野尻智紀が圧巻のポール・トゥ・ウイン。今季3勝目で早くもタイトルにリーチ【第5戦もてぎ決勝】

　2021年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦の決勝レースがツインリンクもてぎで開催され、野尻智紀（TEAM MUGEN）がポールトゥウィンで今季3勝目をマーク。野尻にとって地元に近いもてぎでの嬉しい初勝利で、ホンダにとっても20017年以来、久々となるホームコースでの勝利となった。2位には関口雄飛（carenex TEAM IMPUL）、3位には松下信治（B-MAX RACING TEAM）が続いた。

　決勝レース前のツインリンクもてぎは上空を厚い雲で覆われ、予選日に比べていくらか過ごしやすい陽気となり、気温31度、路面温度36度というコンディションで35周の戦いがスタートした。

　ホールショットを奪ったのは野尻だが、抜群のスタートダッシュでポジションを上げてきたのが平川亮（carenex TEAM IMPUL）。3番手スタートの松下にもイン側から並びかけたが、アウト側の松下はなんとか踏ん張り2コーナーでポジションを取り戻した。

　その後方で、8番手スタートの福住仁嶺（DOCOMO TEAM DANDELION RACING）がV字コーナーでマシンをスライドさせ、後続がよけきれず多重アクシデントが発生。これにより、福住、塚越広大（ThreeBond Drago CORSE）、大嶋和也（NTT Communications ROOKIE）の3台がここで戦列を離れることになった。福住は背後にいた山下健太（KONDO RACING）との接触があったようで、その後山下にはドライビングスルーペナルティが科せられている。

　このアクシデントにより、レースは2周目に入ったところでセーフティカーが導入。5周目に入ってレースが再開すると、先頭の野尻はファステストラップを連発して2番手関口との差を広げにかかる。ただ一人1分34秒台前半のタイムを並べ、9周目には関口との差は3.9秒に。

　対する関口はピットウィンドウが開く10周目でオーバーテイクシステムを作動させてプッシュ。そのままピットへ向かい真っ先にタイヤ交換を行った。同じ周に5番手の大湯都史樹（TCS NAKAJIMA RACING）、6番手の阪口晴南（P.MU/CERUMO・INGING）もピットイン。2台は僅差の5番手争いを展開していたが、TCS NAKAJIMA RACINGのピット作業に時間がかかり、阪口が逆転で5番手に浮上した。

　関口のピットインに反応するかたちで、翌周に野尻がピットイン。7.7秒とわずかに時間がかかったように見えたピット作業だったが、野尻は関口の前でコース復帰に成功する。すでにタイヤにも熱が入っている関口はファステストラップを塗り替えるタイムで野尻に詰め寄ったが、アウトラップで1.4秒のマージンをキープした野尻が暫定7番手、実質のトップを守って後半スティントに入っていった。

　野尻に代わって先頭に立った松下は、15周を終えるところでタイヤ交換を行い、関口の後ろでコース復帰。松下に蓋をされていた格好でペースが上げられなかった平川は、ここから自己ベストタイムを更新して猛プッシュしていく。17周目の時点で野尻との差は23秒となっていたが、翌周は24秒、25周目にはさらに25秒と少しずつ広がっていった。

　平川は26周を終えるところでピットへ。緊張感が高まるピット作業だが、停止時間が8秒と、野尻に対してわずかにビハインド。平川は松下の後ろでコース復帰となり、4番手にドロップしてしまった。

　これで名実ともに首位に返り咲いた野尻は、終盤関口との差も広げトップチェッカー。ホンダのホームコースで今季3勝目を飾った。　第4戦終了時点でランキング2位につけていた大湯が6位、ランキング3位の福住がノーポイントに終わり、野尻が残り2戦でチャンピオン争いのリードをさらに広げるかたちとなり、次の第6戦もてぎで野尻はタイトルを確定する可能性が極めて高くなった。
　
　レース終盤、野尻がリードを広げた終盤に背後で白熱したのは、関口、松下、そして平川による2位争いだった。なかでも松下と平川のバトルは、34周に一気にヒートアップ。オーバーテイクシステム（OTS）を使って一気に詰め寄った平川がS字コーナーの入り口で松下のインに飛び込んでいったが、オーバースピードでマシンがスライドしてしまい万事休す。

クロスラインでポジションを取り戻した松下が関口に続いてチェッカーを受け、3位表彰台を獲得した。関口は最終ラップ、1周まるごとOTSを作動させて野尻との差を削っていったが、1秒届かず2位チェッカーとなった。