ホンダF1山本MS部長の2018年総括:開発の方向性が定まり熟成した1年。レッドブルへのPU供給にも期待

2018年12月19日(水)7時0分 AUTOSPORT web

 ホンダのモータースポーツ活動を支える山本雅史モータースポーツ部長は、ホンダのF1復帰4年目となった2018年シーズンを振り返り、トロロッソと一体感をもって戦えたことに好評価を下し、今後の課題と2019年に向けた目標を語った。


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 ホンダのF1活動を技術的な面からだけでなく、政治的・経済的な面からもバックアッブしているのが、本田技研工業でモータースポーツ部長を務めている山本雅史だ。山本モータースポーツ部長にとって、この1年はどのようなシーズンだったのだろうか。


「トロロッソは初めて組むチームなので、コミュニケーションを密にとることを重視しました。マクラーレンと組んで戦った3年間で、私たちはいろんなことを学んだので、その反省を踏まえて、4年目のシーズンに臨みました」


「幸いトロロッソも我々に対して非常にオープンマインドで接してくれたおかげで、思っていた以上に一体感を持って戦えていたと思います」


 ただし成績だけを見れば、マクラーレンと組んだ2017年もコンストラクターズ選手権は9位で、2018年のトロロッソ・ホンダも9位だった。ホンダは2019年からレッドブルにもパワーユニットを供給するが、トロロッソとの関係も同様に続く。


「チームとの雰囲気も、ホンダ内の雰囲気も、過去3年間よりも2018年のほうが良くなりました。でも、ホンダという看板を背負って戦わせてもらっている立場を考えると、まだまだ満足できる結果を出せていないことは明らか。トロロッソ・ホンダがさらに上を目指すためには、我々ももっと踏み込んだ議論を展開し、関係をより密にしなければならないでしょう」


 どういうことか。山本モータースポーツ部長は、こう続けた。


「例えば、シーズン序盤のバーレーンGPで4位に入りましたが、その勢いを活かすことができなかった。それはホンダ(のパワーユニット)にも原因はありましたが、チーム(の車体)にもあった。その辺で、我々はもっとトロロッソに踏み込んだ協議をしていても良かったのではないか。その点は反省していますし、来年に向けた課題だと思っています」


■パワーユニット開発ではルノーに追いつくも、課題が残る1年に


 それではパワーユニットの開発について、山本モータースポーツ部長は、どのように評価しているのだろうか。


「パワーユニットの開発の伸びは、今年は非常に良かったと思っています。我々はレッドブルとの契約のこともあって、どうしてもスペック2をカナダGPに投入したかったわけですが、その期待に応えてくれました」


 という一定の評価を下したものの、次のように課題も指摘した。


「当初の計画に対しては若干の遅れがあったことも事実です。スペック3の投入に関しては、もう少し早く投入できたでしょうし、投入したロシアGPではキャリブレーションの問題などもあってレースでの使用は見送らなければなりませんでした」


「(スペック3は)日本GPで本格的に投入されたものの、きちんと使いこなすことができたのかと、言われると疑問も残りました。これらの経験を来シーズンにきちんと活かしてほしい」

トロロッソ・ホンダ 2018年F1第17戦日本GP


 とはいえ2018年シーズン、ホンダはメルセデスやフェラーリと同様にパワーユニットの開発をスタートさせていたルノーに、ついに追いついた。この事実は4年目における大きな収穫だったと言っていいだろう。


「シーズンの途中で、研究所のスペシャリストの人たちを集めて、開発の方向性についていろんな議論を交わしました。その結果、開発が加速度的にスピードアップしました」


 11月には、IHI(旧石川島播磨重工業)と2年間のテクニカルパートナーシップ契約を締結したことを発表した。ただしホンダは2015年の復帰参戦時からIHIよりターボの供給を受けているほか、1980年代の第2期F1活動時で多くの栄光をつかんだときに使用していたターボもIHI製で、両社は以前から密接な関係を築いている。


「このタイミングで発表したのは、IHIとミーティングをしている中で、『ホンダF1のターボがIHI製であることを公表することで、F1が技術的に非常にレベルの高い世界であることを、IHIのスタッフの方がホンダとともに共有し、かつIHIのスタッフの士気を高めることになりませんか』と提案したところ、IHIの役員の方も名前を出すことで自分たちの技術が具現化するいい機会だと賛同してくれました」


■2018年は熟成した1年。2019年はレッドブルとの提携に期待


 山本モータースポーツ部長は、4年目の2018年シーズンは、いい意味でホンダが熟成した1年だったと表現した。


「これまでの3年間は、その年の課題を克服するのが精一杯で、なかなか翌年に向けた開発を始められなかったが、2018年はようやく開発の方向性が定まり、2019年に向けて地に足がついた活動ができた。来春のテストには、今以上にパワーアップしたパワーユニットを準備しようと考えています」

ピエール・ガスリーは2019年はレッドブルへ移籍。アブダビでのタイヤテストでもレッドブルのマシンをドライブした


 そして2019年は、トロロッソだけでなく、トップ3チームのレッドブルにもパワーユニットを供給する。


「もちろん、来年レッドブルと組むにあたっては、不安もたくさんありますが、同時にワクワクするという期待もあります。研究所の雰囲気も1年前より明るくなりました」


 熟成した4年目のホンダF1が、5年目にどんな形で収穫されるのか楽しみにしよう。


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