〈女80歳〉お金持ちでも寂しい人と、お金がなくても幸せな人の違い。精神科医・和田秀樹が教える大往生するための日々の過ごし方とは

2025年2月8日(土)12時30分 婦人公論.jp


積極的に生きていく(写真提供:Photo AC)

「60歳の壁を超えると、女性は元気になり、男性は萎んでいく」。女80歳、もう年だからと自分を抑えるのではなく「あれもしたい、これもしたい」と積極的に生きてみませんか。ベストセラー『80歳の壁』の著者である高齢者専門の精神科医・和田秀樹さんによると、夫や子ども、世間体からやっと自由になれる高齢期こそ、女性の幸せのピーク《幸齢期》だと言います。最新作『女80歳の壁』より、楽しく壁を乗り越える秘訣を紹介します。

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毎日を/生き切った/先の大往生


私は患者さんにも、次のように言ってきました。

「年をとっても、ファッショナブルに生きましょうね」「推し活も、ホストクラブもどんどんやればいいんです」「シャネルもグッチも幸齢女子が持つことで価値が出る」

「もう年だから、あれをしちゃダメ」と自分を抑えるのではなく、「もう年だから、あれもしたい、これもしたい」と積極的に生きたらいいのです。

大往生という言葉から、みなさんはどんな様子を連想しますか?苦しまずに眠るように、安らかに死んでいくことでしょうか。

病死や事故ではなく、老衰によって死を迎えることでしょうか。そもそも、みなさんは大往生がしたいでしょうか?

日本人の平均寿命は、男性が81.05歳、女性が87.09歳です(2022年、厚生労働省調べ)。ところが、日本人の健康寿命はこれよりずっと低く、男性は72.68歳、女性は75.38歳です。

つまり、男性はおよそ9年間、女性は12年間を「不健康」な状態で生きている、というイメージが定着しています。

多くの人が大往生を望むのは、この「不健康寿命」を意識してのことかもしれませんね。

ではどうしたら、大往生ができるのでしょう。「大往生の薬」なるものがあればいいのですが、残念ながらありません。

でも「大往生の秘訣」はあります。それは「老いを受け入れる」ということです。「もう年だ」と自覚したうえで、「だから**するんだ」と積極的に生きていく。

そうやって、日一日と重ねた先に大往生があるのだと思います。

幸・不幸/決められるのは/貴女だけ


大往生をしたいと思うのに、大往生ができない人——。

その原因は、自分の「心理」にあることが多いのです。

例えば、疑い深い人は、好きな相手ができても「こんなおばあちゃんを好きになるはずがない。お金目当てなんだろうな」などと思ってしまいます。

嫉妬心が強い人もそう。「お友だちの家には孫がしょっちゅう来るのに、うちには全然。きっと私は嫌われてるんだ」などと考えがちです。

自分の人生を、自分で寂しくしてしまっているわけです。

ノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者のダニエル・カーネマンは、次のように言っています。「人間の幸せは参照点で決まる」と。

参照点というのは、人が何を基準に「幸せ・不幸せ」を判断するか、という点のことです。

例えば、100億円を持ってる人は「100億円」が参照点になるので、1万円でも損したら不幸な気持ちになります。

ところが、1万円しか持っていない人は100円を拾っただけでも、めちゃくちゃ幸せな気分になります。

つまり「参照点より上か下かで幸せが決まる」と、カーネマンさんは言っているのです。幸齢の方にこの理論を当てはめると「ああ確かに」と、納得できます。

例えば、大企業の社長だった人が、入居金3億円、月額50万円の豪華な老人ホームに入りました。でも、文句ばかり言っています。

「なんだ、この狭い部屋は。社長時代はいつも料亭で食事してたのに。スタッフも俺を老人扱いしやがって」と。社長時代の生活が参照点になっているので、不幸に思ってしまうのです。

ところが、お金の苦労をし、満足な生活ができなかった人は、特別養護老人ホームに入っても幸せを感じます。

「3品もおかずがつくのよ。温かいベッドで眠れて、スタッフの人も話を聞いてくれるの。こんな幸せになっていいのかしらね」と。幸・不幸は、自分の考え方次第なのです。

参照点が高ければ、どんなに幸せな状況でも「不幸せ」と感じます。反対に、参照点が低ければ、世間的には不幸と見なされる状況でも「幸せ」と感じるのです。

「まあ、いいか」/受け入れちゃえば/楽になる


「ま、いいか」と、さまざまなことを受け入れて生きる——。

年をとるということは、体の機能が衰えていくことでもあります。「まだまだ自分はできる」と、老いに抗(あらが)うことは大事です。

でも、意地を張ればつらくもなります。だったら「ま、いいか」と受け入れてみるのも、選択肢としてはありだと思うのです。

じっさいに、「ま、いいか。杖を使ってみようかな」とか「ま、いいか。補聴器をしてみようかな」と、柔軟に、ひょうひょうとして生きられる人のほうが、アクティビティ(活動力・行動力)は高い傾向にあります。


柔軟に生きる(写真提供:Photo AC)

例えば、車いすに乗ると、とても楽なことがわかります。紙パンツをはくと、外出先でのトイレの心配がなくなります。

すると、思い切って出かけられるようになる。人生の幅が広がるのです。難しいことではありません。「ま、いいか」と思うだけです。

もし失敗しても「ま、いいか」と笑い飛ばす。

要は心の余裕です。人生経験の豊かな幸齢者だからこそ、「ま、いいか」という余裕が持てるのです。

※本稿は『女80歳の壁』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

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