男の妄想食堂。韓国調味料「ダシダ」が決め手の「ミートソーススパゲッティ」を作る
2019年3月31日(日)12時0分 食楽web
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私の勝手な妄想からオープンした『妄想食堂』。料理人でも料理研究家でもない私、尾仲好太が、これまで食べ歩いた店の味の中で「これが一番旨い」と思う“味の再現”を目指し、今日もバイトのユースケと開店前の準備中です。
もちもち麺のパンチョのスパゲティー主人:今日は、ミートソースを作ろうと思ってるんだ。今回、俺が目指したいのは、昔お袋が作ってくれた味なんだ。
ユースケ:なるほど。それは店長にしかわからないっすよね。
主人:そこで、イメージしやすいのは、『スバゲティーのパンチョ』の味なんだな。
ユースケ:あ、そこ聞いたことあります。B級グルメ好きが愛してやまないデカ盛りの店。しかも喫茶店にあるようなナポリタンやミートソースを出す店ですよね。ケチャップ味の。
主人:う〜ん、違うんだ。パンチョの味は単純なケチャップ味でもなければ、そのへんの喫茶店にあるような味でもないんだよ。
ユースケ:へ?
『パンチョ』のミートソース690円に厚切りベーコン200円を載せたバージョン
主人:確かにケチャップ味が強めだが、きちんとオリジナルのトマトソースを作ってるんだ。酸味が強すぎず、かといって甘すぎず。麺がやわやわで、ソースがねっとりと絡む。今回、そのパンチョを見習いつつも、お袋のミートソースの優しい味を作りたいんだ。……うーん、思い出すなぁ。
ユースケ:うわ、思い出に浸っちゃってる。いいから、早く作りましょうよ。
スパゲティーの優しい味の決め手は?
ソース作りに韓国の出汁主人:最初に、ニンニク、タマネギ、しめじをみじん切りにしてくれ。まず、フライパンで、オリーブオイルとニンニクで炒める。ニンニクの香りがオリーブオイルに移ったらニンニクを取り出し、そこにタマネギとしめじのみじん切りを投入するんだ。
ユースケ:なるほど。
主人:タマネギが透き通ってきたら、牛豚合挽き肉を入れて、肉色が変わるまで炒める。そこへ、赤ワインを入れて、アルコール分を飛ばしていく。
ユースケ:前から不思議なんすけど、アルコールを飛ばすのに、最初からワインを入れる意味はあるんすか?
主人:「アルコールを飛ばす」というのはだな。アルコールには、肉を柔らかくしたり、臭みを取る効果があるんだが、一方でアルコール臭さが残る。そこで、アルコールの成分と効果だけを残し、アルコール臭を取るために水分を飛ばすんだよ。あとな、日本酒や料理酒ではなく、洋風の煮込み料理でワインを使う理由は、煮詰めることでコクを出すためでもある。
ユースケ:なるほど、勉強になりますわ。
主人:水分が飛んだら、「ダシダ」とトマトケチャップとトマトのホール缶を入れて煮込んでくれ。
ユースケ:「ダシダ」って何すか?
主人:韓国料理に欠かせない粉末状の牛肉の出汁の素だ。
ユースケ:あの…ミートソースに韓国の出汁って、おかしくないですか?
主人:いや、「ダシダ」は超優秀なんだよ。じっくり煮込んだ牛骨エキスに、タマネギやニンニクなんかの野菜と薬味を配合してあって、牛肉を使った煮込み料理なら、ほとんど何にでも合う。シチューや牛スジの煮込みなどにもいいんだぞ。
ユースケ:すげえ。
主人:さて、味見して、塩、胡椒で味を整えよう。これだけでも十分に旨いが、今回は、お袋の味を目指しているので、ここに生クリームと粉チーズを加える。
ユースケ:店長のお母さんのミートソースの優しい味の秘密は、ミルクだったんですね。
主人:男ってもんは大概、おっぱい好きなんだよ。
ユースケ:……
ゆで置き麺でもっちり仕上げユースケ:ところで、店長、スパゲティーは茹でないんですか?
主人:いいことに気づいたな。今回は、ここが最大のポイントだ。『パンチョ』のスパゲティーといえば極太の麺だ。2.2mm極太麺を、前日に茹でておいて、丸一日寝かし、冷蔵庫で冷やした“茹で置き”を使うってのが、あそこの特徴なんだ。だから、俺も、茹で置きを使う。
ユースケ:スパゲティーといえば、芯が少し残るくらいの“アルデンテ”がいいって言われてるのに、なぜ、わざわざ時間をかけて、そんな茹で置きを使うんですか?
主人:茹で置いた太麺を使うことで、食感がもっちりして、ソースとの絡み具合も“ねっとり”した感じになるんだよ。これを一度味わうと、なんだか、茹で置きの方が美味しいじゃんってなるぞ。
ユースケ:へえ。
主人:しかしな。一般のスーパーなんかだと、1.7mmくらいの麺が普通で、2.2mmの極太麺はなかなか売ってないんだよ。そこで、俺はAmazonで探して「ボルカノ スパゲッチ ローマン2.2mm」というのを仕入れ、昨日、茹でておいたんだよ。ほれ。
Amazonで購入した「ボルカノ スパゲッチ ローマン2.2mm」
ユースケ:さすが食い意地が張っている人は用意周到ですね。
主人:さあ、ここからも大事だぞ。この麺を、たっぷりの油を使って、強火で炒めるんだ。
ユースケ:焦げちゃいませんか?
主人:手早くな。そうすると麺にところどころ、パリッとした面ができるんだ。『パンチョ』の麺にもそのパリパリ面があって、そこが、めちゃくちゃ旨い。
仕上げにダブルチーズ主人:あと、俺はチーズが大好きなので、炒めた麺の上にとろけるチーズを載せて、その上にミートソースをかけ、さらに上にもチーズを載せて“追いチーズ”状態にしたい。
ユースケ:チーズだらけですね。しかし、すげ〜まろやかなミートソースですね。 これは、確かに子どもが大好きな味だ。
主人:ところで、この味のミートソースを使って、もう一品なんかできないかな。
ユースケ:んじゃ、俺が「ミートポテトグラタン」を作りますよ。このまろやかなミートソースなら、絶対旨いグラタンができますよ。美味しかったら店のメニューに採用してくださいよ!
ジャガイモをスライスして、レンジでチン。耐熱容器にバターを塗り、そこにジャガイモを敷いて、その上にミートソースとチーズを載せてオーブンで焼く。生クリームが入っているので、まろやかなグラタンに仕上がる
●『妄想食堂』の「ミートソース スパゲティー」の材料(2人分)
牛豚合びき肉400g/タマネギ1個/シメジ1パック/トマトホール缶1缶/ニンニク3片/牛肉ダシダ大さじ1/生クリーム100cc/赤ワイン適量/塩・胡椒適量/チーズ 好みの量/スパゲティー(なるべく太めを)200g
(編集・文◎土原亜子 イラスト◎うえむらのぶこ)
プロフィール
尾仲好太(おなか・すいた)
『妄想食堂』の主人。知人からは超人の味覚、嗅覚、そして胃袋を持つと噂の一般人。旨い料理を食べる、作ることに日夜、妄想を抱き、実際に店を食べ歩き、家で再現する日々を送る。得意料理は、肉料理。