「子どもの頭痛」の特徴は? 痛みを緩和するにはどうする?
2025年1月30日(木)13時0分 マイナビニュース
子どもの体調不良は、大人以上に心配になるもの。たとえば、子どもに頭痛の症状がみられる場合、どのような原因が考えられ、どう対処すればいいのでしょうか。この記事では、子どもの頭痛の原因や特徴、検査が必要なケースや頭痛を緩和するためにできることを解説しています。あまり知られていない子どもの頭痛について理解を深め、いざ症状が出た時の参考にしてください。
○■子どもの頭痛の原因と特徴
子どもの頭痛は腹痛などと比べると頻度は低いですが、小さな子どもでも「頭が痛い」と訴えることがあります。頭痛の原因はさまざま考えられるためきちんと調べる必要がありますが、「どう痛いの? ズキズキする? それともズシンと重い感じ? 」など大人が質問攻めにすると子どもが混乱してしまうため、まずは子どもからじっくり話を聞くことが大切です。
そのうえで、子どもの頭痛は風邪などによる発熱に伴うことが多いため、熱がないか確かめましょう。その他には、鼻炎などの鼻づまり、目の病気、運動不足、肩こり、精神的ストレス、眼精疲労なども原因として挙げられます。
頭痛が頻繁に起こる場合や慢性化している場合、これら以外の病気や、両親どちらかの「片頭痛」の体質が子どもに遺伝している可能性もあります。片頭痛は特に母親から遺伝しているケースが多く、家族歴が子どもの頭痛を診断するうえで参考になります。片頭痛は、見ようとするところがぼやけて回りがキラキラするなど目の症状や感覚の異常が頭痛の前に起こることがあり、子どもの片頭痛の場合、前頭側頭部であれば両側で起こることもあります。
片頭痛の持続時間は1〜72時間(大人は4〜72時間)で、ズキンズキンと脈打つような痛みがあり、その他には吐き気や嘔吐、光・音・臭いに敏感になるという症状もみられます。
こうした片頭痛が発作性の強い頭痛であるのに対し、「緊張型頭痛」は、痛みの強度は強くないものの、ダラダラと締め付けられるような頭痛が続くという特徴を持ちます。思春期ほど多くはありませんが、年少児でもストレスがかかると慢性的に緊張型頭痛を訴えることがあります。
○■注意したい子どもの頭痛
子どもの頭痛で多いのは上記に挙げたような片頭痛ですが、発熱を伴う頭痛の中で特に注意したいのは、頭の感染症である「髄膜炎」や「脳炎」です。
○<髄膜炎>
「髄膜」とは、脳を覆っている軟膜、クモ膜、硬膜の総称で、この軟膜、クモ膜、クモ膜と硬膜の間のクモ膜下腔に炎症のある状態が「髄膜炎」です。髄膜炎は原因によっていくつかに分類されますが、子どもの場合、細菌が原因である「化膿性髄膜炎」と、主にウイルスが原因である「無菌性髄膜炎」が多くみられます。
一般的な症状は熱や頭痛、吐き気、嘔吐等で、場合によってはけいれんや意識障害が起こることもあります。これらの症状を起こして髄膜炎が疑われた場合は、背骨に針を刺して髄液検査を行います。
化膿性髄膜炎は抗生物質を使って治療しますが、治療が遅れると死亡したり脳に後遺症が残ったりすることがあるため、早期治療が大切です。無菌性髄膜炎は化膿性髄膜炎よりやや軽症ですが、炎症が強いと脳が腫れ、脳細胞を傷害して後遺症が残ることがあります。
○<脳炎>
脳実質に炎症がある状態を「脳炎」と呼びますが、脳炎のほとんどはウイルスが原因です。無菌性髄膜炎は、炎症が脳までおよぶと「髄膜脳炎」といいます。脳に炎症があると脳がむくみ、頭蓋骨に覆われた脳がその圧により圧迫され、脳細胞がやられてしまいます。脳圧が高くなると、頭痛や嘔吐、けいれん、意識障害などの症状が現れます。
意識障害の症状が現れたら医師は脳炎を疑うことができますが、脳炎の初期段階は判断が難しいものです。少し顔色が悪い、あくびがよく出る、不可解な言動があるなどの症状がみられれば、すぐに医療機関にかかりましょう。
脳炎の原因ウイルスは複数あり、ウイルスによって重症度が異なります。注意が必要な脳炎は、夏風邪ウイルスの「エンテロウイルス」や突発性発疹の原因である「ヘルペスウイルス属」です。水痘(水ぼうそう)もヘルペスウイルス属であるため、注意しましょう。
○■子どもの頭痛に検査は必要?
