劇的弾のラツィオGKは史上4人目…CLで過去にネットを揺らした守護神たち

2023年9月21日(木)16時8分 サッカーキング

劇的なゴールを挙げたラツィオGKプロヴェデル [写真]=Getty Images

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 19日(火)に行われたチャンピオンズリーグ(CL)・グループステージ第1節で劇的なゴールが誕生した。

 イタリアの『スタディオ・オリンピコ』で行われたグループEの初戦で、日本代表MF鎌田大地を擁するラツィオが90+5分にドラマチックなゴールを決めたのだ。アトレティコ・マドリードをホームに迎えたラツィオは、前半29分に先制ゴールを許す難しい展開となったが、後半追加タイムにコーナーキックを得ると、予想外の選手がヒーローとなった。一度クロスを跳ね返されたものの、再び拾ってルイス・アルベルトが高速クロスを入れると、そのボールに飛び込んだのはセットプレーのために上がっていたGKイヴァン・プロヴェデル(29歳)だった。

 両選手で埋め尽くされたボックス内で、赤白と水色のユニフォームを着た選手たちが立ち止まるなか、ピッチ上で唯一、黄色のユニフォームを身に着けた選手だけがクロスに合わせようと飛び込み、見事に頭で合わせたのだ。ゴールキーパーによる劇的な同点弾だ。



「まだ実感が湧かない」と値千金の同点ゴールを決めたGKプロヴェデルは試合後にイタリアのメディアに語った。「冗談だけど、僕は(チーロ・)インモービレを見て学んでいるからね!」と、チームメイトの偉大なストライカーからフィニッシュ技術を盗んだと笑って見せた。

 誰にも予期できないゴールだった。ラツィオのクラブ公式SNSは、試合経過を追いながらゴールが生まれた際には「GOAL」の文字が記された得点者の写真をアップする。しかしアトレティコ・マドリード戦では「GOOOOOOOOOOOOOOOOL」と書き込んだあと、「すみません。プロヴェデルの得点用の画像は用意していませんでした!」と明かし、後日、改めて「GOAL」と記されたプロヴェデルの画像をアップした。



 確かに予想外のゴールスコアラーだ。というのも、ラツィオの公式HPによると同クラブでGKがゴールを決めるのは70年ぶりのことだという。1953年2月に元イタリア代表GKルチディオ・センティメンティがPKを決めて以来の快挙なのだ。とはいえ、プロヴェデルがネットを揺らすのはこれが初めてのことではない。彼はエンポリからセリエBのユーヴェ・スタビアにローン移籍していた2020年2月、アスコリとの一戦でやはり90+5分に同点ゴールを決めたのだ。その時も、今回と同じような角度からのクロスを頭で合わせ、チームを敗戦の危機から救って見せた。

 プロヴェデルは、キエーヴォでプロキャリアをスタートさせ、ローン移籍を繰り返したあと、エンポリを経て2022年8月にラツィオに加入。昨シーズンはセリエAで38試合に出場してクリーンシート21回。今夏マンチェスター・ユナイテッドに移籍したアンドレ・オナナなどを抑えてセリエAの最優秀ゴールキーパーに選ばれた。

 そんなプロヴェデルは、歴代最高の名キーパーと縁があるという。プロヴェデルの父親はイタリア人だが母親はロシア出身だ。その母エレナは、子供の頃はモスクワに住んでおり、あのレフ・ヤシンと家の近くで暮らしていたそうだ。ゴールキーパーとして今のところ唯一のバロンドール受賞者である偉大なキーパーとご近所さんだったのである。

 そう聞くと、プロヴェデルはGK一筋と思われがちだが、そういうわけではない。「15歳までストライカーだったのさ。僕の1試合平均ゴール数は悪くなかったよ」とプロヴェデルはスポーツ専門サイト『The Athletic』に語っており、アトレティコ・マドリード戦でのゴール前の動き出しとヘディング精度も納得できる。

 そのためプロヴェデルは、今後もCLでゴールを奪う機会があるかもしれないが、CLのゴールキーパー得点ランクで歴代1位に立つのは容易ではない。CLでは、過去に3得点したキーパーがいるというのだ。

■過去の得点者

 プロヴェデルはCLでゴールを決めた史上4人目のゴールキーパーだ。前回、GKがネットを揺らしたのは13年前。2010年9月のリヨン戦で、当時ハポエル・テルアビブに所属していたナイジェリア代表GKヴィンセント・エニェアマがPKを決めて見せた。同選手はPKキッカーを任されることがあり、CL予選でもゴールを決めたことがある。

 その1年前には、スタンダール・リエージュに所属していた元トルコ代表GKシナン・ボラトがAZ戦でネットを揺らした。グループステージ最終戦、0−1とリードされて迎えた試合終盤にFKを獲得すると、ボラトがクロスを頭で合わせて同点ゴール。敗れれば最下位で敗退するところだったが、彼の同点弾によりスタンダールは3位に浮上してヨーロッパリーグの決勝トーナメントに回ることになった。PKを除けば、これがキーパーによる初ゴール。そしてプロヴェデルが史上2人目となるのだ。

 だが、CLの歴史において最もゴールを決めているキーパーは他にいる。それが元ドイツ代表GKハンス・イェルク・ブットである。レヴァークーゼンやバイエルンで活躍したブットは、PKキッカーとしても優秀で、キャリア通算528試合で33ゴールをマークしている。そのうち3ゴールがCLで決めたものだ。

 ハンブルガーSV時代の2000年に初めてCLでPKを決めると、2年後にはレヴァークーゼンで再びPKからゴール。そして2009年にはバイエルンのキーパーとして欧州最高峰の舞台でPKを沈めた。驚くべきことに、彼が決めたゴールは3本ともユヴェントスが相手だった。2000年にエトヴィン・ファン・デル・サールから、残り2本はジャンルイジ・ブッフォンからゴールを奪ったのである。

 もちろん、ブットはPKを蹴るだけでなく、止めるのも得意だった。キャリアを通じて62本中20本もPKを止めており「PKを蹴ることは、止めるときにも役に立った」と明かしている。

 果たして、プロヴェデルはブットの記録を破ることができるのか? 敵陣ゴール前でストライカーのような動きを見せる“野心”的なラツィオのGKに注目したい。

(記事/Footmedia)

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