80代夫婦と障がいを持つ息子の3人ぐらし「食べるのも作るのもとにかくシンプルに」すき焼き風煮物+魚のアラの吸い物など「一汁一菜」で

2024年2月15日(木)12時30分 婦人公論.jp


「料理はずっと作っているものばかりで、珍しいものはありません。でも最近、挑戦したいことができました」(撮影:林ひろし/写真提供:すばる舎)

内閣府が発表した「高齢社会白書(令和3年版)」によると、65歳以上の者のいる世帯は日本の全世帯の49.4%。そのうち夫婦のみ世帯が一番多く約3割を占め、単独世帯を合わせると約6割が頼れる同居者のいない、高齢者のみの世帯となっています。
北九州の郊外で、夫と障がいを持つ息子の3人で暮らす多良久美子さん。8年前に娘をがんで亡くしています。頼れる子どもや孫はいないけれど、80代になった今、不安もなく毎日が楽しいと語る久美子さん。年をとり、食べるのも作るのもシンプルな、《一汁一菜》の食事にしていると話します。そんな久美子さんの作る《一汁一菜》メニューとは——。

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食べるものも作るのもシンプルに


年をとり、夫婦共々食が細くなってきたので、食べるものも作るのもシンプルにしていきたいと思っています。

料理研究家の土井善晴さんの著書『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)を読み、私の思いとぴったり重なりました。簡素でシンプル、そして何よりも縛りがない自由な食。でも、ちゃんと栄養は足りています。土井さんの提案を参考に、私なりの一汁一菜を考えています。


土井善晴さんの著書。料理に対するシンプルな考え方に学びが多いです。(撮影:林ひろし/写真提供:すばる舎)

[ 一汁 ]


一汁の基本は味噌汁。出汁には、和洋の縛りはありません。出汁昆布、いりこ、出汁パック、粉末鶏がらスープの素、固形のコンソメスープの素など、いろいろ使います。牛乳やバター、オリーブオイルを加えることも。自由な発想を土井さんから学びました。

具材も自由に、冷蔵庫にあるものを入れます。季節の野菜や豆腐、魚などのタンパク質を組み合わせて。3品以上入れると、ボリュームが出て、これだけで立派なおかずになります。

彩りに、小ねぎを最後に加えることが多いです。小口切りにして冷凍してあるので、いつでもサッと加えられます。夕食には必ず味噌汁などの汁物はつけます。

[ 一菜 ]


そして一菜は、メインの1品。肉か魚を、野菜と一緒に煮たり炒めたりします。肉や魚を単品で調理し、野菜を付け合わせるパターンも。

味噌漬けにした肉を焼き、野菜のピクルスを添える、豚バラのチャーシュー風に千切りキャベツを合わせるといったように。いずれもごくシンプルな料理です。

これを1枚のお皿に、かっこよく盛り付けます。料理が簡素なので、器に助けてもらって。ワンプレートなのは、後片づけを楽にするためでもあります。

《「一汁一菜」のバリエーション》


【一汁】
主に味噌汁の具材。冷蔵庫にあるものを組み合わせて

◎豆腐+きのこ+わかめ+小ねぎ
◎厚揚げ+なす+小ねぎ
◎厚揚げ+筍+わかめ
◎油揚げ+じゃがいも+玉ねぎ+にんじん+小ねぎ
◎卵+きのこ+長ねぎ
◎魚+ごぼう+ショウガか柚子(魚は臭みが出ないよう新鮮なもので)
◎豚バラ肉+こんにゃく+にんじん+里芋+ごぼう+きのこ
◎ベーコン(ウィンナー)+玉ねぎ+ミニトマト+コーン


『80歳。いよいよこれから私の人生』(著:多良久美子/すばる舎)

【一菜】
焼いた肉や魚に野菜の付け合わせ、あるいは一緒に煮込むのがパターン

>>魚のワンプレート<<
◎塩焼きに大根おろし+小松菜とにんじんソテー
◎漬け魚焼き(粕漬けや味噌漬け、塩麹漬けなど)+いろいろ野菜のピクルス
◎切り身+長ねぎ+こんにゃく+ごぼう+ショウガ(魚と野菜を一緒に煮込む)
◎フライ+キャベツの千切り+トマト

>>肉のワンプレート<<
◎豚肉のショウガ焼き+小松菜と玉ねぎときのこのソテー
◎漬け肉焼き(粕漬けや味噌漬け、塩麹漬けなど)+いろいろ野菜のピクルス
◎牛丼(玉ねぎ+きのこ+三つ葉+卵)
◎鶏肉の煮しめ(蓮根+里芋+ごぼう+にんじん+こんにゃく+しいたけ+きのこ)

《毎日同じパターンの朝食》



パン+卵+ヨーグルト+果物が基本。食パンはホームベーカリーで焼いています(撮影:林ひろし/写真提供:すばる舎)

《麺や丼、おにぎりが多い昼食》



おにぎりのワンプレート。つくりおきのおかずと、漬物やピクルスを合わせて。おにぎりは野沢菜を混ぜたもの(撮影:林ひろし/写真提供:すばる舎)

《「一汁一菜」の夕食》


夜はこの一汁一菜と決めたら、献立を考えるのが楽になりました。朝食も、毎日食べるものがだいたい同じです。食事はパターン化してしまうと、調理も苦にならなくなるように思います。

料理はずっと作っているものばかりで、珍しいものはありません。でも最近、挑戦したいことができました。故郷・長崎の卓袱(しっぽく)料理です。貿易が盛んだった長崎らしく、和洋中の料理が融合され、大皿に盛り付け、円卓で食べるのが特徴です。

中学生のとき、教育実習に来られた家庭科の先生が、卓袱料理の研究をされて本を出版されました。その本を読んだら、思ったよりも難しくなさそうで。

ハトシ(エビなどのすり身を食パンに挟み、揚げたもの)など、なかには作ったことがないものがあるので、それらをマスターして、卓袱料理でおもてなしをしてみたいです。料理の段取りや盛り付けを考えて……と、新しい夢ができてワクワクしています。

※本稿は、『80歳。いよいよこれから私の人生』(多良久美子:著/すばる舎)
の一部を再編集したものです。

婦人公論.jp

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