WECハイパーカー3連覇を目指すトヨタの懸念。新しいライバルに対し「後手に回っている」と技術責任者

2022年11月23日(水)10時13分 AUTOSPORT web

 TOYOTA GAZOO Racingヨーロッパのテクニカルディレクターであるパスカル・バセロンは、日本のメーカーがWEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに参戦するライバルメーカーに比べ、自分たちはテストの面で「後手に回っている」と考えている。


 昨シーズンに続き2022年もダブルチャンピオンを獲得したトヨタは、2023年に『トヨタGR010ハイブリッド』で3年目のシーズンを迎える予定だ。その来シーズンはLMDhカーでファクトリープログラムを行うポルシェとキャデラック、そして、先月発表された新型LMH規定車『499P』でプロトタイプレースに復帰するフェラーリと競争を繰り広げることになる。


 これら3つのニューカマーはすでに、2023年シーズンに向けた重要なテストを実施済み。ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツは36時間テストを、『キャデラックV-LMDh』を走らせるチップ・ガナッシ・レーシングは24時間の耐久テストを実施している。


 フェラーリはまだ長距離の耐久テストを行っていないが、バセロンはイタリアのメーカーの進歩にも感銘を受けている。


「見た目もよく、2台のクルマで多くのテストしているのは印象的だ」と、彼はSportscar365に語った。


「一方、我々は4月以来、(ル・マンとバーレーンの)公式テストを除いてはテストをしていないため、正しいレベルに達していないように思える」


「他のチームが多額の予算を投じて多くのテストを行っているのに比べると、私たちは今は少し後手に回っている」


■参戦初年度はテストに“制限なし”


 トヨタは来年、エボジョーカーを用いて既存のLMHマシンを“微妙に”進化させる予定だ。バセロンは「それほど(新しい)テストはない」としながらも、ハイパーカーメーカーがフル参戦1年目のシーズンに無制限のテストを行うことに疑問を呈している。


 この規定は現在、プジョーにも適用されている。フランスのメーカーは今年7月、第4戦モンツァ6時間レースで“ウイングレス”の新型ハイパーカー『プジョー9X8』をデビューさせた。


 一方、トヨタはハイパーカー競技規則により今年のテスト日数は20日に制限されているが、これは2023年に向けての議論の対象となったものと理解されている。


 バセロンは、今年のテスト日数を明かさなかったが、予算上の理由から「割り当てからはほど遠い」ことを認めた。


 同氏は来年のテスト規定について「まだ議論している最中だ」と述べた。「我々としては、テスト期間が非常に長くなることを少し心配している。だが、まだ確定していない」


「もちろん、このカテゴリーの精神である、低コストでの競争を可能にするようなレギュレーションであることを強く望んでいる」


「もし、レギュレーションが膨大なテスト日数を許すのであれば、テストチームが必要になる。それは、また別のレベルの予算だ。今のところ、私たちはひとつのレースチームで活動しておりそれだけだ。レースチームができることをやるしかない」

WECハイパーカークラス2連覇を達成したトヨタGR010ハイブリッド


■トヨタは「ステップアップする必要がある」


 TOYOTA GAZOO Racingのチームディレクターを務めるロブ・ルーペンは、トヨタが来年、新しいマニュファクチャラーの挑戦に対して「ステップアップ」すると確信している。


「多くのテストをしたいと思うのは当然だ。ここではレギュレーションに制限され、それを完全に使いこなせていないこともあるが、ステップアップする必要があるところはするつもりだ」とルーペンはSportscar365に語った。


「私たちはそれを時間内に行い、必要な対策を講じてこれを行う」


「もちろん、一方で我々は自分たちのクルマをよく知っているはずだ。チームもうまく機能していると思う。そのレベルを維持し、これまで行ってきたように段階的に改善するように努力する必要がある」


「他の(自動車メーカーの)人たちが来るのはいいことだ。また、競争が激しくなっているのもいいことだね。(我々が)そのレベルに達していればいいが、もしそうでなければ、早くレベルを上げなければならない」


■LMHとLMDhのバランスを取ることができると確信


 技術部門のボスであるバセロンは、FIA国際自動車連盟とACOフランス西部自動車クラブのBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)システムが、来年のLMHとLMDhのプラットフォーム間でパリティ(同等の意)を生み出すことを確信していると語った。


 北米のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権は2023年にオールLMDhのグリッドを採用するが、WECはLMHとLMDhという、ふたつの異なる規制の下で作られたクルマが混在することになる。


「そのために多くの作業が行われたと思う」とバセロン。


「技術的な面では、多くのシミュレーション活動によってコンバージェンス(収斂、収束の意)プロセスが作られ、少しずつバランスが取られてきた」


「例えば、我々の非常に高い(ハイブリッド)展開速度は、コンバージェンスを予期してすでに実装されている。モンツァで導入されたディファレンシャルのレギュレーションも、それを見越したものだ」


「技術的な面ではすでに多くの作業が行われている。今後はBoPプロセスの中でふたつのカテゴリー間のバランスを取ることになると思う。だから、それはコントロールされているはずだ」

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