老舗のオムライスは本当にウマいのか? 人気洋食店『好成軒』(日本橋)の名物「とろとろ玉子のオムライス」を食べてきた

2022年3月6日(日)10時48分 食楽web


『好成軒』(日本橋)の「とろとろ玉子のオムライス(エビフライ付き)」 | 食楽web

 オムライス好きには、ご存知のように大きく分けて「卵ふわとろ派」と「卵うす焼き派」の2派閥が存在します。前者はチキンライスに半熟のとろとろオムレツにデミグラスソースなどをかける洋食系、後者はチキンライスをうす焼きの卵でくるみ、ケチャップをかけていただく町中華系です。

 ちなみに筆者はダンゼン昭和レトロな「卵うす焼き派」に与(くみ)する者です。ふわとろ卵の食感やソースの味わいよりも、ややパリッとした卵とチキンライスをスプーンで掘削しつつ食べる、昔ながらのオムライスが好きだからです。そして筆者の周囲には、これに賛同する人がけっこう多くいます。


これは新小岩の町中華『五十番』の一品。ほかに高円寺の『七面鳥』などでも至極のうす焼き系オムライスが食べられます

 ところが先日、ゴリゴリの“卵うす焼きオム原理主義者”の友人から、耳を疑うような言葉が発せられました。いわく「日本橋にある洋食屋『好成軒』のオムライスを食べたら“卵ふわとろタイプ”の美味しさがわかった。とろとろ卵とデミグラスソースが絶妙で、まるで飲むように食べられる」とのこと。

 聞いた瞬間、「造反」「謀反」「背信」「寝返り」「裏切り」などの不穏な言葉が脳裏をよぎります。あっけなく「卵ふわとろ派」に寝返るとは…。しかし、ここまで言われたら、食べないわけにはいきません。一体どんなふわとろオムライスなのか、実際に行って確かめてみることにしました。

老舗の卵とろとろのオムライスは美味しいのか?


『COREDO室町2』の向かいにあります

 目指す『好成軒』は、東京メトロ銀座線・三越前駅から徒歩1分の場所にありました。大正8年(1919年)に創業したという老舗洋食店です。数年前に創業した場所から移転したそうで、建物自体にはそこまで歴史を感じませんが、店先にデカデカと掲げられた大きな家紋に重厚感を感じます。

 そして「卵ふわとろ一派」と思しき、スーツ姿のビジネスマンのおじさんたちが続々と店に入っていくのを目撃。かなり人気のようです。


店前におすすめ定食が明記されています

 ランチメニューを見ると、日替わりランチのフライ盛り合わせや鮭といくらの親子丼、トンカツ、カキフライと並び、ウワサの「とろとろ玉子のオムライス」もありました。いずれも1050円です。ちなみに「とろとろ玉子のオムライス(エビフライ付)」は1300円。

 洋食屋のフライ盛り合わせにも惹かれますが、今回はふわとろオムライスを視察にきたので、エビフライ付きのオムライスを注文しました。


卓上にはフライにめちゃくちゃ合いそうな濃厚なソースの壺が置かれていました(食楽web)

 さて、「とろとろ玉子オムライス」が調理されている間に、改めて筆者が“卵薄焼き派”である理由を考えてみました。そもそもオムライスは、“ライスをオムレツで包む”という高難度の技術が必要な料理です。実際、筆者は自宅でオムライスを作ると、たいてい包む前に卵が破けます。ゆえに、一分のスキもなく美しく包まれたお店の卵うす焼きオムライスを見ると、感動を禁じ得ないのです。

 対して、“卵ふわとろタイプ”は、チキンライスに半熟オムレツをのせるタイプがほとんど。つまり、“包む”という難度Cの大技を放棄し、食感やソースなどの小技に頼っているわけです。きらびやかな雰囲気の割に、量は少なめで満足感も低い。ズルいなあと思うわけです。


「とろとろ玉子のオムライス(エビフライ付)」1300円。スープ、サラダ付き

 などと屁理屈をこねている間に、「とろとろ玉子のオムライス(エビフライ付)」が運ばれてきました。予想通り、オムライスにデミグラスソースをたっぷりかけたスタイル。というか、オムレツ型ですらなく、原型がわからないほどひたすらにトロトロ。でも、悔しいかな、めちゃくちゃ美味しそう。というわけで、いざ実食です。


デミグラスソースの海にオムライスが浮かんでいるようにも見える

 スプーンを入れてみると、薄焼き卵を割るような力はまったく不要。何の反発もなくスプーンが皿の底に着きます。とろとろの卵と共に、薄めのケチャップ味のチキンライスがいとも簡単にすくえます。

 ひと口食べてみると、卵がふんわり、ごはん一粒ひと粒を包むかのごとくまとわりついてきます。そして追随する濃厚なデミグラスソースのコク。その後に続く旨み。これは、なかなかどうして、深い味がします。


もはや卵を食べているのか、ご飯を食べているのか、ソースを食べているのか、境界線がわからなくなります

 友人が言っていたように、卵とチキンライス、そしてデミグラスソースが三位一体となり、なめらかな口触り、まろやかな卵の味、そしてソースの深いコクを生み出しています。美味しいうえに流し込むように食べられるので、スプーンが止まりません。

 瞬く間に1/2、1/3と減っていくオムライス。ああ、もっとじっくり味わいたいのに、どんどんなくなっていく! 一度水を飲んで心を落ち着かせ、別皿のエビフライに目を向けます。


セットで付いてくるエビフライは2本。シャキシャキのグリーンサラダも美味

 小ぶりですが、ピンと背筋が伸びた美しいエビフライ。噛むと衣はこんがりサクサクしていて、エビに当たると、プリっとした食感。衣の香ばしさとエビの旨みが最高です。再びとろとろオムライスを食べて、またカリッカリのエビフライ。これを交互に繰り返し、あっという間にフィニッシュ。いやー、文句ばっかり言ってスイマセン。最高でした。


ランチはどれも1050円。東京の老舗洋食屋さんにしてはリーズナブルです

 というわけで、『好成軒』に来てみて、“卵ふわとろタイプ”の良さや醍醐味がよくわかりました。とろとろの卵とチキンライスの一体感。さらにこだわりデミグラスソースの味わい深さ。そして、卵かけご飯に通じる流し込み感。確かに止まらない美味しさでした。

 特に今回は、老舗『好成軒』の名物料理たる絶品オムライスだったということも大きいでしょうが、他の卵ふわとろタイプもたまには食べてみようかな、と思った次第です。とはいえ、オムライスに関して筆者は相変わらず“卵うす焼き派”です。

(撮影・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

店名:好成軒

住:東京都中央区日本橋室町1-13-4
TEL:03-3241-0613
営:11:00〜14:30
  17:00〜21:00
休:日曜

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