半殺しに皆殺し、やわやわ!? お彼岸に食べる「おはぎ」の呼び名は季節や地域によってこんなにあった!
2024年3月17日(日)21時15分 All About
日本人の感性が生んだ和菓子「おはぎ(ぼたもち)」の別名
なお、基本的に「おはぎ」と「ぼたもち」は同じものです。
「春はぼたもち、秋はおはぎ」と季節によって呼び分けたり、「“こしあん”はぼたもち、“つぶあん”はおはぎ」「大きめで丸い形はぼたもち、小ぶりで俵型はおはぎ」などと作り方で呼び分けたりしていましたが、現代はあまりこだわらなくなっています。
萩の花に似ていることから、秋の呼び名は「おはぎ」
漢字では「御萩(おはぎ)」と書きます。昔は、秋に咲く萩の花に似ていることから、「萩の餅」「萩の花」と呼ばれていましたが、その後、女房言葉(御所に仕える女官が使い始めた言葉)で「御萩」となりました。
かつては、萩の花のように小ぶりで俵のような型にし、秋に収穫したての小豆を使うのでつぶあんで作っていたそうです。
牡丹の花に見立てて、春の呼び名は「ぼたもち」
漢字では「牡丹餅(ぼたもち)」と書きます。春に咲く牡丹の花に見立てて名付けられました。
昔は、牡丹の花のように大きめで丸い形にし、ひと冬越した小豆を使うのでかたくなった皮を除いたこしあんで作っていたそうです。
夏の呼び名は、夜いつ着いたのかわからない「夜船」
おはぎ(ぼたもち)は、きねを使って本格的な餅搗き(もちつき)をする必要がないため静かに作れます。
そこで、「搗き知らず」を「着き知らず」に掛け、夜の闇でいつ着いたのかわからない「夜船」が、おはぎ(ぼたもち)の夏の異称となりました。
冬の呼び名は、月の明かりが入らない「北窓」
おはぎ(ぼたもち)は、本格的な餅搗きをせずに作れるため「搗き入らず」「搗きを知らない」といわれていたことに、北側の窓からは月の明かりが入らない「月入らず」「月を知らない」を掛けて、「北窓」がおはぎ(ぼたもち)の冬の異称となりました。
近所に気づかれないほど静かに作れるため「隣知らず」
きねを使って本格的な餅搗きをする必要がないということは、隣近所が気づかないぐらい静かに作れるということ。そこでおはぎ(ぼたもち)は、「隣知らず」とも呼ばれるようになりました。お彼岸に供えたり食べたりすることから「彼岸餅」
お彼岸に供えたり食べたりすることから「彼岸餅」と呼ばれます。お彼岸には、3月の春彼岸と9月の秋彼岸があります。春は毎年3月21日頃の「春分の日」、秋は9月23日頃の「秋分の日」を中日として、その前後の3日を合わせた7日間をお彼岸といいます。
おもちは五穀豊穣、小豆は魔除けに通じることもあり、日本の行事に欠かせないもので、法要の際にも必ずお供えしていました。おはぎ(ぼたもち)がお彼岸にお馴染みなのもそのためです。
石ころのようだから!?「あんころ餅」「あんころばし」
「あんころ餅」「あんころ」「あんこ餅」「あんころばし餅」「あんころばし」などあんころ餅系の由来には諸説あります。・餅の外側を餡(あん)で衣のようにくるむので「餡衣餅(あんころももち)」と呼ばれ、「も」が略されて「あんころ餅」になったという説
・外側に餡をつける際、餡の中で転がすので「餡転ばし餅」と呼ばれたことに由来するという説
・「石ころ」「さいころ」「犬ころ」のように、小さい物やころころした物をいう「ころ」に由来するという説。
ごはん粒のつぶし具合で「半殺し」「皆殺し」!?
おはぎ(ぼたもち)は、もち米やうるち米を蒸したものを、すりこぎで搗いてつぶして作ります。ごはん粒が半分ぐらい残る程度に粗くつぶしたものを俗に「半殺し」、ごはん粒が残らないほどよくつぶしたものを俗に「皆殺し」「全殺し」「本殺し」といいます。
また、ごはん粒ではなく、つぶあんを「半殺し」、こしあんを「本殺し」などというところもあります。
さらに、こうした作り方に対する言い方が、菓子自体の呼び名になっている地域(徳島県、兵庫県、島根県、長野県、新潟県、群馬県、埼玉県、千葉県、福島県、山形県、岩手県などの一部地域)があります。
やわらかい食感から「やわやわ」
おはぎ(ぼたもち)をさす女房言葉で、やわらかい食感から「やわやわ」といいます。(文:三浦 康子(暮らしの歳時記ガイド))