どれだけ知ってる? 教習所で教わらないバイクTips 第37回 シーズン前のタイヤ交換、何を選ぶ? 【タイヤ選び:前編】

2024年2月26日(月)17時0分 マイナビニュース

寒い冬が終わればバイクのシーズンが到来しますが、安全で快適に走るためタイヤ交換を考えている方もいるのではないでしょうか? 現在は「ミシュラン」や「ブリヂストン」といった超有名メーカー以外にも、聞き覚えのないアジアの新興メーカーが登場し、それぞれハイグリップやツーリングなど、多彩なニーズに対応した製品をラインアップしています。
選択肢がたくさんあるのはよいですが、初心者は何を選べばよいか分からないはずです。そこで今回はタイヤ選びの基本を解説します。
■溝が残っていてもダメな場合も! まずは愛車のタイヤをチェック!
まずは愛車のタイヤをチェックしてみましょう。タイヤのトレッド(接地面)にある溝が完全になくなるまで摩耗していたら即交換ですが、溝さえ残っていればよいわけではありません。溝の中にはタイヤの摩耗限界を示す「スリップサイン」という浅い部分があり、ここまですり減っていたら溝の深さは0.8mmで整備不良とみなされます。
スリップサインまで摩耗していなかったとしても、溝が浅いと雨天は排水性が低下して滑りやすくなります。そのほか、トレッド面が偏摩耗して薄くなるため、スムーズなハンドリングが失われてグリップも低下し、パンクもしやすくなるなど、ギリギリまで使ってもメリットはまったくありません。
タイヤの残り溝が十分でも、トレッド面やサイドウオール(側面)、エアバルブの付け根などのヒビや変形、変色などを確認してください。長く乗らなかったタイヤは空気圧が落ちているものですが、エアを充填しても劣化した部分から漏れが発生していることもあります。薄めた中性洗剤をスプレーして確認したり、しばらくはエアチェックを頻繁に行ってください。
使用や保管状況によって差があるものの、タイヤの寿命は3〜5年と言われています。見た目は問題なくても、古いタイヤはゴムや内部の部材が劣化して性能がダウンしているものです。製造年月日はサイドウオールに刻まれているので、5年以上経過していた場合は交換をおすすめします。
■基本は純正と同じサイズを選択
タイヤをリプレースする際は純正指定のサイズを選びます。タイヤサイズはバイクの取扱い説明書や車体のスイングアーム周辺、タイヤのサイドウオールにも記載されていますが、例えば「120/60 ZR 17 M/C (55W)」の場合、「120」はタイヤ幅、「60」は扁平率(幅120の60%)、「ZR」や「R」はラジアル(バイアスは-やB)、「17」は適合ホイールのサイズ(インチ)、「M/C」はモーターサイクル用、「55W」は荷重指数(最大荷重)と速度記号(最高速度)を示しています。
初心者には分かりにくいですが、まずは「タイヤ幅」、「扁平率」、「適合ホイール」の3つを覚えてください。人気車種なら、だいたいこのサイズが合えば加重指数や速度記号も同じものが販売されているはずです。
『せっかく交換するなら太くしたい』と思う人もいるはずです。確かにタイヤが太ければ見た目はカッコよく、グリップや耐摩耗性もアップするかもしれません。実際、特定のバイクではワンサイズ太いタイヤの装着が定番カスタムになっていることもあります。
しかし、タイヤはバイクのハンドリングに大きく影響する部品であるため、メーカーはサイズ変更を推奨していません。直進安定性の悪化や切り返しが重くなるケースも多く、極端に太いタイヤをつければフェンダーやサスペンションに干渉します。自己責任になりますが、どうしてもサイズ変更したい場合は、たくさんのノウハウを持つタイヤショップに相談してください。
また、同じサイズでもメーカーによってタイヤ幅に差があり、タイヤ全体の形状やトレッドパターンのデザインで実際より太く見えるものもあります。カタログや量販店のラックに置かれた状態では分からないので、ほかの人が履いているタイヤを観察してみるのもよいでしょう。
■「タイヤメーカー」と「カテゴリー」について
「ミシュラン」や「ブリヂストン」など、超有名な欧州や国産メーカー製のタイヤは高価ですが、それだけ品質と性能が高いと考えて間違いありません。メーカーによって味付けが違うので、特定のブランドを愛用して履き続けたり、タイヤ交換のたびに変更して違いを楽しむライダーもたくさんいます。対して新興のアジアンタイヤは安価ですが、ほとんどは有名メーカーの製造を担ってきた歴史を持っており、今や小排気量車の純正OEMにも採用されています。しかし、まだまだ未知数の部分も多いため、中型以上のスポーツバイクでリプレース用に選ぶユーザーはごく少数です。
