単身赴任先の夫を干渉するか放置するか?「大人の夫婦」だからこそ、知らんぷりすると決めた妻

2024年3月26日(火)22時5分 All About

単身赴任中に浮気していた夫。知ろうとしないほうがいいと思って放置してきた妻。しかし、休みで自宅に戻ってきたときに夫が自白。身勝手な話だが、ひとりで抱え込めなくなったようだ。

写真を拡大

単身赴任の夫のもとへ連絡もなしに行って、浮気していることを発見する。よく聞く話である。だからこそ、連絡せずにはいかないと決めていた女性がいる。それなのに、夫はあえて自ら告白してしまう。そのとき妻がとった態度とは。

夫とは「大人の夫婦」だと思っていたから

28歳のときに2歳年上の彼と結婚。その後、ふたりの子に恵まれ、共働きで頑張ってきたシノブさん(47歳)。長女は17歳、次女は15歳になった。
「夫の父には本当にお世話になりました。共働きだから夫にも家事育児をきちんとやってほしかったけど、夫は仕事が多忙でそうもいかなかった。それは私も理解していたんです。すると義父が『息子ができないことは私が補う』と、毎日手伝いに来てくれた。
義母は長女が産まれてすぐ亡くなったので、義父は寂しさもあったんでしょうね。自分が役に立つことが確認できてうれしいんだよと言っていました。人格的にも夫より数段すぐれた人なので(笑)、子どもたちにもいい影響があったと思います」
30代のころの夫は、よく働きよく遊んでいたようだとシノブさんは振り返る。それでも彼女が夫を放置していたのは、「いつかは自分で気づいてくれると思っていたから。夫も大人ですから、子どものように言い聞かせてどうにかなるものでもないと感じていた」そう。
義父はそんなシノブさんの気持ちを知っていて、「あのバカ息子が迷惑ばかりかけて」と恐縮していた。彼女はそんな義父の心を大事にしたかったという。

夫の単身赴任先に抜き打ちで「行かない」

「長女が小学校に入るころ、夫が単身赴任になりました。家族で行く選択肢もあったけど、私も仕事を続けたいし、子どもたちのためにも今の場所にいたほうがいいと話し合って。
夫には『単身赴任だからって、安心して遊んでいるとあとからツケがくるからね』と脅しました。夫は『わかってるよ』と言いながらもちょっとうれしそうだった」
最初の1年は、月に2回ほど必ず帰ってきていたが、2年目に入ると月に1回になり、それが3カ月に1回となるのに時間はかからなかった。夏休みなどは子どもを連れて夫の赴任先に出かけたが、シノブさんはひとりで唐突に訪ねたことはない。
「そういうときに限って何か見つけたりするでしょ、きっと。私だって単身赴任だったら、1度や2度は過ちをおかすような気がするので、わざと知ろうとしないほうがいいと思っていたんです」
3年目に入ると、夫はまた足繁く週末に戻ってくるようになった。寂しくなったらしい。悪事を発見しようとしなかったことがよかったのかもと、シノブさんはホッとした。

再び単身赴任になった夫

しばらく本社勤務だった夫が、再び単身赴任になったのは5年前。2年で戻るはずがコロナ禍になったため延長となり、戻ってきたのは昨年夏のことだった。
「その赴任中、夫からは『たまには来ないか』と連絡が来ていましたが、私も勤務先から無用な移動はしないようにと言われていたので行くわけにもいかなくて。ただ、緊急事態宣言がでていないときには何度か帰ってきていましたね。
そのたびにやけに子どもに気を遣ったり、私にも優しかったり。なんだか変だなとは思っていたんです」
昨年夏、本格的に帰宅した夫は、数日後、ふたりきりになったときに「今までずっとありがとう」と頭を下げた。いつも飄々としていて、ありがたいのかムカついているのかもよくわからないほど感情表現をしない夫なのだが、このときは涙目になっていたという。
「どうしたの、何か言いたいことがあるんじゃないのと聞いたら、『単身赴任の期間、きみとお父さんがどれほど頑張ってくれていたか、子どもたちの様子を見ていたらよくわかった。いい子たちに育ってよかった』と。
そして続けて『僕なんかいなくてもいいんじゃないかと寂しい気もした』というから、それは違うと。
やむを得ない措置で、お義父さんも頑張ってくれただけ、あなたがいればまた違う展開になったかもしれないけど、どちらにしても子どもたちはいい子よ、それはあの子たちが持って生まれたものかもしれない。そう言って慰めました」

夫が突然……

すると夫は突然、「ごめん。オレ、きみを何度か裏切った」と言いだした。やめて、とシノブさんは遮った。そんな話は聞きたくないから、1度だってサプライズで訪問するようなことはしなかったのにと言った。
「『オレにも良心があるんだよ、それが痛むんだよ』というから、ひとりで痛んでいてちょうだいって。私は聞きたくないし、聞いてどうしろというの。離婚したいなら話は聞くけどと言うと、『わかった』と。
自分の心の重荷を下ろしたいからって、こちらにその重荷を押しつけないでと突き放しました。かわいそうだったのかなと今でも思うけど、大人なんだからそんなことは自分で処理してちょうだいということですよ」
打ち明けることを夫の正直さだとも言えるが、隠し通せない弱さが露呈しているともいえる。聞いてもいないのに告白するくらいなら、最初からするなというのがシノブさんの本音だ。
シノブさんは何も聞かなかったこととして、ごく普通の日常生活を送っている。夫の様子にも特に変化はないが、何度かひとりでため息をついているのを見かけたことはある。
「対応したほうがいいようなトラブルに巻き込まれているなら話をしてと言ったら、そうではないというので彼の気持ちの問題でしょう。それなら私は関与しない。友人は、そういう突っぱね方は冷たいと言うんですが、そうなんですかねえ」
彼女は、夫も大人であるという前提で距離感を保っているという。だが、彼女が期待しているほど夫は大人ではないのかもしれない。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

All About

「単身赴任」をもっと詳しく

「単身赴任」のニュース

「単身赴任」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