学生は本当に管理職になりたくない? その本音が調査で明らかになる

2024年3月15日(金)9時17分 マイナビニュース

マイナビは2月22日、「採用広報解禁直前!2025年卒新卒採用・就職活動の展望」と題した報道関係者向けの説明会を開催した。
本記事では、マイナビ キャリアリサーチラボ研究員の長谷川洋介氏による「若者の『管理職離れ』は本当か!? 今の若者にとっての『キャリアアップ』とは?」と題した内容を解説する。
○学生の管理職離れ
Z世代は管理職になりたがらないという声が昨今よく聞かれる。また、キャリアアップに消極的といったイメージも持たれている。
マイナビが今年度就職活動を行った学生を子どもに持つ保護者を対象に2024年1月に実施した「2023年度 就職活動に対する保護者の意識調査」においても、「1つの会社に勤め上げるというイメージがない」、「出世欲がないといった印象を受けた」といった回答が目立つ。
しかし、給料を上げていく方法として、「出世して管理職になるという方法」と「働き方と仕事のレベルを上げていく」という2つの働き方があると仮定。
自分の希望する働き方について最も近いものをリサーチ※したところ、「仕事のレベルを上げつつ出世して管理職になりたい」という回答が42.1%で最も多かった。
次に多かったのは「仕事のレベルを上げていきたいが、管理職にはなりたくない」という回答で38.8%を占めた。※「2025年卒大学生のライフスタイル調査」を参照
この結果について、長谷川氏は「いずれも仕事のレベルを上げていくというところで共通している。Z世代とか最近の若者は向上心がないわけではなく、仕事のレベルアップを通じて給料を上げていくこと、すなわちキャリアアップを目指しているということが見えてくる」と語る。
ただし、管理職になるということ自体は望んでいない学生も多いというのが実状で、「学生にとって、キャリアアップをして給料を上げていくということと、出世して管理職になるということが必ずしもイコールで繋がっていない」とした。
「仕事のレベルを上げていきたいが、管理職にはなりたくない」という回答者の理由では、「管理職は忙しい・業務量が多い」、「責任ばかり増える」「仕事量と給料の追加が取れていない」「ワークライフバランスが取れない」など管理職という働き方に対してネガティブなイメージを抱いている学生が多く、これが“管理職離れ”の理由につながっているのではないかと指摘する。
一方で、「あなたにとってキャリアアップとは何ですか?」という設問においては、「自分の業務スキル・レベル・難易度を上げていく」が最多で、「新しい業務領域に次々と挑戦して幅広く経験値を上げていく」が続いた。
「出世して管理職になるという選択肢」は3番目となり、この結果を「ここでも学生がキャリアアップという言葉に対して抱いているイメージが決して一様なものではなく、多様な働き方を望んでいるということがわかる」と解説した。
○キャリアアップ=管理職と学生は考えない
日本の高度経済成長を伝えてきた日本型雇用の特徴の1つとして"長期雇用慣行"が挙げられる。
いわゆる"終身雇用"が主流の時代には、ポスト競争によって従業員のモチベーションを維持するということが不可欠な条件で、企業の規模も拡大して右肩上がりで拡大していた高度経済成長期は従業員に対してポストを十分に用意することができた。
しかし、成長期を過ぎると企業の成長が鈍化し、加えて団塊の世代が管理職になる年齢に差し掛かったことでポストが不足するという時代が発生した。
こうした事態に対して従業員の動機づけを維持するために生み出されたのが"部下なし、管理職"というポストだ。
「多くの企業が従業員のモチベーション維持のために本来であれば用意できなかったはずのポストを力技で用意したことで、日本において"出世して管理職になる"ということがほぼ唯一のキャリアアップの手段となった側面がある」と指摘する。
しかし、現在の学生が思い描いているキャリアアップのイメージは多岐にわたる。
「管理職になるという道だけではZ世帯の働き手たちの希望するキャリアを実現することは当然できない。まして、管理職のポストが不足する時代においては、管理職にはなりたくないが、キャリアアップはしたいという学生のニーズを叶えることが今後重要になってくる」とした。
長谷川氏は、「"管理職離れ"と言われるZ世代の思い描くキャリアアップを実現するために新しいアプローチが必要である」と説く。
管理職を希望しない人に対するアプローチは「管理職になること以外でキャリアアップ昇級を実現できるようなキャリアパスを提示していくこと」。具体策として「社内公募制度やスキリング支援など管理職以外のキャリアアップ手段の提示や制度の整備」を示した。
○キャリアアップのあり方
一方で、管理職になりたいという学生も一定数存在し、決して無視できる割合ではない。
「ポスト不足の時代にあっても、部下や後進の後輩たちの育成を通じて社会に貢献したい、あるいは自分の評価が得られる評価の結果として管理職になりたいというモチベーションを持つ学生のニーズも同時に汲み取っていく必要がある」とし、管理職離れの原因であるネガティブなイメージを払拭するべく、「現役管理職世代の負担を軽減させていくことが不可欠」と説く。
それと同時に大切なのは「管理職としてキャリアアップできるようにポストを用意していくこと」。
そのための具体策として、「これまで管理職の業務としてまとめられていたタスクをいくつかに分解してタスクごとに担当を割り振って管理職の業務を分担するという考えもある」と"管理職業務の分解や分担"を挙げる。
また、「部下の育成指導担当、業務管理担当、事業推進担当、あるいは会社の状態から推進の調整担当というかたちで業務を細分化して、それぞれに対して得意な人材を割り振って、〇〇専門部長という感じで管理職を増やすことで、ポスト不足の解消する手段につながる可能性もある」と、実際にある企業で導入されている事例を紹介。
さらに、「ライフステージの変化に応じて職位や業務責任の幅を柔軟に加減できる、昇り降り自由なキャリアパスの提示や人事制度の導入」を提唱した。
神野恵美 フリーライター・編集者。ワーキングマザーとして10余年、世の中にあるさまざまな便利ガジェット・ツールを駆使して、生き延びる。趣味は料理に掃除、洗濯と野球、旅行、音楽や映画鑑賞などなど、周りが呆れるくらい趣味人間。"モノ"より"コト"優先で生きてる。 この著者の記事一覧はこちら

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