ホンダF1活動終了という苦渋の決断。リソース再配分の理由が十分に語られなかった寂しさ

2020年10月3日(土)9時25分 AUTOSPORT web

 10月2日(金)、ホンダが2021年シーズンを最後にF1世界選手権から撤退することを発表した。


 2021年限りでF1活動を終了するというニュース自体には正直、驚いていない。もしかしたら、2020年限りで撤退していても不思議ではないという思いがあったからだ。むしろ、昨年の11月に2021年までもう1年F1活動を続けるという発表のほうが驚いていた。


 もちろん、ホンダのF1活動終了というニュースは残念だし、続けてほしいという気持ちは強くある。しかし、それはホンダの人たちがだれよりも強く持っていることであり、それでもなお苦渋の決断を下さなければならなかったことをいまは重く受け止めている。


 だからこそ、その理由をもう少し語ってほしかった。


 今回ホンダがF1活動を終了するに至った主な理由を「2050年に向けてカーボンニュートラルという目標を掲げ、それを達成するために2030年での四輪の販売台数の3分の2を電動化することをさらに加速させるため」(八郷隆弘社長)だと語った。


 しかし、この目標はホンダに与えられた使命ではなく、世界の自動車メーカーに突きつけられた共通の課題だからだ。しかし、F1にパワーユニットを供給しているホンダ以外のヨーロッパに本社を置く自動車メーカーがF1から撤退するという発表は行っていない。もちろん、メルセデスはいまだ2022年以降の態度を明らかにしていないものの、もしメルセデスが少なくともパワーユニット・マニュファクチャラーとしてF1活動を継続することになれば、ホンダだけがF1活動を休止することになる。


 その理由を八郷社長は「F1は世界最高峰のレースということで、技術面ではエネルギーマネージメント技術を進化させることができた。そのF1で培ったエネルギーマネジメント技術や燃料技術、そして人材を先進パワーユニットとエネルギーの研究開発に振り向けることにしたため」と付け加えた。


 ならば、F1活動を継続する方が、長い目で見て、ホンダにとってメリットがあるのではないか。この数年でホンダのF1でのエネルギーマネージメント技術は飛躍的に向上したが、メルセデスもそれを上回る技術の向上を果たしている。つまり、まだエネルギーマネージメント技術には開発する余地が残されているわけだ。


 そのF1から撤退すれば、ホンダのエネルギーマネージメント技術は2021年で停滞する。


 内燃機関車から電気自動車へのシフトは始まったばかりで、電動パワートレインの開発には大きな可能性が残されている。これまで、その多くの技術をF1から習得してきたホンダが、F1の舞台から降りてまで、リソースを再配分しなければならなかった理由は、結局語られることはなかったことが、個人的には少し寂しかった。

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