チャンスが一瞬で消えた1コーナーの大きすぎる代償。ナカジマレーシングの同士討ちに「申し訳ない」と大湯【第2戦岡山】

2020年9月28日(月)18時52分 AUTOSPORT web

 2020年シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権は有効ポイント制が採用されているが、ナカジマレーシングは2戦を終えた段階でチャンピオンシップに対して窮地に立たされたと言っても過言ではないだろう。


 これまで苦手としていた岡山に対して、今回の第2戦では「いいセッティングの方向性」(加藤祐樹エンジニア)も見えていた。表彰台を狙えるチャンスもあったが、その期待はスタート直後の1コーナーで起きた同士討ちによって貴重なポイントとともに消えてしまった。


 2020年シーズン、TSC NAKAJIMA RACINGはホンダ期待の若手である牧野任祐のチームメイトに、2019年12月に行われたルーキーテストでも一発でピカイチの速さを見せた大湯都史樹を迎え入れた。


 経験値が強力なアドバンテージになると思われているスーパーフォーミュラだが、ふたりのドライバーの速さには定評があり、今シーズンの期待値は高かったはずだ。


 しかし、開幕戦では牧野がQ1で敗退してしまうも、決勝はなんとか9位入賞。大湯は予選でホンダ勢最上位の4番手を獲得するものの、スタートの接触もあって15位と、ポイント獲得のチャンスを失っている。第2戦岡山ではその鬱憤を晴らし、ビッグポイントを獲得するはずだった。

2020年スーパーフォーミュラ第2戦岡山 牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)


 牧野は第1戦もてぎで苦戦した部分を第2戦岡山までにエンジニアと見直し、万全の体制で挑んでいた。前日に行われたフリー走行でもトップタイムを記録し、手応えは十分。一方の大湯も、走り出しはややセットアップに不安な部分もあったが、徐々に合わせ込んでいき、決勝に向けては「上位で戦える自信がある」と言えるところまで準備できていた。


 チームとしても2台そろって上位入賞、ポイント獲得を視野に捉えていた。しかし、その期待はスタート直後の事件によって打ち砕かれる。


 フォーメーションラップで他車がクラッシュを喫し、51周で予定されていたレースは1周減算され50周で争われることになった。


 予選で4番手グリッドを獲得していた牧野は抜群のスタートを決め、スタートダッシュで出遅れた2番グリッドの宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)を1コーナーまでにオーバーテイク。その後方、5番手スタートの大湯もいい蹴り出しで牧野のすぐ真後ろにポジションをとった。

2020年スーパーフォーミュラ第2戦岡山 スタートで1コーナーに向けて、好ダッシュを決めた牧野について行こうとポジションをとっていた大湯。


 だが、1コーナーの飛び込みで大湯の左フロントタイヤがロックしてしまう。止まりきれなかった大湯のマシンはすぐ前にいた牧野と、アウト側から牧野に並びかけていたサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)に接触。


 さらにスピンを喫したフェネストラズは牧野の左リヤにもヒットしグラベルに。牧野もコース上にマシンを止め、フェネストラズと牧野はリタイアに終わってしまった。牧野のマシンはフェネストラズのマシンと当たった左リヤのホイールが割れるほどダメージを受けていた。接触してしまった大湯のマシンもフロントウイングを破損しながら完走はできたものの、ポイント圏外という結果になった。

2020年スーパーフォーミュラ第2戦岡山 クラッシュによりリタイアとなった牧野とフェネストラズ。


「何が起きたのか分かりませんでした。誰かが当たったと思ったらスピンしていた。でも、なんでサッシャも止まっていたのかそのときは分からなかった。あとで映像を見て分かった感じです。まさか相手がチームメイトだったとは思いませんでした」(牧野)


 一方の大湯は、「抜きに行くつもりはありませんでした。ポジションがキープできればと思ってあの位置に行ったら、タイヤがロックアップしてしまった。(牧野選手かフェネストラズ選手か)どちらに先に当たっていたかは分かりませんが、2台の間に入ってしまうような形だったと思う」と、接触の瞬間を振り返った。


 仮にこの接触がなければ両車とも上位でゴールし、もてぎで取りこぼしたポイントを確実に獲得できていたはずだ。レース直後、原因を作ってしまった大湯は牧野に「謝りに行った」という。


「牧野選手は完璧なスタートを決めていて、あのまま行けばいいレースになっていたと思います。フェネストラズ選手とのバトルに水を差す形になってしまったのは残念です。申し訳ないなと思っています」

2020年スーパーフォーミュラ第2戦岡山 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)


 レースの結果を占ううえでも重要なスタートから1コーナーのバトルのなかで起きた今回の事件。同士討ちになってしまったことでさまざまな見方があるだろうが、少なくともナカジマレーシングが背負った代償が大きいことは間違いない。


 牧野は土曜日のフリー走行後に、有効ポイント制について「もてぎはうまく行かなかったから間違いなく捨てるでしょう」と話していたが、牧野にとっても、大湯にとってもこの第2戦は第1戦に続く『捨てる』レースになってしまった。


 2020年シーズンも全7戦で争われるスーパーフォーミュラ。チャンピオンシップはそのうち5戦分のポイントが適応される有効ポイント制が採用されている。残り5戦──チャンピオンシップを考えると、彼らはもうひとつも落とせない。

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