心療内科医が教える「断り方」と「いい人のリスク」 都合のいい人になっていませんか?まずは自分の声に耳を傾けて

2024年4月8日(月)12時30分 婦人公論.jp


(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

周囲の人のネガティブな発言や自分勝手な行動に心をかき乱されると、前向きな気持ちを保つのは難しいもの。そんな相手とのコミュニケーションをスムーズにし、毎日を穏やかに過ごす練習を始めましょう(構成=村瀬素子 イラスト=すぎやままり)

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「いい人」のリスク


歳を重ねるにつれ、交友範囲が狭くなり、密な人間関係の中でストレスを抱える人が多くなるようです。例えば頑固な親、気分屋な職場の同僚など、つき合うのが面倒だなと感じても簡単に縁を切ることができない関係の場合、心のモヤモヤが募っていきます。

特に『婦人公論』世代の女性は、自分の意見を主張せず相手に従ってしまう傾向が。ひと昔前の日本では、女性は従順であるべきという考えが一般的でした。そのため、家事や介護、あるいは職場で面倒を押しつけられても、断れずに引き受けてしまう。

内心は「なぜ夫は家事を手伝ってくれないの?」「週末はパートを休みたいのに」と不満があっても、断る罪悪感や「反対意見を言うと嫌われるかも」という不安から、本音を言えず、相手に服従してしまうのです。

一見「いい人」のようですが、相手からは「都合のいい人」と思われ、本人の心には鬱憤がたまります。その状態が続くと気分が落ち込み、うつなど深刻な心身の不調を招くことも。

また、抑えていた感情が爆発して、突然、攻撃的な言動をとってしまい、その結果、関係が完全に途絶えてしまうケースもあります。これではとても前向きな気持ちになどなれません。

忖度せず、素直に伝える


自分が機嫌よくいられて、面倒な相手とも心地よい関係を築くために大切なのは、「アサーティブ」なコミュニケーションです。

アサーティブとは簡単に言うと、自分の気持ちを正直にきちんと相手に伝えること。一方的に自分の意見を主張すること、きつい言い方をすることとは異なります。

どちらかが我慢したり仕方なく妥協したりするのではなく、尊重し合い、相手も自分も納得できるゴールを目指すのです。

アサーティブになる第一歩は、自分はどう感じ、どうしたいのか——自分の本心に耳を傾けること。そして忖度や遠慮をせず、それを素直に表明することです。次の3つはアサーティブの基本なので、ぜひ覚えてください。

【A】会話の基本は「Iメッセージ」。お願いしたいことがある時、「なぜあなたは掃除をしないの」と相手(You)を主語にすると、相手は責められている気分になり防御してしまう。「私は掃除してもらいたい」と自分(I)を主語にするだけで、状況や気持ちが伝わりやすくなります。

【B】依頼や誘いを断る場合は、できるだけ早く返事を。先延ばしにすると余計言いにくくなりますし、かえって相手の気持ちを傷つけることになります。

【C】心にもない言葉や余計な一言は口にしないこと。行きたくない会合を断る時に「また今度お声がけください」と言えば、再び誘われてしまいます。「こういう会が苦手なので」と明るく素直に状況を説明して断ったほうが、意図も伝わるうえに誠実です。また、「本当は行きたいけれど……」という曖昧な表現も避けましょう。

長年我慢を続けてきた人ほど難しいでしょうから、最初は日常の小さなことからトライしてみてください。

例えば友人とのランチで「食後のコーヒーを飲まない?」と誘われた時、飲みたくなければ「私は遠慮しておく。このあと用事があるから」と自分の意見を伝える。家事を手伝ってくれない夫に、「出かけたついでにブロッコリーを買ってきてくれない?」と頼む。店員から欲しくないものを勧められたら「結構です」と断る……。

アサーティブの練習は、算数ドリルと同じ。簡単な課題を何度もクリアすることで、「NOと言えた」「頼むことができた」と自信につながり、徐々に身につくものです。

もう一つつけ加えると、『婦人公論』世代は、人間関係において「狭くても深い関わりがいい」という思い込みが強いように感じます。もちろん家族や親しい友人とのつながりも大切ですが、それだけでなく、地域サークルなどでたまに会って話す程度の浅いつながりも広げてほしいですね。

濃密な人間関係の逃げ場になりますし、視点を変えて状況を見つめることができる。深いつながりと浅いつながり、両方を大事にしたほうが健全なメンタルを保てるのです。

こうしたことを踏まえ、次ページから、少し苦手だと思っている相手ともうまくつき合う方法をお伝えします。日常生活の中で応用すれば、次第に自分の心に正直でいられるようになり、毎日が楽しくなるはずです。


(イラスト:すぎやままり)

ストレスをためずに自分の気持ちを伝えるコツ


【1】意思を明確にする

意見を求められた時は、最初から「波風を立てないように」と考えるのではなく、自分がどう感じているのかを心に問いかけ、自分の望むことを明確にします

【2】できるできないを判断

頼みごとは、自分を犠牲にして引き受けてもストレスがたまる一方。どこまでならできるか、何ができないのか客観的に判断を。きっぱり断る勇気を持つことも大切です

【3】表情に惑わされず伝える

相手の不機嫌な表情に萎縮して言葉が出なくなる時は、「冷静に」と自分に言い聞かせること。そして、ゆっくりと怖がらずに意見を述べたり、相手に説明を求めたりしましょう

<2につづく>

婦人公論.jp

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