残せないということなのだろう。さらにライバルとなる車両の進化についても気になるようだ。


「僕らのGT-Rに対してフェラーリ、ポルシェも今は最新型になって、みんな速くなっています。GT-Rよりも車重が軽いから、ブレーキなんかも楽だろうし、ちょっと僕らの方が戦い方を考えなきゃいけないかなと思っています。どうあっても、楽な戦いにはならないでしょうね」


 スーパー耐久のトップクラスを戦う藤井。今年からクラスも新設され、参戦台数が増加していく現在のスーパー耐久の印象を最後に聞いてみた。


「今のスーパー耐久で、いちばんの売りはクラスが多いこと。たとえばGT3を使うST-Xがあったり、新しくできたST-TCR、やっぱり注目のクルマが集まってきていたり、あとはST-3クラスも昔からレベルが高いし、ST-4クラスの戦いもね」


「自分はいつも違うクラスも見ているんですが、どのクラスを見てもレベルが高い。やっぱり優勝争いをしているレベルがすごく高いところで、どのクラスもレースが行われているので、クラスごとに見ると台数の多い、少ないはあるんですが、クラス間のレベルでいうとすごく高いところで、僅差のバトルをやっています」


「逆に言うと、これだけ多くの僅差のレースをしているカテゴリーはそうはないので、それがスーパー耐久のすごいところだし、魅力じゃないでしょうか。あとはやっぱり自分たちより世代上の大先輩、日本のレースを今より前の時代にリードしてきた先輩ドライバーの方々が、スーパー耐久はいっぱい走っています。ファンの人もそういう人の走りを見たいでしょうし、僕らも一緒に走れるのは楽しみだし。ドライバーの幅というのも、若手から本当の名ドライバーの方までいるので、それもスーパー耐久の魅力だと思いますよ」


 今回の『SUPER TEC』も、レギュラーとして参戦しているドライバーの他にもDドライバーとして、思いがけぬトップドライバーやレジェンドの参戦もある。そういう意味で参加ドライバーの多いこの一戦はいつも以上に目が離せないレースとなる。


 ST-4クラスで、86号車TOM’S SPIRIT 86をドライブする蒲生尚弥は、第2戦からの3連勝を果たし、『SUPER TEC』でも優勝すれば、悲願の王座を最終戦を待たずして獲得することが可能である。蒲生は現在のスーパー耐久をどのように感じているのだろうか?

松井孝允・蒲生尚弥・坪井 翔に加え、富士では井口卓人が加わる86号車


「スーパー耐久が他のレースと違うのは、参加している台数がフルグリッドでとても多いのと、クラスがたくさん設けられていて、常にコース上は混雑している状況です。お客さんからして観ても、すごく楽しいと思いますし、参加しているクルマがお客さんの乗っているクルマに近いので、そういうあたりも含めて見てもらえれば、より楽しめますね」


”親近感”。確かにスーパー耐久の重要なポイントだ。スーパーカーから国内外のスポーツカー、そしてコンパクトカーまで車種のバラエティは自慢のひとつ。応援する対象を見つけることもレースを楽しむポイントだ。


「いつもの3時間とか4時間のレースとは違って、時間が圧倒的に長いので、やっている僕らにしても、観に来てくれるお客さんにしても、ちょっとお祭り的な要素のあるレースだと思うんです。10時間全部見てくださいとは言えないけど……(笑)、サーキットでワイワイ、みんなでバーベキューとかしながら、楽しんで見てもらえるレースだと思います」


 そうは言えど、やるからには優勝を目指すのがドライバーのスピリット。最後に『SUPER TEC』に対する意気込みを語ってくれた。


「普段のレースとは違って、ひとり2回、もしかしたら3回走ることになるんですけど、僕らは体力的な問題では大丈夫だと思うので、ガンガン全開で走りますよ。ただ、エンジンとか駆動系とかは多少いたわって走らなければいけないので、状況に応じて抑えて走らなきゃいけない時、プッシュして走らなきゃいけない時、うまくチームとコミュニケーションをとって、クルマを大事に走れればいいと思っています」


「今までは噛み合わないレースが多くて、なかなか勝つことが難しかったんですが、今年はチームもドライバーもノーミスでレースすることができていて、なおかつクルマも86で5年目、すごく仕上がってきています。僕らはドライバーみんながバランス取れていると思いますので、富士のレースは長いですけど、今までどおりのことをすれば、いい成績が出ると思っています。直線が長いので、富士ではS2000が強敵でしょうが、みんなで頑張りたいですね」と蒲生。


 クラスチャンピオン誕生の可能性もあるスーパー耐久シリーズ第5戦『SUPER TEC』。いろいろな楽しみ方で10時間のレースを味わってほしい。


AUTOSPORT web

「スーパー」をもっと詳しく

「スーパー」のニュース

「スーパー」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