それぞれのメーカーには「ハイグリップ」や「スポーツ」、「ツーリング」など、ユーザーの使い方に応じてカテゴライズされたタイヤがラインアップされています。サーキットやワインディング走行がメインなら「ハイグリップ」一択ですが、ドライのグリップ性能は非常に高いものの、低温や濡れた路面に弱く、摩耗も早いというデメリットがあります。“どんな状況でもグリップ力が高い”というものではないので注意してください。
長距離ツーリングを好む人には、さまざまな路面状況に対応し、耐摩耗性も高い「ツーリング」が最適ですが、昔と違って現代のツーリングタイヤは高いグリップ力を持っており、意外とワインディングも楽しめます。しかし、年間で数百キロ程度しか走らない人にはおすすめできません。タイヤが減らないため交換を怠ってしまい、タイヤの寿命を大幅に過ぎて危険な状態で使い続けてしまうこともあるからです。
現在の「ハイグリップ」と「ツーリング」は、毎週のようにサーキットや長距離ツーリングを楽しむハードユーザーを満足させる性能を持っていますが、言い方を変えればマニア向けの“尖った”タイヤです。「スポーツ」はこれらの中間に位置しますが“スポーツ”と言ってもバイクは本来スポーティな乗り物なので、ライディングに自信のない方が『自分にはもったいない』と遠慮することはありません。過激なグリップ性能と耐摩耗性を考えず設計することができた「スポーツ」のバランスは非常によく、状況によっては「ハイグリップ」や「ツーリング」を凌駕するオールラウンダーです。平日のシティランから休日のツーリングなど、さまざまな使い方をする大多数のライダーにおすすめできます。
このほかにも、未舗装を想定したオフロードやアドベンチャー、重量のあるアメリカンやクルーザー、スクーターやレトロモデルなど、さまざまなジャンルに分化したバイクにマッチするタイヤがリリースされています。
■ハンドリングが変わる「プロファイル」にも注目!
タイヤショップや大型用品店ではたくさんのタイヤを見ることができますが、同じサイズでもトレッド(接地面)が丸かったり尖っていたりと、形状が異なっているのに気づいた方もいるはずです。この断面形状を「プロファイル」と言いますが、車体を傾けるバイクではハンドリングに大きく影響します。
プロファイルが丸い、つまり曲率が一定のものを「シングルクラウン(シングルラジアス)」と言います。直立からバンクまで抵抗やグリップ感の変化が少ないため、スタンダードなバイクやツアラー、アメリカン用のタイヤに使われています。大型クルーザーなどでは直進安定性を重視するため、さらに曲率が少ないロープロファイルが採用されています。
これに対して、タイヤの真ん中が尖ったプロファイルを持つものが「ダブルクラウン(ダブルラジアル)」で、直立からバンク開始時の抵抗が軽く、フルバンク時は接地面が増大してグリップ感が高まります。サーキットやワインディング用のハイグリップやスポーツタイヤに採用されますが、一般的には前・後輪のどちらかに使われます。
ただ、タイヤメーカーでコンセプトや内部構造も異なってくるため、見た目のプロファイルとは違った特性を示すタイヤも存在します。昔は尖ったタイヤはハイグリップの証でしたが、重いビッグバイクのハンドリングを軽快にするため、ツーリングタイヤで採用されたこともあります。
■次回の後編は「バイアス」と「ラジアル」の違いについて
「タイヤ選び・前編」の今回は、装着されているタイヤのチェックや、リプレースする際の選び方などについて解説しましたが、もう一つ大事なことがあります。それは小型や中型バイクでは選択肢がある「バイアス」と「ラジアル」という種類についてです。
タイヤに詳しくない人からすれば「バイアス」も「ラジアル」も見た目は同じですが、内部構造に大きな違いがあります。次回はそれぞれの構造や長所や短所について解説します。
津原リョウ 二輪・四輪、IT、家電などの商品企画や広告・デザイン全般に従事するクリエイター。エンジンOHからON/OFFサーキット走行、長距離キャンプツーリングまでバイク遊びは一通り経験し、1950年代のBMWから最新スポーツまで数多く試乗。印象的だったバイクは「MVアグスタ F4」と「Kawasaki KX500」。 この著者の記事一覧はこちら

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