『Rise of the Ronin』を50時間以上プレイ! 幕末に刻む“自分だけの物語感”がスゴかった

2024年3月25日(月)10時36分 マイナビニュース

●プレイヤー諸君、狂いたまえ
1859年、吉田松陰は「諸君、狂いたまえ」という言葉を残してこの世を去った。いわゆる「安政の大獄」である。江戸幕府の大老である井伊直弼は、反抗する多くの攘夷志士たちを捕まえ、厳罰に処した。吉田松陰もその1人として打首にされたのだ。しかし、その弾圧により倒幕派が蜂起。翌1860年、「桜田門外の変」にて、井伊直弼は暗殺される。
2024年3月22日に発売されたPlayStation 5(PS5)用ソフトウェア『Rise of the Ronin』は、そんな動乱の幕末を舞台にしたアクションゲーム。開発は、『仁王』や『NINJA GAIDEN』を手掛けたコーエーテクモゲームスの「Team NINJA」だ。
今回、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)にゲームのレビューコードをいただいたので、さっそくプレイしてみた。
ゲームには、吉田松陰をはじめ、坂本龍馬や桂小五郎、勝海舟、福沢諭吉といった偉人が数多く登場する。だが主人公は、偉人でもなければ、歴史上に実在した人物でもない。名もなき1人の浪人として、歴史上の重要人物たちとさまざまな縁を結び、激動の時代を生きる。
ちなみに、先述した「諸君、狂いたまえ」という吉田松陰の言葉は、弟子へのメッセージとされており、ゲーム中でもそのように描かれる。解釈には諸説あるのかもしれないが、およそ「狂っているように見える常識外れの行動を起こせる人こそ、真に才能のある、愛すべき存在である」という意味らしい。
常識や固定観念にとらわれず、大勢に流されず、周囲の目を気にせず、自分の目で見た、耳で聞いたことから、己の正義を定め、何をすべきか判断し、信念を持って行動せよ。そんなことを伝えたかったのかもしれない。
そして、おそらく『Rise of the Ronin』のテーマの1つでもある。なぜなら、プレイヤーはゲーム中さまざまな選択を迫られるからだ。吉田松陰を打首にした幕府に抗うべく「倒幕」をサポートするもよし、攘夷では日本を変えられないと「佐幕」に動くもよし。登場人物とどのような関係性を構築するかもプレイヤーの自由。そして、見聞した事実をもとに、歴史を大きく動かすかもしれない判断をくだしていくことになる。
さて、前置きが長くなってしまったが、ここからがレビュー本番。なお、記事では、序盤のストーリーや特定の分岐ミッションについてやや触れているので、ネタバレを完全に避けたい人がいたら、ここでそっとブラウザを閉じてほしい。さあ、諸君、狂いたまえ——。
幕開けは衝撃のキャラメイクから
ゲームをはじめると、まずは最近のタイトルでおなじみのキャラクター外見設定。いわゆる「キャラメイク」だ。主人公は歴史上の偉人ではなくただの浪人。それゆえ、見た目も自由度高くクリエイトできる。
設定できるのは、男女のベースから、顔、髪、髭、歯のタイプ、肌質、足の爪の色までかなり幅広い。「渋さ」だけでも、「額のしわ」「目のしわ」「ほうれい線」の項目が用意されている。
しかも、外見データをサーバーにアップロードして設定コードを発行することもできるので、友だちとキャラデザインを共有したり、ストリーマーが作った外見コードをファンに提供したりといった楽しみ方もできるだろう。
筆者は1時間以上あーでもないこーでもないとこねくり回し、ようやく完成! したのも束の間。衝撃の事実に気がついた。
……2人キャラメイクする必要がある。いったい、どういうことなのだろう。だが、作るしかない。相棒かライバルかわからないが、対になるキャラを——。
そうして、キャラメイクだけで数時間、ようやくスタートラインに立つことができた。『Rise of the Ronin』を初めてプレイするタイミングは、時間に余裕がある日をオススメしたい。
記事冒頭で、「主人公は名もなき1人の浪人」と書いたが、ゲームスタート時点で主人公は浪人ではない。「黒洲藩」と呼ばれる架空の藩で、幕府に対抗するため育成された2人1組の兵士「隠し刀」だった。キャラメイクしたのは、その2人だったわけだ。
パートナーは好きなタイミングで操作を切り替えられる。操作していないもう1人は、プレイヤーのアクションに沿って自動で行動。1人がやられると、もう1人に切り替わり、回復薬を使えばやられたもう1人を治癒してまた操作可能な状態に戻すことができる。
