損をしない年金・退職金の受け取り方とは?老後のお金対策の第一歩は、優遇制度を知ることから

2024年2月5日(月)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

税金の控除や医療費の自己負担額を減らすなどの優遇制度を活用できていない人は多い、と税理士の板倉京さんは言います。どのタイミングでどんな制度が使えるのかを知っておくことが、老後のお金対策の第一歩です(構成=村瀬素子 イラスト=古谷充子)

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情報は向こうからやってこない


税理士として相談を受けるなかで日々感じているのは、税金や社会保障などの制度をよく理解していない人があまりにも多い、ということ。

日本には税金の控除や特例、医療費の自己負担額軽減など、私たちにとって得になる、さまざまな制度があります。けれど、自分から申請しないと活用できないものがほとんどです。

役所や税務署から、「あなたは、この制度を使えば得ですよ」と案内してくれることはまずありません。そのため知識がないと、税金の控除を受けられないなどの事態が発生してしまうのです。

一般的に65歳以降は、貯えと年金で生活する《ストック世代》に入ります。しかし、社会保険制度が改定されるたびに、高齢者の保険料や医療費の負担は増え続けているうえ、近年の物価高もとどまるところを知りません。

国は賃金上昇の政策を打ち出していますが、恩恵を受けるのは働いている世代だけ。ストック世代ほど、「節税する」「自己負担額を減らす」「受給額を増やす」制度を知って活用することが、損をしないためのお金対策の第一歩だと私は思います。

まず、定年退職前であれば「年金」と「退職金」、定年退職後は「医療費や介護費」「家(不動産)」「相続」で受けられる優遇制度を知っておきましょう。次ページから、具体的な制度の内容と使用方法、メリットをご紹介していきます。

とはいえ、これらは個々の状況で使える制度や損得の目安が異なるうえ、複雑な公的制度を一般の人がすべて理解するのは難しいもの。

まずは、こんな制度があるということを知っておき、役所や税務署などの専門機関で「こういう制度があると聞きましたが、私は使えますか? 手続き方法は?」などと、理解できるまで質問してください。公的機関も、制度を正しく使ってほしいという思いがあるので、親切に教えてくれるはずです。

皆さん、税金と社会保険料をたくさん払ってきたのですから、堂々と制度を活用しましょう。


(イラスト:古谷充子)

【年金】に関する制度


年金受給で重要なのは、「何歳からもらうか」という選択。原則は65歳からの受給ですが、60歳〜75歳の間で選ぶことができます。

65歳より後に繰り下げて受給すると、受給額は月0.7%ずつ増額。65歳から受給開始した人と、70歳から受給開始した人を比べた場合、後者の受給総額が上回る年齢は81歳です。ですから、長生きすればするほど、70歳から受け取ったほうが得になります。

ただし年金額が多くなれば税金や健康保険料も高くなるため、単純計算では判断できません。年金制度の仕組みは複雑ですから、ケースごとの注意点や損をしない裏技などをお伝えしていきます。

65歳以降も働き、高額な給与を得ながら年金をもらう場合は、年金の繰り下げ受給を検討したほうがよいでしょう。なぜなら、給与や賞与と年金の合計額が月48万円を超えると、超えた分の半分の老齢厚生年金がカットされてしまうからです。繰り下げしない場合は、働き方を調整して給与所得を減らすのも手。

昭和41年4月1日以前に生まれた女性(男性は昭和36年4月1日以前)は、65歳になる前に「特別支給の老齢厚生年金」をもらえます。支給開始は生年月日に応じて、60歳〜64歳に限られるので、よく確認してください。

受給開始年齢到達の3ヵ月前に日本年金機構から年金請求書が届きます。申請しないともらえないので忘れずに。

【退職金】に関する制度


退職金は、税金対策によって数十万、数百万単位で手取り額が変わることがあるため、手取りを増やすためには、非課税枠をフル活用しましょう。

退職金の所得控除額(退職所得控除額)は、勤続年数が20年以下の場合「40万円×勤続年数」、20年超なら「40万円×20年+70万円×(勤続年数−20年)」で計算します。たとえば勤続年数40年の人は、2200万円までが非課税枠になる計算です。

退職金の受け取り方には、「一時金」と「年金型」があります。一時金で受け取る場合、先の計算で出した退職所得控除額の範囲内に退職金が収まれば税金はゼロ。社会保険料もかかりません。

一方で年金型は、公的年金と合わせて所得として計上されるため、所得税が発生し、社会保険料の負担も大きくなりがちです。退職所得控除の範囲内か、少し超えるぐらいの退職金ならば一時金で受け取ったほうが得でしょう。

退職金が高額な場合は、一部を年金型で受け取るほうが有利なケースもあるので、税理士など専門家に相談を。

確定拠出年金の受け取り方は退職金と同じですが、受け取り期間は年金と同様で、基本60歳〜75歳の間で選ぶことができます。

そのため、会社の退職金制度に「確定拠出年金」がある場合、退職一時金と確定拠出年金の合計額が退職所得控除額を超えてしまうようであれば、退職一時金を受給した年を避けるのが得策。翌年以降に受け取るよう調整しましょう。同じ年度に受給すると、合算されて所得税が高くなってしまいます。

なお、自営業者で、個人型確定拠出年金(iDeCo)と小規模企業共済の両方に加入している場合も同様です。

「医療」「介護」「家」「相続」につづく

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