地元サポが坂元達裕にスタオベ!戦術変更のコベントリー2連勝【現地取材】
2023年11月30日(木)18時0分 FOOTBALL TRIBE

英2部チャンピオンシップ第18節が日本時間11月29日に行われ、MF坂元達裕が所属するコベントリー・シティはホームでプリマス・アーガイルと対戦した。第11節から6戦勝ちなしで順位を20位にまで落としていたコベントリーは、前第17節のミルウォール・タウン戦で3-0と久し振りの快勝。この試合で坂元は移籍後初ゴールを決めている。
今2023/24シーズンにEFLリーグ1(英3部相当)から昇格したプリマスを相手に勝ち点3を奪いたいコベントリー。立ち上がりから積極的にボールを保持しサイド攻撃を中心に相手ゴールに迫る。後半75分に先制すると虎の子の1点を守り切り2連勝を飾った。
この記事では、コベントリーが行った戦術の変更について坂元へのインタビューを交え分析していく。

自信溢れる立ち上がり
現地では平日19時45分のキックオフだったこの日。週末に比べると空席は見られるが、それでも2部リーグのチームが2万2790人もの観客を動員できるのはサッカーの母国ならではだろう。
コベントリーを指揮するマーク・ロビンズ監督はシーズンはじめから一貫して[3-4-1-2]のフォーメーションを好んで使ってきた。坂元にはトップ下やウイングハーフのポジションが与えられ、2トップへのアシストを期待されていたが守備の負担が大きく、彼の持ち味を必ずしも出せているとは言えなかった。
監督が動いたのは4連敗で迎えた第16節。11月11日のストーク・シティ戦で初めて[4-3-3]を採用した。坂元は先発しなかったものの、ここで手応えを覚えたチームは11月25日のミルウォール戦で坂元を右ウイングにスタメン起用。ポゼッション率は37.6%と低かったが連携面が改善され、2トップにひたすらクロスを上げるサッカースタイルから脱却し、ボールを繋いで相手を崩す戦術へと変化した。
そして今節、2試合連続でスタメン出場した坂元の立ち上がりはこれまでと違った。中2日の疲れも見せず、右ウイングの位置から積極的にプレスに行く。ボールを奪うと即座に前線に縦パスを供給し、決定機を演出。シーズン序盤は守備面で後手に回り、1対1のデュエルでも力負けする場面が見られたが、この日の坂元はボール奪取力が向上したようにみえた。また、以前は攻撃面でもバックパスを多用してしまいロビンズ監督から不満の声が漏れていたが、この日は積極的に突破を仕掛け自信をもってプレーしているのがスタンドからも見て取れた。
ー前節に待望の初ゴール。これが自信になりましたか?
坂元:そうですね、僕はゴール取れてなかったんで。ベルギーの時はウイングバックで1点も取れてなかったんで、僕自身ゴールはすごく欲しかったです。(今節は)右ウイングという形で出て、結果残さないと次はないという気持ちで臨んだんで、そこ(前節のゴール)はすごく大きな自信になりましたね。
(コベントリーは)シンプルに中盤がうまいですし、ボールを繋げる選手もいる。僕は基本、外に張っとけと言われているので、外に出して1対1を仕掛けるというのはひとつの形としてできていると思います。

新フォーメーションがフィット
今節ではゲームを支配できていたコベントリー。中盤でボールを奪い両サイドから突破するサイド攻撃を中心に、DFラインから縦パスを供給して攻撃スイッチを入れる動きが見られるなど、しっかりとボールを繋ぐサッカーができていた。
しかし、得点できぬまま坂元は64分に途中交代。チームはその後75分にアメリカ代表FWハジ・ライトがクロスに合わせてゴールを揺らし先制点を決めた。終盤、プリマスからの猛攻を受けたものの、なんとか1点を守り切ったコベントリー。2連勝の要因について坂元はフォーメーションの変化が大きいと感じているようだ。
ー[4-3-3]の右ウィングでプレーしてみてどうですか?
坂元:これまで勝ててなくて、途中から[4-3-3]に変えて内容も良かった。僕の本来のポジションは右ウイングだったり[4-4-2]の右なので、今日も楽しみながらできました。
勝ててない中で僕は右ウイングバックでなかなか守備で貢献できない、守備を頑張りすぎてなかなか前でも使えないという試合が多かったので、いまはやりやすくできています。(これまで)苦しい中で流れを変えたいと思っていましたし、それで2試合スタメンで出れてなんとか結果も残して、チームとしても流れを良くできたと思います。

地元サポーターがスタンディングオーベーション!
今節のポゼッション率は48.1%で五分五分の試合展開となったが、勝てていなかった直近6試合の保持率は約60%と意外にも高かった。逆に言えばボールを“持たされている”という見方もでき[4-3-3]に変更してからは効率的に展開できているようだ。
昨2022/23シーズンでは堅守速攻のカウンターが主体だったコベントリーが坂元を獲得した理由は、攻撃面を改善したい意図があったからだが、ここまで坂元を生かしきれていなかったとも言える。しかし、ここにきて[4-3-3]を採用したことは、チームにとっても坂元にとっても最適解を見つけ出したと言えるのではないだろうか。
早い交代となった坂元だが、キレのあるプレーを連発した日本人MFを地元サポーターは高く評価。交代の際には2万人超えの観客がスタンディングオーベーションで健闘を称え、スタジアムには坂元のチャントが響き渡った。
「When you score, you make the city sing, Saka on the wing, Sakamoto on the wing. Every time you’re on the ball we know, there’s gonna be a goal, our superstar from Tokyo.(お前がゴールを決めると街が歌う、ウイングにサカ、ウイングにサカモト、お前がボールを持つ時はいつもゴールがある、東京からの我らのスーパースター)」※サカはウイングの最高峰と称されるFWブカヨ・サカ(アーセナル)を指すものと思われる。
コベントリーは今節終了時点で暫定15位に浮上。2023/24シーズンも中盤に突入し、右ウイングで躍動する坂元の活躍に期待したい。