そんなキャラ操作を覚えるチュートリアルを終えると、初のミッションが始まった。黒船に忍び込み、ペリーから「密書」を持ち帰る内容だ。
チュートリアルの延長かと気楽に進めていたところ、物語はここで風雲急を告げる。強敵を前にやられてしまった2人の隠し刀。どちらかが敵を足止めして、どちらかが密書を持ち帰るという選択を迫られるのだ。
選んだ1人が主人公となり、選ばれなかったもう1人はプレイアブルキャラクターではなくなる。なんて残酷な選択肢だろうか……! だが、決めなければならない。断腸の思いで1人を見捨て、密書を持ち帰るが、隠し刀の片割れがここでいなくなってしまった。
とはいえ、死んだとは限らない。片割れとの“因縁”をまだ感じている主人公は、脱藩を決意する。そうして、片割れを探すべく、1人の浪人となるのだった。
「倒幕」か「佐幕」か。選択で変化する幕末譚
片割れを探すために「横浜」を目指した主人公。ここから、歴史の大きな流れに飲み込まれていく。だが、ただ流れに任せて動くのではない。自ら選択し、時代を切り拓いていくおもしろさがある。冒頭にも触れたように、桂小五郎をはじめとする「倒幕派」の人物や、井伊直弼などの「佐幕派」の人物と“因縁”を結びながら、自分だけの物語を紡ぐことができるのだ。
「倒幕派」「佐幕派」どちらの側に立つかで、ミッション自体が変化することも少なくない。当然、敵対するキャラクターも変化。両派の人物とずっと良好な関係を続けることはやはり難しく、サブミッションで意外な一面を知った直後に、その人物と斬り合わなければならない、“昨日の友は今日の敵”なシーンが何度もあった。
選択によっては、「裏切り者」と罵られることもあるし、刃を交えたくない相手と対峙しなければならないこともある。だが、どんなに心苦しくとも、日本を変えるために、正しいと思う行動をしなければならないのだ。吉田松陰の遺言を実行するのは容易ではない。
最初は倒幕に息巻いていても、物語を進めるうちに「攘夷志士はちょっとやりすぎ」「勝海舟カッコいいな」といった感情が芽生え、倒幕と佐幕の間で揺れ動くこともあるだろう。
そして、動乱のなかで再会する片割れとはどのような“因縁”が結ばれるのか。詳しくは大きなネタバレになるので語らないが、メイクしたキャラクターがストーリーの途中で登場するのも、“自分だけの物語感”があっておもしろい。
こんな終わり方にならないように、歴史を変えられるって、言ってたよね
自分の選択で、物語や登場人物との“因縁”が変化する『Rise of the Ronin』。一度決めた選択はもう覆せないかと思っていたが、そうではなかった。少し物語を進めると、ユニークなシステムとして「留魂録」が登場する。「留魂録」は、吉田松陰が弟子に宛てた遺書でもあるのだが、ゲームではここに主人公の過去の選択がすべて記されていく。
しかも、この「留魂録」、エピソードをただ振り返れるだけではない。過去のミッションをもう一度リトライできるうえ、分岐のあったタイミングで“今の世界線”と異なる選択をした場合、元の時代に結果を反映させるかどうかを選べる。
つまり、「過去改変」ができるのだ。まるでタイムリープである。もちろん、元の時代に反映させずに、どのような内容になるかチラ見するだけでもいい。「自分の選んだ道をやり直すなんて邪道だ」と思ったなら、一切触れずに物語を進めることもできる。
やり直しする際は、一度見たムービーがスキップされるほか、選択肢を選ぶだけでミッション開始ポイントまでジャンプ。サクッと再チャレンジできるのもうれしい。セーブデータを細かく分けて管理する必要なくすべての分岐をやり直せるので、全部見たいヘビーユーザーにとっては、かなり役立つ機能と言えよう。
とはいえ、筆者は自分の選んだ結末がどうなるのかをまず見届けたい気持ちがあったので、記事作成用のスクリーンショットを撮影したら、あらかじめ作成しておいたセーブデータに戻り、物語を進めることにした。「もしや最初の主人公選択も変えられるのか?」と思ったが、さすがにその選択肢は出現しなかった。
また、オープンワールドのフィールドは、物語が進むにつれ、「横浜」「江戸」「京都」と舞台を移す。基本的に章ごとにそのエリアでストーリーが進行するのだが、「留魂録」を使えば、過去の章のエリアに遡って探索をやり直すこともできる。収集アイテムやサブミッションなどのやり残しがある場合に便利だ。
●協力マルチや貸し猫などお楽しみ要素も満載!
