「いい歳をして推し活なんて」そんな言葉は気にしない。「推し」はあなたの人生に新たな喜びと生きる力をもたらす《幸福寿命を延ばす5つのルール》

2025年3月14日(金)12時30分 婦人公論.jp


(写真:stock.adobe.com)

現代の生きる糧として注目されている「推し活」。もともとは若者を中心に使われる言葉でしたが、昨今は「幸福寿命」の観点から高齢者に推奨する動きが活発になっています。そんな「シニア推し活」について、高齢者医療の第一人者・和田秀樹が解説した著書『60代から100歳以上まで 人生が楽しくなる「シニア推し活」のすすめ』より、一部を抜粋してご紹介します。

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幸福寿命を延ばすためには、推し活の他にも知っておきたいルールが5つあります。まずは、健康寿命と幸福寿命の考え方についてです。

【幸福寿命を延ばす5つのルール】
1)健康寿命も幸福寿命も思った者勝ち


健康寿命はアンケート調査による主観です。同じように、幸福寿命も、自分が幸福だと思うかどうかが鍵となり、客観的な指標は存在しません。つまり、「私は幸せだ」と思った人が勝ちだということになります。

私は患者さんにいつも、「自分でコントロールできる範囲なら、したいことは我慢せずにどんどんやってオーケーです」とお伝えしています。

例えば、お酒や喫煙はもちろん、ギャンブルだって、キャバクラだって、マッチングアプリだって、自分できちんとコントロールしている限りは好きにやったらいいと思います。

推し活もその一つです。好きな誰かの追っかけをしたり、好きなアーティストのグッズを買い集めたり、推しにちなんだ場所を旅する聖地巡礼なども、どんどん楽しむといいでしょう。

「いい歳をして推し活なんて……」とか「年甲斐もなく」「推しにそんなにお金を使うなんて無駄」などとまわりから言われるかもしれません。

しかし、そんな言葉に耳を傾ける必要はありません。本当に問題なのは、高齢者自身がそのような言葉を「そうだよな」「やっぱりやめておこう」などと受け入れ、自分のやりたいことを諦めてしまうことです。これでは、自分から幸せになる権利を手放してしまっているのと同じです。

やりたいことをするのに年齢は関係ありません。他人に遠慮するよりも、自分が本当に幸せだと思えることに積極的に取り組んでみてください。

【幸福寿命を延ばす5つのルール】
2)誰かと自分を比べない


「あの人は、若いころからずっと幸せそうだ」「あの家は、いつも素敵な旅行ばかりしているみたい」「あの人は出世が早くて、自分より給料も多いだろう」など、まわりの人と自分を比べてしまうと、幸福感は低下する一方です。他人の幸せや成功を見て自分を比較することで、自尊心が傷つき、自己肯定感は低下して、ストレスは増えるばかりです。

幸福だと思える時間を増やすためには、「自分と誰かを比べて幸せかどうか」と考えるのはやめることです。大切なことは、自分自身のペースで生きることです。推し活のように、自分が楽しみながら続けられる活動を見つけることで、心の健康を維持することができます。

他人と比べないことが大事だと言いましたが、歳を重ねたからこその例外もあります。例えば、歳を取ると誰でも体力が低下し、人によっては体が不自由になり、若いころのように思ったとおりに活動ができなくなることが増えていきます。

そんなときに、「自分の足で歩けるのだから幸せ」「大きな病気もせずに生きられていることが幸せ」というように考えることは、決して悪いことではありません。

全米で話題になった『ハピネス・カーブ 人生は50代で必ず好転する』(日本版:CCCメディアハウス)の著者、ジョナサン・ラウシュ氏は、歳を取るほど幸せになる理由について、次のように述べています。

「(歳を取ると)ハピネス・カーブ(=幸福のUカーブ)が上昇するのは、自分の価値観が変化し、満足感を得る事柄が変化し、自分という人間のありようが変わるからである。自分が変わることで、老年期になってからも思いがけない充足感を得ることができるようになったり、自分の抱える弱さや、病気まで受け入れられるようになったりするのである」

この説明を読んで私は、「人はもともと、歳を取るほど幸せになるようにできているものなのだ」と改めて思いました。

年齢を重ねたからこその変化を気負わずに受け入れることも、幸福度を高めることに繋がるのだと思います。


『60代から100歳以上まで 人生が楽しくなる「シニア推し活」のすすめ』(著:和田秀樹/KADOKAWA)


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【幸福寿命を延ばす5つのルール】
3)「参照点」は低くしておく


「参照点」という考え方をご存じでしょうか? 私たちが何かを判断したり、選択したりするときに、ある特定の基準点(参照点)を無意識に持ち、それに基づいて評価してしまう心理傾向のことです。

例えば、会社の社長だった方が退任して、毎月50万円もかかる高級老人ホームに入居したとしましょう。毎日5000円もする豪華な食事が出て、一見、何不自由ない優雅な生活に見えます。でも、その方が、社長時代の料亭や高級レストランでの食事を基準にしていたら、その5000円の食事が贅沢かといえば、満足度は大きく下がってしまうかもしれません。

さらに、社長時代には、周囲の人からちやほやされ、威張ることができた人は、老人ホームの職員に多少親切にされた程度では幸せとは感じにくいかもしれません。本人が社長時代を基準点(参照点)にしている限り、いつまで経っても幸せを実感することはできないでしょう。

