崖っぷちの浦和。GK西川周作らが反省した綻びは【ACL2023/24】

2023年12月1日(金)18時0分 FOOTBALL TRIBE

アレクサンダー・ショルツ(左)西川周作(中)ホセ・カンテ(右)写真:Getty Images

AFCチャンピオンズリーグ(ACL)2023/24のグループJ第5節が11月29日に行われ、浦和レッズが武漢三鎮(中国)に2-1で勝利した。


グループステージ4試合消化時点で獲得勝ち点が僅か4と、苦境に陥っていた浦和。今第5節の勝利で勝ち点を7にまで伸ばしたものの、既に同ステージ首位フィニッシュの可能性が消滅。グループFからJ(アジア東地区)の2位チームのうち、成績上位の3つがノックアウトステージ進出という大会規定のなかで、同クラブは依然として敗退危機に瀕している。


ここでは埼玉スタジアム2002にて行われた武漢三鎮戦を振り返るとともに、浦和のGK西川周作とDFマリウス・ホイブラーテンの試合後コメントを紹介。そのうえで、崖っぷちに立たされている同クラブの戦いぶりを論評する。




浦和レッズvs武漢三鎮、先発メンバー

ルヴァン杯決勝と同じ状況に


第4節の浦項スティーラーズ戦でレッドカードを提示された、浦和のマチェイ・スコルジャ監督とMF明本考浩は今節ベンチ入り禁止ならびに出場停止処分に。ラファル・ジャナス氏(コーチ)がベンチで采配を振るうなか、同クラブはお馴染みの[4-2-3-1]の基本布陣でこの試合に臨んだ。


[5-4-1]と[5-3-2]の守備隊形で自陣や中盤に構えた武漢に対し、浦和は前半5分すぎからボールを保持したものの、攻めあぐねる。5バックのチームの攻略に手を焼く展開は、1-2で敗れた11月4日のJリーグYBCルヴァンカップ決勝(アビスパ福岡戦)と同じだった。




浦和レッズ DFアレクサンダー・ショルツ 写真:Getty Images

なぜ浦和は攻めあぐねたのか


浦和が攻めあぐねた原因は2つある。1つ目は、敵陣へ果敢に攻め上がり、ロングパスの収めどころとして機能していたDF酒井宏樹を負傷で欠いたこと。11月4日のルヴァン杯決勝でも、GK西川や最終ラインからのパス回し(ビルドアップ)が手詰まりになった際に、空中戦に強い酒井へのロングパスが浦和の突破口となっていたが、武漢戦ではこの戦法を採れず。そのため浦和の攻め手がより減った。


浦和の攻撃停滞の原因の2つ目は、ホイブラーテンとDFアレクサンダー・ショルツの2センターバックによる、ボール運搬が少なかったこと。この2人が武漢の1トップ(FWアジズ)や[5-3-2]の布陣の2トップの両脇からボールを運び、相手の中盤の選手を釣り出して守備隊形を崩す場面があまり見られなかった。


「最初(前半)のほうが我々にスペースがありましたね。武漢は高い位置からあまりプレスをかけてきませんでした。(武漢の守備を)崩すのは難しかったです。自分たちがダイレクトに裏にプレーしすぎていた(相手最終ラインの背後を直接的に狙いすぎていた)と思います」


ホイブラーテン自身も試合後の囲み取材で、自軍の単調な攻めを反省点に挙げている。先述のルヴァンカップ決勝でも2センターバックによるボール運びが少なく、これが大一番での敗戦の遠因になっただけに、浦和としては早急に改善したい課題の1つだ。


武漢三鎮 FWダヴィドソン 写真:Getty Images

武漢に突かれた一瞬の隙


浦和は攻めあぐねたものの、前半34分に先制のチャンスを得る。敵陣ペナルティエリア右隅からDF荻原拓也がクロスを上げたところ、このボールにFWブライアン・リンセンがヘディングを試みる。この際に相手DFドン・ハンウェンの腕がリンセンの頭部付近に当たったことで、浦和にPKが与えられた。


前半37分のショルツのPKは成功。欲しかった先制点を手にしたが、浦和は後半にこのリードをふいにした。


迎えた後半23分、浦和は武漢のフリーキックを凌ぎ、自陣から速攻を仕掛けるも失敗。すぐさま[4-4-2]の守備隊形を敷き、2トップやサイドハーフを起点とするプレスでボールを奪おうとしたが、自陣左サイド(浦和にとっての敵陣右サイド)でボールを受けた武漢のDFジアン・ジーポンに対するMF小泉佳穂のアプローチが緩慢に。これによりジアンにロングボールを蹴られてしまった。


このロングパスに反応したのが、武漢のFWダヴィドソン。その後軽快なドリブルでホイブラーテンとショルツをかわし、右足でのシュートで同点ゴールを挙げた。




浦和レッズ GK西川周作 写真:Getty Images

ショルツの転倒だけでない失点の原因


ダヴィドソンと対峙したショルツが足を滑らせ転倒するという不運に見舞われたとはいえ、浦和の失点の原因をこれのみに帰結させるのは早計だろう。試合後の囲み取材に応じたGK西川のコメントから、チーム全体の守備に問題があったことが窺える。


「サイドバックとセンターバックの距離感が、失点シーンでは少し広がっていました。(浦和の最終ラインの)裏へ走った相手選手に対する、最終ラインのスライドも遅れたように僕の視界からは見えました」


西川が反省点に挙げた通り、この場面では途中出場で右サイドバックを務めたMF関根貴大とセンターバックのショルツの間が開きすぎており、ここをダヴィドソンに突かれている。浦和は4バックの泣きどころである、センターバックとサイドバックの間をうまくケアできなかった。


浦和がこの4バックの泣きどころを突かれたのは、今回が初めてではない。昨年9月のルヴァン杯準決勝第2戦(セレッソ大阪戦)でも、センターバックとサイドバックの間を相手に使われて失点しており、これが敗退に繋がっている。最終ラインのボールサイドへの横スライドが間に合わないのであれば、センターバックとサイドバックの間をサイドハーフが降りて埋める、もしくはボランチの選手が下がって消すなどの工夫が必要だろう。浦和が昨年から抱えている守備の課題が、今年のACLでも浮き彫りになった。




浦和レッズ FWホセ・カンテ 写真:Getty Images

カンテの劇的弾で辛勝


ACLグループステージ敗退が現実味を帯びてきた浦和を救ったのは、この試合を前に今2023シーズン限りでの現役引退を表明していたFWホセ・カンテだった。


前半はセンターバックによるボール運びが少なかったものの、後半45分にショルツが攻め上がったことでチャンスが生まれる。この直後にMF大久保智明が繰り出した浮き球は相手選手にクリアされたが、こぼれ球に途中出場のカンテがいち早く反応。同選手がワントラップした後にペナルティアーク内で左足を振ると、このミドルシュートが相手ゴールに突き刺さり、埼玉スタジアム2002が歓声に包まれた。


ノックアウトステージ進出の可能性を残した浦和は、12月6日のグループJ最終節でハノイFC(ベトナム)と対戦する。武漢戦で浮き彫りになった課題を克服したうえで、この難局を乗り越えられるか否か。この点に注目していきたい。

FOOTBALL TRIBE

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