多彩な武器と豊富な流派がもたらすアクションの奥深さ
肝心のバトルは、幅広いアクションが特徴的。まず何と言っても武器種が豊富だ。主武器には「刀」「槍」「二刀」「大太刀」「サーベル」「薙刀」「銃剣」「大剣」「牛尾刀」、副武器には「短銃」「長銃(火縄式 / 火打石式 / 連発式)」「弓」「手裏剣」「捕火方」などがある。どちらも2つずつ装備でき、相手に合わせて切り替えながら戦うのが基本だろう。
しかも、「無明流」「天然理心流」「神道無念流」といった主武器ごとの「流派」もいくつか用意されている。それぞれで「武技」と呼ばれるアクションが異なるので、立ち回りの幅はかなり広い。武技も流派も、物語を進めたり、特定の相手との因縁レベルを高めたりすることで身につく。
また、武器自体は、敵を倒したり、宝箱を回収したりしているうちにガンガン増える。気がつけば上限の2,000個近くまで溜まっていることもしばしばあった。そのため筆者は、特定の武器種を固定で使うよりも、「攻撃力の高い武器を手に入れたから使ってみよう」「新しい流派の武技を覚えたから使ってみよう」と、武器を頻繁に切り替えながらプレイした。
さらに、相手によって有利になる流派、反対に不利になる流派があり、それらを使い分けて戦うので、多彩なアクションを思う存分楽しめるだろう。
なお、鍛冶屋では、武器やアイテムを消費することで、能力を1つ継承する「因縁継承」を行えるほか、分解して素材にできるので、大量に武器を手に入れて困ることはない。
バトルのうえで大事だと感じたのが、「気力」の管理だ。これはスタミナのようなもので、戦闘中に回避したり、攻撃したりすることで消費され、ゼロになると一定時間行動できなくなる。何もしなければ自動で回復するのだが、このわずかなスキが命取り。一心不乱に攻撃をしていると、意外とすぐ使い切ってしまうので気をつけなければならない。
そのため、攻撃のタイミングも重要になってくる。防御の「回避」「ガード」「石火(パリィ)」をうまく駆使しながら攻撃のチャンスを伺うわけだ。特に、石火を相手の攻撃に合わせてタイミングよく決め続けることで、相手を「動揺」状態にして、体勢を大きく崩すことができる。
そこで「追い打ち」できれば相手に大ダメージ。キレイに決まるとかなり気持ちがいい。ほかにも、近くのものを投げつける鈎縄アクションや、バレずに背後から暗殺するステルスキルもあって、多彩なバトルスタイルに対応する。
ちなみに、筆者は中間難易度の「黄昏」でプレイ。石火がうまく決まらずやられることは何度もあったが、“死にゲー”ほどの難しさはない印象だ。徒党を組んでいるミッションでは自分がやられても操作キャラが切り替わるし、集めた「業(経験値のようなもの)」を能力ポイントに変えてスキルを強化していけば、回復薬「丸薬」の補充量や最大体力が増えるので、バトルは安定するだろう。
最大3人でミッションにチャレンジ!
