ウエットで判明した新エアロによる“視界の変化”。パターン違いのタイヤも試す【第7回SF次世代車両開発テスト】

2022年11月22日(火)21時6分 AUTOSPORT web

 11月21〜22日、全日本スーパーフォーミュラ選手権をプロモートする株式会社日本レースプロモーション(JRP)は、栃木県のモビリティリゾートもてぎにおいて、7回⽬となるカーボンニュートラル(CN)開発テスト(次世代車両開発テスト)を行った。


『SUPER FORMULA NEXT 50(ゴー)』を掲げるJRPは、この先の50年もモータースポーツが持続可能であるよう、さまざまな取り組みを行なっている。


 なかでも力が入れられているのが次世代車両の開発テストで、今季はレース開催前後の各サーキットにおいて、トヨタエンジン搭載の通称『赤寅』、ホンダエンジン搭載の『白寅』を、それぞれ石浦宏明と塚越広大、2名の開発ドライバーが走らせ、燃料やボディカウル、タイヤなどで新素材を試してきたほか、より魅力的なサウンドを目指した排気音に関する試験、さらには接近戦実現と「速い者が抜ける」ことを目指した新たな空力パッケージの開発などが行われてきた。


 この新たな空力パッケージについては、10月26〜27日に鈴鹿サーキットで行われた第6回のテストで国内初走行を迎え、担当したふたりのドライバーが好感触を口にし、開発陣も接近戦実現に向けて大きく前進したと評価していた。


 今回のもてぎでのテストは、前回の鈴鹿に引き続き、この新空力パッケージを装着。そして、散⽔⾞で路⾯に⽔を撒き、ウエット路⾯⾛⾏テストが実施された。


 初⽇となった21日は前夜に降った⾬が路⾯に少し残ったものの、ウエット路⾯テストとしてはやや⽔量が不⼗分だったため、⾛⾏前や、⾛⾏を中断して、散⽔⾞が幾度となく出動。⼗分な⽔量を保ちながらテストが行われた。

モビリティリゾートもてぎのコース上に水を撒く散水車
モビリティリゾートもてぎでウエットテストを行うスーパーフォーミュラ開発車両


 新空力パッケージによって後⽅⾞両からの視認性はどのように変化、改善されているのか。また開発中の⾬⽤タイヤの熱の⼊り⽅やタイミングはどうかなど、さまざまなデータが得られたという。


 2日⽬の22日は、朝から快晴だったものの前⽇の散⽔が路⾯に残ったため、路⾯が乾ききるまでスタート時刻を遅らせ、1時間⾛⾏後にインターバルを置き、さらに1時間45分⾛⾏するという変則的なスケジュールで⾏われた。


 この⽇は追従、追い抜きのテストをメインとしながら、あわせてタイヤコンパウンドとケーシング(構造)のテスト、またブレーキに厳しいと⾔われる『ストップ&ゴー』レイアウトのもてぎで、空⼒の変化がブレーキに及ぼす影響を確認するテストなどが行われた。


 10月の最終戦鈴鹿の記者会見においてJRPは、新空力パッケージの導入時期について12月にアナウンスする旨を明らかにしている。4⽉から始まったCN開発テストは、年内はこれで終了となるが、JRPは「これらのテストで得られたデータや知⾒を次期新型⾞両に活かして⾏くとともに、より⾼い次元でのカーボンニュートラルの実現に向けて、引き続き開発を続けてまいります」としている。


 もてぎでのテストを終えた2名の開発ドライバー、およびテクニカルアドバイザーのコメントは、以下のとおり。

モビリティリゾートもてぎでウエットテストを行うスーパーフォーミュラ開発車両


■「真後ろにいると⽔煙が濃く感じる」が「1本ラインをズラすと今までよりも若干見やすい」


■⽯浦宏明
「今回は新しいエアロパッケージで2回⽬のテストでしたが、ウエットの中でしっかり⾛れました。新しいエアロになったことで、ダウンフォースが少し減っています。その状態でウエットタイヤがどういう⾵に発動するのか、今回はそういうところを⾒る必要がありました」


「過去にはこういうテストをキッチリ事前に⾏うということはなかなかできていなかったので、そこまでしっかり⾒た上で、チームにデリバリーされるというのは、すごくいいことだなと思います。また、この時期のウエットテストということで、タイヤのグリップが発動するギリギリのコンディションなので、ここで問題なく⾛れていればシーズン中は問題ないと思いますし、そういう意味でも貴重なテストになったと思います」