子どもの頭痛は大人同様、まずは、問診による診断が中心になります。頭痛で外来にかかる子どもの患者のうち、最も多いのは片頭痛ですので、この場合検査をしても判断できません。ただし、歩行の際にふらつく、手足が動かしづらい、毎日のように頭痛と嘔吐がある、症状が進行しているなどの場合、頭部CTやMRIが必要な緊急性のある頭痛と考えられます。
また、頭痛の原因として副鼻腔炎などの炎症や、まれに高血圧のケースもあるため、場合によっては血液検査や血圧測定も必要です。その他、眼科や歯科の病気で頭痛が起こることもあります。さらに年少児では、片頭痛と似たてんかんに関連した頭痛もあるため、脳波検査が必要なこともあります。
一方、片頭痛や緊張型頭痛が慢性化した「慢性連日性頭痛」という頭痛もあり、これは、1日に4時間以上、1ヶ月に15日以上、3ヶ月以上続く、思春期の子どもに多い頭痛です。もともと片頭痛の経験があった子どもが思春期に強いストレスにさらされて頭痛が慢性化するケースで、学校の長期欠席につながるなど日常生活に支障をきたすことがあります。
こうした心の問題から来る頭痛は鎮痛薬などの薬が効きにくく、カウンセリングや抗不安薬が必要な場合もあります。検査以外にも、普段から子どもの性格や感じ方に気を配ることが頭痛の早期対応につながります。
○■頭痛を緩和するためには
風邪などによる頭痛の場合、解熱鎮痛薬(イブプロフェン、アセトアミノフェン)を飲んでぐっすり眠ると症状が落ち着くことがあります。
片頭痛や緊張型頭痛の場合、子どもに勧められるのは、まずは薬に頼らない治療です。特に、生活習慣の改善が大切で、睡眠時間を1時間長くしただけで頭痛の緩和がみられる子どももいます。また、おけいこ事を見直して生活をシンプルにするのも一つの手です。
片頭痛の場合、光など頭痛を誘発する原因を取り除くことも大切です。テレビやゲームなどに制限時間を設ける、学校の座席を窓側から廊下側に移してもらうなどして片頭痛が改善することもあります。子どもと一緒に生活全般を見直し、頭痛の緩和のためできることを積み重ねていきましょう。
最後に「子どもの頭痛」について、小児科の専門医に聞いてみました。
「痛み」は、人が感じる苦痛の中で最もつらいものと言われており、日常生活に制限を強いられる原因となるため、痛みを取り除いたり軽減したりすることは、医療において非常に重要なテーマだと位置付けています。
頭痛を大まかに分類すると、痛み自体が疾患である一次性頭痛と、頭痛の原因となる疾患が存在する二次性頭痛とがあります。一次性頭痛には片頭痛や緊張型頭痛などが含まれ、小児の頭痛の原因の90%を占めます。一方、二次性頭痛は熱性疾患に伴うものが最も多いとされています。身体症状に加えて詳細な情報収集や臨床経過から診断を行いますが、診断に苦慮する症例が散見されるのも事実です。特に小児の場合は、慎重に経過を追う必要があり、基礎疾患が疑われる場合は脳神経外科や耳鼻科、眼科、歯科など各専門科と協力して診療にあたることもあります。
子どもの痛みの程度が強く、ご家族の心配も大きい時は、無理をせず薬物療法を考慮しますが、頭痛への対応はバリエーションが多く、ご家族やご本人と生活環境の調整について話し合うことも大切です。睡眠や食事・運動、リラクセーションなど日常生活を見直すことで、症状が和らいだり発症予防につながることも経験されます。
○元野 憲作(もとの けんさく)先生
一宮西病院 小児科/部長
資格:日本専門医機構認定 小児科専門医、日本集中治療医学会 集中治療専門医、日本救急医学会 救急科専門医