一方で、貧しい生活を送ってきた人が生活保護を受けながら老人ホームに入所した場合、いままでに食べたことのない、栄養バランスの取れた食事が提供され、毎食しっかりと食べられるようになります。

施設の職員も、「この人は貧乏だから」と差別することなく、親切に接してくれます。すると、「この歳になって、こんなにおいしいものが食べられて、みんなに親切にされて幸せだ」と感じるかもしれません。

このように、どこを自分の基準にするかによって幸せの感じ方は大きく変わります。多くの人が前述の社長のように、バリバリと働いていた若いころや、子育てに忙しくしながらも充実した時間を過ごしていたころの自分に参照点を合わせてしまいがちです。「昔はもっとスタスタ歩けたのに」とか「もっと賢かったのに」「友達がもっとたくさんいたのに」といった具合です。

参照点を高くしてしまうと、幸せを感じるハードルが上がってしまいます。そこで、いまの自分に適した参照点はどこにあるのか、一度考えてみてはいかがでしょうか。

若いころの自分と比べて嘆くよりも、「あれもできる」「これもできる」と、できることを数えたほうが、毎日を幸せに過ごせるようになることでしょう。

【幸福寿命を延ばす5つのルール】
4)人の目を気にしない


周囲の人の目を気にしないということも重要です。

繰り返しになりますが、人生において幸せかどうかは、結局のところ自分で決めるものです。他人の意見に振り回される必要はありません。

例えば、健康診断の結果について考えてみましょう。検査数値が正常値でなかった場合、医師から「あなたは不健康です」と指摘されることがあります。しかし、すぐさまこれを鵜呑みにして本当は必要でない治療をしたり、悲観的に考えて落ち込んだりする必要はありません。

健康診断の数値は、あくまで一つの指標に過ぎません。人それぞれ、最適な状態は異なります。医師の意見は参考にしつつも、自分の体調や感覚を大切にすることが最も重要です。無理に数値を正常にしようとして薬を服用したり、塩分制限を厳しくしすぎて、だるさや集中力の低下に悩まされたり、活動レベルが落ちて元気がなくなる人も少なくありません。

自分の体の声に耳を傾け、快適に過ごせる方法を見つけることが、高齢期を幸せに過ごす鍵となります。

さらに、家族や身近な人からの余計な言葉にも惑わされないことが重要です。特に、新しい趣味や活動を始めたときには、周囲から批判的な声が上がることもしばしばあります。

例えば、アイドルの推し活を始めて推しのグッズを集めたり、コンサートのチケット入手のために販売日前日からスタンバイしたり、さまざまな新しいことにチャレンジしたとします。すると、それを見ている夫や子どもから「あんなのの何がいいの?」とか「お金の無駄遣いだ」「アイドルの推し活なんて恥ずかしい」などと言われることがあるかもしれません。

しかし、あなたの推しは、あなたにとって大切な存在であり、人生を豊かにしてくれるものです。あなたにとっての推しの魅力を、わざわざ周囲の人に認めてもらう必要などないのです。たとえ家族であっても、「人は人、自分は自分」と割り切って、好きなことに没頭しましょう。

【幸福寿命を延ばす5つのルール】
5)充実感のある生活をする


幸せな時間を増やすためには、張り合いのある生活、充実感のある生活が欠かせません。そういう視点で考えると、推し活は幸福寿命を延ばす最高の方法の一つといえます。

人は、生きがいを持っているときにはイキイキとして活動的になります。例えば、子どもを持つ人の場合、子どもの受験や部活動などの応援をしているときは、「大変だ」「忙しい」と言いつつも、その成長を喜び、充実した日々を送っていることが多いものです。

働いている人であれば、仕事が上手くいっていて、順調に出世をしていたり、周囲から認められて高い評価を得られたりしているときには、仕事が生きがいになることが多いものでしょう。

これに対して、子育てが上手くいかなかったり、仕事上の成果が得られない状況だったりすると、生きがいをなくし、がっくりと気落ちした状態になってしまう人も少なくありません。さらに、60代に入ると、子どもは手を離れ、仕事も定年を迎えるなど、それまで生きがいだと思っていたことを失いがちです。

しかし、そんなときこそ、新たな生きがいを見つけて、乗り換えるチャンスです。このような状況下で再び活力ある生活を手に入れるには、何か夢中になれるもの、「コレが生きがい」と思えるものが必要です。

誰かのファンになること、つまり推し活を始めることができたなら、生きがいを上手に乗り換えることができるのではないでしょうか。

再び充実した毎日を送るためには、新しい生きがいを見つけることが重要です。そうでないと、ただ起きて、食事をして、眠ってという変化のない生活に陥り、急に老け込んでしまうことも。

高齢者施設の利用者が地元サッカークラブを応援する「Be supporters !(ビー サポーターズ!)」という活動でも、介護施設に入居する高齢者が推し活をすることで人との繋がりが生まれ、充実した毎日を手に入れています。

これまでの生きがいから新たに乗り換えるという意識で、推しを探してみてください。それは、あなたの人生に新たな喜びと生きる力をもたらすきっかけになるでしょう。

※本稿は、『60代から100歳以上まで 人生が楽しくなる「シニア推し活」のすすめ』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

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