「⾬の中での追⾛テストに関しては、直接今までのカウルとは⽐較できませんが、前にいる⾞の⽔煙がセンターで⾼く上がっている感じで、真後ろに付くと真っ⽩でまったく⾒えません。ですが、1本ラインをズラすと、今までよりも若⼲⾒やすいですし、新しい翼端板のライトも⾒えます。ラインをズラして1対1の場合には、今までよりも⾒やすいですね」


「ただ、いいことばかりだけでなく、真後ろの⽔煙が今までよりも綺麗に上がってしまうので、前の⾞との距離感を取るのは難しいですね」


「タイヤテストに関しては、それぞれ発動性を上げることを⽬的として、横浜ゴムがいろいろなコンパウンドを持って来て下さったのですが、どのコンパウンドも発動性は良くなっていたので、メリットはありました」


「逆に、その分タイムの落ち幅が⼤きかったり、デメリットの部分も⾒えましたが、そこをどう運⽤して⾏くかは別の話になると思います。また、パターン違いもテストしましたが、現状のレギュラーのレインタイヤでも、レース中にすごくタイムがドロップするクルマとしないクルマがいたり、表⾯が荒れてしまったりということが起きているので、パターンによって剛性を変えた時に、どういう違いが出るか。来年に向けてというよりは、もっと先に向けて、いろいろなデータ採りが今回もできました」

モビリティリゾートもてぎでのスーパーフォーミュラCN開発テストでトヨタエンジン搭載車両のドライバーを務めた石浦宏明


■塚越広大
「初⽇は、⾬の中の視認性をテストしましたが、リヤライトが2灯増えて4灯になったことで、斜めから⾒た時の視認性は良くなりました。そこに関しては良かったです」


「⽔煙に関しては、フォーミュラはどこまで⾏っても簡単ではないですよね。今回のエアロでは、⽔を束ねてドンと後ろに跳ね上げるようになっているので、真後ろにいると⽔煙が濃く感じます」


「ただ、SF19と⽐べて、フワッとまわりに散るような⽔煙は減ったかなと思うので、1台対1台であれば、ラインをずらすことによって⾒えるようになりました」


「また、富⼠に続いて、今回は2回⽬のウエットタイヤテストを⾏いましたが、富⼠の時から改良されたものもありました。特に冬場の発動性について、新しいものは良くなっていたと思いますし、タイムも悪くなかったです。ロングランに関しては、これまでレギュラータイヤをしっかり開発してくださっていた分、新しいものに関してはまだ改良の余地があると感じました」


「ウエットパターンのテストもありましたが、パターンによってすごく違いがありましたね。同じゴムでも発動するというのも分かりましたし、良かったと思います」

モビリティリゾートもてぎでのスーパーフォーミュラCN開発テストでホンダエンジン搭載車両のドライバーを務めた塚越広大


■永井洋治テクニカルアドバイザー
「初⽇はウエットテストということで、いろいろなパターンのタイヤを試しましたが、来年以降に向けて、成果もありましたし、課題も⾒つかりました。それを今後どう活かすか。ウォームアップ性とか、パターン感度が⼤きいとか、収穫は多くありました」


「もう⼀つ、ウエット時に後ろについた時の⽔の跳ね上げと2段にしたライトの視認性の確認もしました。ライトを2段にしたことによって、いろいろな⾓度から⾒えるということで、それは⾮常に有効だということが分かりました」


「巻き上げに関してですが、今回のエアロはマシンの外側に広げず、真ん中で跳ね上げるという想定の通りでしたが、その分、真後ろに⾏くと、やっぱり真っ⽩で⾒えないですね。ただ、横の広がりは少ないので、少し真後ろから外れると、ライトもよく⾒えるということで、その確認はできました」


「もともと8 ⽉に予定されていたもてぎでのテストをこの時期に移動させたことにより、新しいボディワークでテストできましたし、その中で課題も⾒つかりました。また路⾯15℃とかの低い状況でウエットテストができたので良いデータが収集できました」


「ウエットテストだけでなく、ドライのテストもできて良かったです。追⾛ではダウンヒルストレートで後ろにぴったりついた時に、どれぐらいダウンフォースが変わるかという良いデータも採れましたし、ブレーキの確認もできましたので、実りが多いテストになりました」

テスト2日目、追従走行テストを行うスーパーフォーミュラ開発車両
モビリティリゾートもてぎで行われたスーパーフォーミュラCN開発テスト

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