「ソフト史上最高の打者」山田恵里が現役引退。本誌だけに語った「決断の理由」と「上野由岐子への想い」とは

2022年10月2日(日)17時50分 ココカラネクスト

 2008年の北京五輪、そして2021年の東京五輪ソフトボールで金メダルを獲得した山田恵里が、今季限りで現役を引退すると表明した。勝負強い打撃で長きにわたって代表チームを牽引し、東京五輪ではキャプテンも務めた「ソフト史上最高の打者」は、なぜユニフォームを脱ぐ覚悟を決めたのか。引退決意までの経緯と現在の想いを聞いた。

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ーー現役生活、おつかれさまでした。引退を決断した理由は?なぜこのタイミングだったのでしょう?

山田恵里 オリンピックが終わったタイミングで、このままソフトボールを続けたいのか、それとも辞めたいのかが見えてくるのかなと思っていたんですが、オリンピックが終わった瞬間はまったく見えませんでした。昨年のシーズンが終わった段階でも「まだ選手としてやれるな」と思ったので続けたんですけど、今年に入って「もう突き抜けた結果を出せないんじゃないか」と感じたことと、あとは完全に悔いがなく、やりきったと思ったので決断しました。

ーー改めて引退する寂しさは感じますか?

山田 寂しさは全然ないです。むしろ、毎日やってきたルーティンを早く終わらせたいですね。

ーールーティンというと?

山田 まず、毎日4時半に起きる。4時半に起きて体幹トレーニングしてスイングしてから練習場に行って、そこでバッティングをしてウエートして全体練習に入るという感じです。だから、もう解放されたいです(笑)

ー−引退まで、残り数試合あります。

山田 特別、何をしたっていうのはなく、自分のプレーを出し切ることで、見てくださる方々に何か伝わるのかと思っています。最後だからと思わずに、普通にやろうと思っています。

ーー山田選手のキャリアを振り返ると、キャプテンを務めた東京オリンピックが印象的です。序盤は苦しみましたが、尻上がりに調子を上げて金メダル獲得に貢献しましたね。

山田 あんな経験は初めてでした。大会序盤は不調で「もう私の東京オリンピックは終わった。人生終わった」と思ってたんです。予選最後のカナダ戦前日も2時間ぐらいしか寝られなかったんですが、その夜にイチローさんのWBCの映像を見て吹っ切れました。イチローさんはWBCですごく不調だったんですけど、決勝の韓国戦でセンター前に決勝タイムリーを打った。あの映像を見て、「自分も明日から大丈夫かも」と勇気をもらって復活できました。

ーー一番の思い出の試合、思い出の場面は何でしょう?

山田 上野(由岐子)さんと最初に対戦した時にヒットを打ったんですよ。それは印象的でした。あとは(モニカ・)アボットからホームランを打ったことですかね。でも、1番といったらなんだろう。やっぱり上野さんと対戦できたことですね。

ーー上野選手との対戦で一番印象に残っているのは?

山田 一番って、なかなか決められないですよね。難しい。いつだったかは忘れてしまったんですけど、その年の決勝トーナメントの最後の打席で上野さんと対戦して、セカンドゴロで終わってしまったんです。それで、次の年のリーグ開幕戦でも、そのボールを絶対に投げてくると思ったのでずっと練習していて。狙い通りにそのボールを打ったことは印象に残ってますね。でも、数え切れないほど三振もしてます(笑)。

ーー上野選手との対戦成績は?

山田 凡打の方がもちろん多いですけど、比較的打っているのかな。やっぱり、上野さんの打席ってすごいゾーンに入るし、すごい集中するんです。すごいピッチャーなんですけど、苦手意識みたいなのはなかったですね。

ーー目標の存在でしたか。

山田 そうですね。上野さんを打てないと世界では通用しないと思っていたし、常にそこに上野さんがいてくださったので、自分もここまでやってこられたなというのはすごく感じています。本当に同じ時代にソフトボールができて幸せだったなと思います。

ーーその上野選手より早く引退するというのは?

山田 そうなんですよね(笑)。上野さんが辞めるまではダメだと思ってたんですけど……。できれば上野さんが辞めてから辞めたかった、という想いはあります。けど、もうこれ以上はやれないなと思いました。

ーー引退後の短期的な目標と長期的な目標は?

山田 コーチングなどを勉強する予定です。私はソフトボールしかしてこなかったので、色々なことを勉強したいと思っています。長期的には、やっぱりソフトボールを再びオリンピック種目に復活させて、そこからずっと外されることがないように、世界的にソフトボールを普及させたいという思いが強いです。もちろん、日本の中で強いチームを作ることに貢献できればしたいと思いますし、国内だけでなく、海外にも目を向けたいなと思っています。あとは、私が経験してきた事を講演活動、メディア活動を通して、少しでもソフトボールのみならず、世の中の人の役に立てたらと思っています。

ーー具体的に今の段階で思い描いてるアイデアは?

山田 ヨーロッパはあまりソフトボールが盛んではないので、ヨーロッパに行って教えたりできたらいいなと思ってます。

ーー引退後も忙しくなりそうですね。ところで、4時半に起きなくなったら何時に起きるんですか?

山田 とりあえず、目覚ましをかけないで寝たいですね。でも、習慣化されているので、きっと目が覚めますよね。どうしよう、引退してもスイングしてたら。結局、辞められないものも出てきそうですし、また別に新たなルーティンができるような気もします。

ーー最後に応援してくれた方へのメッセージをお願いします。

山田 実業団に入って21年ですが、本当にたくさんの方々に出会うことができて、ここまで成長させてもらったと思っています。本当にファンの方々がいなかったら早い段階で辞めていたと思いますし、支えてくれる人、応援してくれる人がたくさんいたからこそ、ここまでやってこられたので心から感謝します。ありがとうございました。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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