豆腐チャートで「かため」「濃厚」好みに合う豆腐選び始めませんか?

2025年3月7日(金)6時0分 大手小町(読売新聞)

植物性たんぱく質が豊富で栄養価の高い豆腐は、日常の食卓を彩る食材の一つですが、ふだん何を基準に選んでいるでしょうか。スーパーの棚に並ぶ商品の数々を見ても、違いがよく分からず、とりあえず価格の安い商品を購入するという人は多いかもしれません。実際、豆腐は種類も多く、消費者にはどれも似通った商品に見えがちなため、豆腐業界は低価格を競い合う状況に陥りやすい側面があります。そこで、業界では今、消費者に豆腐の「価格」より「価値」に目を向けてもらうための取り組みが進められています。

料理研究家のシトロン ヨーコさん。豆腐を使った、イタリアンの白和えなども考案している

豆腐を通じた食育活動を行う人材を育成する「日本豆腐マイスター協会」はこのほど、おいしい豆腐を選ぶ際の指標としてもらおうと、「お取り寄せできる!全国のおいしい豆腐チャート2025」を作成しました。

豆腐の特徴を「濃厚」「さっぱり」「かため」「やわらか」の四つに分類し、その特徴に当てはまる豆腐の商品名がチャート上に分布しています。このチャートを発案したのは、同協会理事で料理研究家のシトロン ヨーコさん。フランス料理のシェフなどが対象のセミナーを開いた経験から、「大豆の香りの程度や、かたさ・やわらかさなど、豆腐の味の幅広さを伝えるのにチャートがあったら説明しやすい」と考え、チャート作りに取り組みました。

チャートに掲載された豆腐は、全国各地の名店のもの。お取り寄せもできる

風味豊かな豆腐は、冷ややっこや温やっことしてそのまま食べるのが一番ですが、オリーブオイルや塩で食べるときには、濃厚な豆腐が向いています。一方、湯豆腐や鍋料理には、さっぱりした食感と味わいの豆腐が適しています。このように、食べ方によって豆腐の選び方は違ってくるため、シトロンさんは、豆腐チャートを豆腐選びの基準として活用してほしいと考えています。

豆腐には、製法などの違いにより、「絹ごし豆腐」「木綿豆腐」「充填(じゅうてん)豆腐」「寄せ豆腐」などの種類があります。

<豆腐の主な製法と特徴>●絹ごし豆腐……豆乳に凝固剤を加えてそのまま固めたもの。食感がなめらか。●木綿豆腐……豆乳に凝固剤を加えて固めたものを一度崩し、木綿布を敷いた型箱で圧縮したもの。濃厚な味わいでたんぱく質の量が多い。※「絹ごし」も「木綿」も最後に水にさらして適切な大きさに切るので、「カット豆腐」とも呼ばれます。●充填豆腐……豆乳と凝固剤をパックに充填し固めたもの。水にさらす工程がなく、密閉した後に加熱処理されるため賞味期間が長い。絹ごしのように食感はなめらか。●寄せ豆腐……豆乳に凝固剤を加えたものを、お玉などの容器にそのまま盛り込んだもの。絹ごしや木綿とは異なるまろやかな食感を楽しめる。

豆腐を使った中華料理の代表格といえば、麻婆(マーボー)豆腐。大人にも子どもにも好まれる家庭料理の一つで一般的には木綿豆腐が使われますが、シトロンさんは「甘みの強い絹ごし豆腐を使うと、辛さと甘さの相乗効果でおいしくいただけます」と説明します。

「お取り寄せできる!全国のおいしい豆腐チャート2025」の絹・充填豆腐

シトロンさんは、全国豆腐連合会が2015年から毎年開催している「全国豆腐品評会」の審査員の一人でもあります。この品評会では、「絹ごし豆腐」「木綿豆腐」「充填豆腐」「寄せ豆腐」の部門別に、全国各地の豆腐業者から出品された豆腐を審査員が実際に食べて審査し、「日本一」を決定します。過去8年の審査結果は、品評会のホームページで紹介しており、入賞した商品の中には、オンラインショップを通じて取り寄せが可能なものもあります。

「お取り寄せできる!全国のおいしい豆腐チャート2025」の木綿豆腐

24年の品評会の「絹ごし豆腐の部」で金賞を受賞した「とうふ工房ゆう」(東京都青梅市)の「特選絹ごし豆腐」は、品種改良を行っていない在来種の国産大豆を使用。豆腐チャートにも、やわらかめで、とても濃厚な商品として記載されています。

シトロンさんは「ほかにも食べてほしいお豆腐は多いです。充填豆腐というと、従来は工場量産型の豆腐というイメージがありましたが、最近はレベルがどんどん上がって、おいしくなっています」と話します。

例えば、21年の品評会西日本大会の「充填豆腐の部」で5位に入賞した「久在屋(きゅうざや)」(京都市)の「京ふたり」。国産大豆の豊かなうまみと香り、やさしい甘さが特徴で、湯豆腐や冷ややっこでさっぱりと食べたり、洋風料理やデザートの素材として使ったりするのに適しているそうで、シトロンさんがフランス料理のシェフに紹介したところ、コースメニューにも使われるようになりました。

「原料である国産大豆も、産地によって糖度が高かったり、香りが強かったりと、いろいろ個性があります。そうした大豆を単体あるいはブレンドさせて使っているケースが多いです。原料や作り方にこだわっている各地の名店の味をぜひ試してほしいです」とシトロンさんは強調しています。

価格競争の激しい豆腐業界では、大豆や燃料の価格高騰の影響で、値上がり分を商品価格に転嫁できない業者の倒産や廃業が相次いでいます。帝国データバンクによると、スーパーやコンビニなどの小売店向けに生産する「豆腐店」の倒産(負債1000万円以上、法的整理)と廃業は、23年に46件でしたが、24年は7月までで36件と、前年を大きく上回る過去最悪のペースで推移しており、この傾向はさらに続くと予想されています。

業界の先行きへの危機感から、新しい動きも出てきています。

豆腐メーカーのアサヒコ(東京都新宿区)は、充填豆腐の分野で、国産大豆と製法にこだわった新商品「職人(クラフト)豆腐」を3月3日に発売しました。

同社の調査によると、豆腐メーカー大手6社の平均売価は、89.5円。これに対し、「職人豆腐 硬派仕込」と「職人豆腐 清純仕込」の二つの商品はそれぞれ360グラムで192円と、強気とも思える価格設定です。

アサヒコの新商品「職人(クラフト)豆腐」は、スイーツでも楽しめるという

従来と違って、豆乳を温かいまま固める新製法を導入し、大豆の風味を損なわないようにしたのが特徴。商品パッケージに大豆の産地と品種、製造担当者の名前を打刻することで、高付加価値を訴求しています。

同社の池田未央社長は「豆腐の価値を分かってもらうには、私たちがおいしい豆腐を提供するために原材料や製法にこだわり、誇りを持っていることを伝えたい。産地や品種を『見える化』して、価格競争ではなく価値の競争にしていきたい」と話していました。

アサヒコのように、付加価値の高い商品を開発して、価値に見合った値付けをし、価格競争を乗り越えようとする業者は今後さらに増えそうです。低価格が長年続いてきた“物価の優等生”豆腐を選ぶ消費者の目も、変化を求められるかもしれません。

(読売新聞メディア局 永原香代子)

【参考】▽「お取り寄せできる!全国のおいしい豆腐チャート2025」はこちらへ

大手小町(読売新聞)

「豆腐」をもっと詳しく

「豆腐」のニュース

「豆腐」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