規律違反、チーム批判、不倫…腕章を剥奪されたキャプテンたち

2021年12月15日(水)20時0分 サッカーキング

[写真]=Getty Images

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 キャプテンは単なるリーダーではない。とりわけイングランドサッカー界では、キャプテン論争が勃発するほど特別な存在なのだ。腕章を巻いた者は人一倍の責任を求められ、その責任を果たせなければ剥奪される運命にある。

 先日、アーセナルのガボン代表FWピエール・エメリク・オーバメヤン(32歳)がキャプテンを剥奪された。“規律違反”での剥奪処分となったが、彼が問題を起こすのはこれが初めてではない。2018年1月にアーセナルに加入する直前には、ドルトムントでチームミーティングを無断欠席して罰金処分を受けていた。アーセナル加入後も、今年3月のノースロンドンダービーで遅刻してクラブ内で処分を受けていた。

 そして今回、練習を欠席したことでキャプテンを剥奪されることになったわけだが、オーバメヤンが規律を破る常習犯ならば、アーセナルはキャプテン剥奪の“常習者”と呼べるだろう。彼らは過去にも強制的にキャプテンを交代しているのだ。もちろん、これはアーセナルだけに限った話ではない。ということで、過去の“キャプテン剥奪劇”をいくつか紹介しよう。

■グラニト・ジャカ(アーセナル)


 アーセナルは2年前にもキャプテンを剥奪している。その時も原因は規律違反だったが、グラニト・ジャカの場合は同情の余地がある。スイス代表でもキャプテンを務めるジャカは、2019年9月にアーセナルのキャプテンに任命されたのだが、そもそも選考方法に問題があった。

 それまで主将を務めていたDFローラン・コシェルニーが退団したことで、アーセナルは選手間投票で後任キャプテンを決めることにしたのだ。その結果、ジャカが選出されたわけだが、同選手に関しては「レギュラーに相応しくない」とファンの間で実力不足を指摘する声があったのだ。そして、チームの成績不振と共に同選手に対する批判は高まり、2019年10月27日のクリスタルパレス戦で途中交代した際に、ホームのアーセナルサポーターから主将に対して大ブーイングが起きた。

 ジャカはブーイングの嵐の中、ピッチを出る際にサポーターに向けて暴言を吐いてしまった。この言動が問題となり、就任からわずか1カ月半でキャプテンの座を追われることになった。

■ウィリアム・ギャラス(アーセナル)


 アーセナルでは、ジャカ以前にもキャプテンの交代劇があった。それが元フランス代表DFウィリアム・ギャラスである。2007年にティエリ・アンリの後任として主将を任されたギャラスは、翌年のインタビューでチームメイトを批判してその座を追われることになった。

 チームメイトについて「勇敢さが足らない」「仲間に暴言を吐く者がいる」と赤裸々に語ってしまい、腕章を剥奪されたのだ。だが、彼の場合はこの一件だけが原因ではないだろう。ギャラスはそれ以前にも、試合終了間際にチームメイトがPKを献上した際に、苛立ちを露わにして敵陣でPKを見守るという大人気ない行動をとっていたのだ。

■ジョン・テリー (イングランド代表)

 キャプテン剥奪で話題になったチームはアーセナル以外にもある。中でも最も物議を醸したのはイングランド代表のジョン・テリーだろう。チェルシーの絶対的リーダーだったテリーは、2006年にイングランド代表でも腕章を託された。彼のリーダーシップに関しては、クラブチームと代表で同僚だったフランク・ランパードが「彼は選手としての才能だけでなく、自分や周りの選手の力を最大限に引き出す情熱も素晴らしかった。彼にはリスペクトしかない」と太鼓判を押すほどだった。

 しかしテリーは2010年、元チームメイトであるウェイン・ブリッジの元カノとの不倫報道が出て代表チームの腕章を剥奪されることに。その後、一度はキャプテンに復帰するも、今度は試合中の人種差別発言の疑惑で裁判沙汰になり再びキャプテンを剥奪されたのだ。しかし、その間もチェルシーではずっと主将を任されており、チェルシーのサポーターからするとテリーは史上最高のキャプテンなのだ。

■ジョーイ・バートン(QPR)


 “問題児”で知られるジョーイ・バートンは、過去に「逮捕」、「チームメイトへの暴行」、「失言」、「ギャンブル問題」など様々なトラブルを起こしているが、もちろん「キャプテン剥奪」も経験している。QPR時代の2012年、キャプテンを任されていたバートンは古巣マンチェスター・Cとの最終節の試合で、カルロス・テベスに肘打ちを食らわして一発退場になってしまったのだ。さらにバートンはピッチを去る際にセルヒオ・アグエロに蹴りを入れると、続いてヴァンサン・コンパニに頭突きを見舞おうとした。

 この行為でイングランドサッカー協会から12試合の出場停止処分を受けたバートンは、キャプテンを剥奪されただけでなく、クラブ内に居場所がなくなりフランスのマルセイユへレンタルに出されることになった。

 それでも、2013−14シーズンにQPR復帰を果たすと、チームの主力に定着。2014−15シーズンからは再び腕章を巻くようになったが、シーズン途中には7試合連続のイエローカードという珍記録も打ち立てている。

■クリストファー・サンバ(ブラックバーン)


 チームを去ろうとすれば腕章を奪われるのは当然だろう。元コンゴ共和国代表DFクリストファー・サンバは、ブラックバーン時代の2010年にキャプテンに就任するも、それから半年と経たずして移籍を志願。買収劇や監督交代など様々な問題を抱えていたクラブに愛想をつかし「クラブの運営方針がこのままなら、僕はここに居たくない」と断言したのだ。しかしクラブは同選手の移籍を認めず、チームに留めて腕章を剥奪した。

 現役時代にはそんな騒動もあったサンバだが、先日ブラックバーン(現在はイングランド2部)のアカデミーのコーチに就任することが発表された!

■その他


 キャプテン剥奪は決してイングランドフットボール界に限った話ではない。セリエAでは、2019年2月に当時インテルに所属していたFWマウロ・イカルディが腕章を取り上げられている。理由は、契約延長の交渉決裂とされているが、同選手の妻で代理人のワンダ・ナラがクラブと対立したことが最大の要因と囁かれている。

 バルセロナやインテルで活躍した元カメルーン代表FWサミュエル・エトーも腕章を奪われたことがある。史上最高のアフリカ人選手の呼び声高いエトーは、2014年に自身4度目となるワールドカップに出場するも、怪我の影響で1試合しか出場できなかった。すると“ボーナス問題”に揺れていたチームも3戦全敗でのグループリーグ敗退という屈辱の結果に。大会後、新生カメルーン代表メンバーにエトーの名前はなく、後任となる新キャプテンまで発表された。これを受け、エトーは代表引退を表明した。

その他に、元フランス代表のDFパトリス・エヴラはマンチェスター・Uとフランス代表でそれぞれ1回ずつキャプテンを剥奪された経験を持つ。どんな名選手であろうが、チームの和を乱す者にキャプテンは任せられないのだ。

(記事/Footmedia)

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