『Rise of the Ronin』では、合計3人までのオンラインプレイに対応している。ミッションを開始する前にフレンドリストからプレーヤーを招待するか、「隠し刀の旗印」に触れて協力プレイを有効にすると、NPCキャラクターの「徒党」の代わりに、最大でほかの2人のプレイヤーと一緒にゲームを進めることができる。
試しに、超序盤のミッション「幕引きと幕開け」でマルチのメンバーを募集してみた。「隠し刀の旗印」のメニュー画面から「助太刀」を選び、スタート。なお、募集状態にしておけば、ほかのプレイヤーが入ってくるまではソロで進められる。プレイしていたタイミングが発売前だったこともあって、正直ダメ元で設定してみたのだが、なんと後半に誰かが助太刀に入ってきてくれた。
同じく先行プレイ中のほかのメディアの人だろうか。はたまた、開発スタッフのメンバーだろうか。どちらにしろ、きっと強力な浪人であるに違いない。ガンガン進んでいくので、とりあえずあとをついて行くことにした。
すると、バシバシ敵を倒していく野良のマルチ浪人さん。「ついてこい」と言わんばかりの行動力で、あっという間にボスまで到着した。筆者は慣れないミッションであたふたしていたが、ボスの討伐含めてかなり頼りになった。強い人のプレイを参考にしたり、友だちと強敵に挑んだりと、マルチで楽しみ方の幅は一層広がるだろう。
その後、募集側ではなく参加側で何度かマルチプレイのミッションを探してみたが、やはり発売前のタイトルだからか、残念ながらうまくマッチングしなかったので、このあたりは発売後に挑戦してみたい。なお、協力マルチプレイで遊ぶには、PlayStation Plus(PS Plus)の加入が必要だ。
幕末のオープンワールドはやることいっぱい! 猫を見つけたら抱っこすべし
そして、忘れてはいけないのが『Rise of the Ronin』が“幕末オープンワールド”であること。「横浜」「江戸」「京都」での探索要素はめちゃめちゃ充実している。メインストーリー「浪人ミッション」以外にも、「因縁ミッション」「草莽ミッション」があちこちで発生するほか、お祈りすると能力ポイントを獲得できる「社」、和の景色を写真機に残す「撮影スポット」、幕府が行方を追っている「お尋ね者」成敗、ならず者が占拠する「治安悪化ポイント」、ミニゲームの「砲術訓練」「流鏑馬」「滑空訓練」など、とにかくやることが多い。
筆者は執筆時点で50時間以上プレイしているが、ようやく終わりが見えてきた(かもしれない)状況。記事に使うスクリーンショットを撮影するなど、通常よりも効率の悪いプレイをしているとはいえ、ゲームボリュームはかなりのものだとわかる。サブミッションや収集要素をコンプリートしようとしたら、まだまだ時間がかかるだろう。
探索要素のなかでも、「猫」を見つけて撫でる「猫蒐集」は心癒されるものがあった。しかも、ただ癒されるだけでない。たくさん猫を集めると、主人公の拠点「長屋」で、さまざまな人に猫を貸し出す「貸し猫」を営めるようになるのだ。
また、猫だけではなく犬も侮れない。お金を持たせたわんこをお参りに行かせる「こんぴら狗」はモッフモフでかわいさ満点。わしゃわしゃするときの、前足をバタバタさせる喜びの仕草といったらもうたまらん。ちなみに、戦闘時、敵側に犬がいることもあるが、手なづけて味方にするスキルも覚えられるので、動物を斬りたくない人は早く獲得したほうがいい。
そんな愛らしい動物たち。「倒幕派」と「佐幕派」の板挟みになったり、仲良くなったキャラを斬らないといけなかったり、返り血を浴び続ける幕末での日常に、ささやかな和みを提供してくれること間違いなしだ。
キャラメイクした片割れとの“因縁”や、選択の結果で変化するストーリーは、まさに“自分だけの物語”。幅広いアクションが楽しめる奥深いバトルに、ボリューム満点の探索要素と、かなり満足度の高いタイトルと言える。
自分なら動乱の日本をどのようにするか。ぜひ、唯一無二の幕末譚をその手で刻んでほしい。諸君、狂いたまえ——。

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