眼瞼下垂を放っておくとどうなる? 治療方法は?

2025年4月11日(金)10時0分 マイナビニュース


まぶたが下がってきてしまい、見にくくなる眼瞼下垂。頭痛や肩こりの原因にもなります。見えづらいことを気にせずに医療機関で診てもらうことなく時間が経ってしまうと、どうなるのでしょうか?
ここでは眼瞼下垂の症状の変化や治療方法、手術後のことについてお伝えします。
○<先天性の眼瞼下垂の場合>
片目だけが生まれつき眼瞼下垂になっている場合は、医療機関で診てもらわずに放置すると、眼瞼下垂の目が弱視になることがあります。
また成長とともに、少しでもよく見ようとしてあごや眉を上げる癖がつくことも多いです。
○<後天性の眼瞼下垂の場合>
後天性の眼瞼下垂のほとんどは、放置すると徐々に上まぶたがますます上がらなくなっていきます。その結果、視野は狭まっていき、さらに見えにくくなってしまいます。
また、下がったまぶたを上げようとして無意識のうちにおでこの筋肉を使うことになるため、眉毛の位置が高くなったり、ひたいのシワが増えたりすることもあります。 さらに、こうした姿勢を取り続けることで、疲れやすくなったり頭痛・肩こりも起こりやすくなるのです。
なおボツリヌス毒素を注入して起こった眼瞼下垂だけは、3〜4カ月ほど経てば自然に治ります。
○■眼瞼下垂の治療方法について
軽くまぶたが下がっている軽度の眼瞼下垂では、まずは経過観察を続けます。症状が進み、視野が狭まって日常生活に影響するようになったら、手術を考えることとなります。
手術は主に「まぶたを上げるための筋肉の付着部を強化・修復する手術」と「つりあげ術」の2つに分けられます。
なお、偽眼瞼下垂の中でも加齢によって上まぶたの皮膚がたるんで視野を妨げる場合は、たるんだ皮膚を切除する手術(余剰皮膚切除術)を行います。
○<まぶたを上げる筋肉の付着部を強化・修復する手術>
まぶたを上げるのに使う筋肉の付着部が、弱くなる・はがれる・穴が開くといった状態の場合に行います。
筋肉の付着部は、筋肉の腱である「上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)」、交感神経が支配する「ミュラー筋」の2層になっています。
手術では、この上眼瞼挙筋の腱やミュラー筋を別々または同時にはがし、縮めて固定します。具体的には「皮膚を切る手術」と「結膜に糸を通す手術」に分けられます。
●皮膚を切る手術
皮膚を切り、上眼瞼挙筋の腱やミュラー筋を別々、または同時にはがして縮め、固定します。切った痕は二重まぶたの線になり、目立ちません。
●結膜に糸を通す手術
結膜に小さな穴を開けて糸を通し、上眼瞼挙筋の腱やミュラー筋を縮め、固定します。
○<つりあげ術>
まぶたを上げる筋肉の動きが悪い、またはその筋肉の神経が麻痺している場合に行います。
おでこの筋肉が収縮すると、まぶたも上がります。そのため、眉とまぶたの間にトンネルを作って、人工素材や太ももなどの筋膜を通すことで、眉を吊り上げます。
なお、筋膜は収縮して硬くなることがあるため、現在は人工素材を使うことが多いです。
○<子どもの弱視予防のための手術とは>
先天性の眼瞼下垂がある子どもの場合、つりあげ手術を行います。この手術は生後6カ月から行えますが、手術のタイミングはお子さんの症状や環境などを踏まえ、保護者と医療機関で相談して決まります。
○<保険診療と自費診療となるケースとは>
眼瞼下垂の治療は、保険診療(医療保険が適用された分、治療費が安くなる)となる場合もあれば、自費診療(治療費は全額自費負担)となる場合もあります。
●保険診療の適用となる場合
視野が狭い、上まぶたが開けづらいなど、機能的なトラブルが見られ医療的な必要性がある場合は「保険診療」です。
●自由診療となる場合
「二重の形や幅を好みに合わせて形成する」「症状が軽度だが見た目を改善したい」というように見た目にもこだわって手術を行う場合は「自由診療」です。
○<手術の効果について>
眼瞼下垂手術の後で、次のようなことが起こることがあります。
●目が乾きやすくなる
眼瞼下垂手術を受けると目が大きく開くようになるため、眼が乾きやすくなります。なお、手術後半年ほどで改善します。
●一時的に視力に影響する
眼瞼下垂手術後、眼の屈折状態が変化して、一時的に見にくくなるケースがあります。この見にくさは手術後半年ほどで改善します。
●目の開きに左右差ができる
適切な手術を行っても、抜糸すると眼の開きに左右差が出たり三角目になることがあります。その場合は手術後2週間以内、または半年以降に修正手術を受けることになります。
●正常なはずのまぶたが下がる
片側だけ眼瞼下垂があり手術を受けた後、正常に見えたもう片側のまぶたが下がることがあります。
●手術後、眉が下がる
皮を取る手術で改善できます。
●頭痛や肩こりが治らない
術後は頭痛や肩こりが改善することがほとんどですが、治らないこともあります。
●自律神経の不調が起こる
手術後に自律神経が乱れることがあります。その場合、安定剤などを処方してもらうことになります。
最後に眼瞼下垂の改善法に関して、形成外科の専門医に聞いてみました。
眼瞼下垂とは何らかの原因で瞼が下がる病気です。生まれつきの眼瞼下垂(先天性眼瞼下垂)では、放置しておくと視力発達を障害する恐れがあるため、しかるべきタイミングでつりあげ法という瞼とおでこをつなぎ、眉を上げる動作で目が開くようにする手術を行います。後天性の下垂では、放っておくと眉毛を上げる力で目を開けようとするため、おでこに深くしわが刻まれたり、おでこの筋肉が常に緊張することによる頭痛が起こることがあります。
また、顔を上げて見ようとするために首の痛みなどを生じることがあります。治療を行う前には、まず脳動脈瘤や重症筋無力症など眼瞼下垂をを伴う疾患が隠れていることがあるため診察を行い、必要に応じて精査を行います。まぶたを上げる筋肉の膜が伸びたり外れたり癒着しておこる眼瞼下垂については、皮膚のたるみが伴っている場合適切な量の余剰皮膚切除を行い、まぶたを上げる筋肉の膜を引き出してきて固定しなおします。余剰皮膚があまりない場合は結膜側から糸を通し挙筋腱膜やミュラー筋を縮め固定する治療を行うこともあります。
○野田 慧(のだ けい)先生
一宮西病院 形成外科/部長
資格:日本形成外科学会 形成外科専門医

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