40・50代でせきをする回数や頻度が増えてきたようなら<のどの機能>が衰えている可能性が。大谷義夫医師「特に怖いのは睡眠中に唾液などを誤嚥する場合で…」
2025年2月3日(月)6時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
厚生労働省の「令和5年(2023)人口動態統計(確定数)」によると、死因順位の第5位は肺炎、第6位は誤嚥性肺炎で、両者を合わせると全体の8.6%を占めるそうです。そのようななか、医学博士で呼吸器専門医の大谷義夫先生は「大きな傾向を見れば、肺炎で亡くなる高齢者は増えていますし、年齢が高くなるほど亡くなる人の数も増加します」と指摘しています。そこで今回は、大谷先生が肺炎・誤嚥性肺炎を防ぐためにできることをまとめた著書『「よくむせる」「せき込む」人のお助けBOOK』より一部を抜粋してご紹介します。
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むせたり、せきをしたりするのは心配ないが、頻度や回数が増えてきたら要注意
食事をするとき、むせたり、せき込んだりするのが気になるという質問を受けることがありますが、これは病気ではありません。
食べ物や飲み物は口から食道に入るのが普通ですが、飲み込むときに誤って気道に入ることがあります。これを「誤嚥(ごえん)」といいます。
でも心配いりません。誤嚥したときには、せきをすることによって、気道に入った飲食物を気道の外に出そうとします。これを「せき反射」(後述しますが、せき反射は飲食物以外でも起こります)といいます。
なお、「むせる」も気道に飲食物が入ったときのせき反射を表す言葉なので、本記事で「せき」というときは、「むせる」を含んでいることがあります。
のどの機能も年齢とともに衰える
ただし、年齢が40代後半で、若い頃よりも、誤嚥によるせきの回数が増えたり、せきをしている時間が長くなったり、せきをする頻度が増えてきたと感じているのであれば、のどの機能の衰えが始まっている可能性があります。
私も40代前半まで、誤嚥することはほとんどありませんでした。ところが40代中盤で総合病院勤務の頃、昼食をゆっくりとる時間がなくて、カレーライスを2〜3分ぐらいの時間で流し込むようにして食べたら、とたんにせき込んでしまったという経験をしたことがあります。
『「よくむせる」「せき込む」人のお助けBOOK』(著:大谷義夫/主婦の友社)
そのとき、「ああ、自分も誤嚥するような年齢になったんだな」と思ったものです。
年齢とともに体の機能は衰えていきますが、のどの機能も例外ではありません。とくに、40代から50代と年齢を重ねるにしたがって、せきをする回数や頻度が増えてくるようであれば、のどの機能の衰えが進行している可能性があります。
<『「よくむせる」「せき込む」人のお助けBOOK』より>
寝ているとき、気づかないうちに誤嚥が続くと、誤嚥性肺炎を招くことも
のどの機能が衰えると、誤嚥の頻度が増えていきます。それが先々、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を招くことにもつながります。
誤嚥性肺炎とは、誤嚥によって起こる肺炎です。先に誤嚥の例を食事のときのせき反射で説明しましたが、この場合は、本人が誤嚥していることに気づいているので、「顕性誤嚥(けんせいごえん)」といいます。直ちに強いせき反射が起こるので、顕性誤嚥で肺炎になることはめったにありません。
問題なのは、夜間睡眠中に、唾液などを誤嚥する場合。睡眠中でも知らないうちにせき込んでいるのですが、これは唾液などの誤嚥に対する反射です。この本人が誤嚥していることに気づかない誤嚥のことを「不顕性誤嚥」といいます。
夜間はせき反射が低下するので、口の中にいる細菌を含む唾液が気道に落ちて、肺炎を起こすことがあります。これが誤嚥性肺炎で、そのほとんどがこの不顕性誤嚥が原因です。
誤嚥性肺炎は年齢とともに増えていく
そして、誤嚥性肺炎は年齢とともに増えていきます。
上のグラフは、肺炎で入院した患者のうち、誤嚥性肺炎がどのくらいかの比率を示したものです。グラフを見ればわかるように、50歳未満で誤嚥性肺炎を起こした人はいません。
ところが、年齢が上がるにしたがって、誤嚥性肺炎の比率が増えてきます。
高齢になると誤嚥性肺炎が増える理由の1つは、先にお話しした、加齢によるのどの機能の衰えです。
もう1つの理由として、加齢による免疫力の低下があります。細菌を誤嚥しても、免疫力が十分あれば肺炎を起こしません。しかし、免疫力が低下していると、細菌を退治できず発症してしまうのです。
※本稿は、『「よくむせる」「せき込む」人のお助けBOOK』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。