「一人旅」意欲が上昇 - 40万人超の楽天調査データから見る「おひとり様消費」、3年間でどう変わった?
2025年4月16日(水)10時27分 マイナビニュース
楽天インサイトは4月15日、「生活意識」に関する3年間の変容についての分析結果を発表した。調査は2024年11月28日〜12月18日、楽天インサイトに登録しているモニター約220万人の中から、全国の15〜79歳の401,156人を対象に実施した2025年版と、552,160人を対象に実施した2023年版(2022年11月29日〜12月23日)、485,370人を対象に実施した2024年版(2023年11月28日〜12月25日)を比較し、分析を行った。
○1人旅行を満喫したい意識が増加
旅行意識について「旅行は他の人と一緒に行くより1人旅を満喫したい」(2023年版:36.9% / 2025年版:37.9%、「非常にあてはまる」+「ややあてはまる」)が1.0ポイント増加した。
また、質問に対して「非常にあてはまる」もしくは「ややあてはまる」と回答した人を「旅行1人で満喫派」、「全くあてはまらない」もしくは「あまりあてはまらない」と回答した人を「旅行1人で非満喫派」と定義し、趣味は旅行と回答した人に絞って分析をしたところ、「趣味や旅行先の出来事や写真を、よくSNSで発信している」と答えた人は「旅行1人で満喫派」では36.0%(「非常にあてはまる」+「ややあてはまる」)、「旅行1人で非満喫派」では20.3%(「非常にあてはまる」+「ややあてはまる」)で15.7ポイントの違いがあった。つまり、1人旅行を満喫している人の方がSNSでの情報発信が活発だということがうかがえる。これは、SNSでの情報発信を通じて、1人旅の体験を共有したいというニーズが背景にあるとみられる。これらの結果から、1人で楽しむ時間と、その体験を共有する喜びを両立する、1人向けの商品やサービスの利用といった新たな「おひとり様消費」の可能性が考えられる。
同社データアナリスト・末永幸三氏は、1人旅を後押ししているのは、シングルライフの増加やコロナ禍で1人の時間が増えたこと、物価高騰で旅行代金が値上がりし友人を誘いにくくなっていること、また、1人で楽しむことと共有する楽しさの両立などではないかと推察している。特に1人旅で旅行の出来事や写真をSNSで情報発信していることに注目できる。2005年前後に「おひとり様消費」が話題になり、1人映画や1人焼肉など、当時は「寂しい」「ちょっと変わっている」といったややネガティブなイメージもあったが、2010年以降では「おひとり様」向けのサービスが拡大し、1人行動が一般化した。コロナ禍が過ぎ、1人での行動とSNSやオンラインを通じた「つながり」を両立する、「おひとり様3.0」とも言える新たな消費行動が広がりつつある。同氏は、今後、おひとり様グルメやDIYクラフトキット、オンライン学習プラットフォームなど、おひとり様3.0のニーズに応える商品やサービスが新たな市場を創出し、経済を活性化させる原動力になると見ている。
○食生活の不安が増加
食に関する意識項目では、「食生活に不安を感じている」と答えた人が2年間で1.6ポイント増加した。(2023年版:42.5% / 2025年版:44.1%、「非常にあてはまる」+「ややあてはまる」)。一方、「高くても鮮度・素材の良い食品を選ぶ」と答えた人も2.2ポイント低下する結果となった(2023年版:49.2% / 2025年版:47.0% 「非常にあてはまる」+「ややあてはまる」)。また、「栄養バランスに配慮した調理を心掛けている」は2.8ポイント低下した(2023年版:61.0% / 2025年版:58.2% 「非常にあてはまる」+「ややあてはまる」)。物価上昇により、栄養バランスや食材に配慮する余裕がなくなり、食生活への不安を増大させている可能性が考えられる。
同社データアナリストの末永幸三氏は、「食品価格の高騰は食品選定にも影響を与え、栄養バランスや鮮度の妥協を生み、その結果食生活への不安を増大させている可能性が考えられる」と述べている。こうした状況を同氏は、新たなインフレを源とした「令和の食生活不安」と位置づけており、消費者が栄養バランスや鮮度を重視した食品を選びにくい状況にあると指摘している。
企業に対しては、こうした消費者ニーズに応える商品やサービスの提供が求められているとし、例えば、手頃な価格で栄養バランスの良い商品を提供し消費者の健康的な食生活をサポートしたり、時間や手間をかけずに調理できる冷凍・レトルト食品を活用した手軽で栄養価の高い商品を開発したりして、忙しい現代人のニーズにも応えることなどを挙げている。また、企業が栄養バランスの取れたレシピや商品を提案することで、社会的信頼を高めると同時に、消費者の健康向上という社会課題への貢献にもつなげることができるとの見方を示している。
○デジタル化への不安が増加
「世の中のサービスのデジタル化についていけるか不安だ」(2023年版:53.4% / 2025年版:54.7%、「非常にあてはまる」+「ややあてはまる」)と回答した人は1.3ポイント増加した。年齢別にみると、10代・20代の男性・女性が40%台であるのに対して、女性40代以上で特に割合が高く、女性40代で65.9%、女性50代で70.0%、女性60代で69.3%、女性70代で65.9%と、いずれの年代でも6割を超える結果となった。また、男性では50代で50.2%が最も高く、中高年層の方が不安を抱える人が多い結果となっている。コロナ禍以降、キャッシュレスの普及やAI技術の進化など急激なデジタル化が進み、シニア層を中心に不安が増加していることが考えられる。
同社データアナリストの末永幸三氏は、近年の急速なデジタル化に対し、特にシニア層を中心に不安を抱く人が増加していると指摘している。AI技術、キャッシュレス決済、タッチパネル注文、オンラインサポートなど、デジタル化されたサービスを利用できない人々が、日常生活で不便を感じる場面が多くなっているとみられる。このような状況は、「デジタルデバイド2025」ともいえる新たなデジタル格差を生み出す可能性があるという。
このままデジタル化が進むと、人口の約50%を占めるマスボリュームの50歳以上の中高年層が取り残され、企業は大きな顧客層を失う可能性があると末永氏は指摘する。中高年層は新しい技術に接する機会が少なく、心理的な抵抗感も強いため、企業によるきめ細やかなサポートが必要とされる。
同氏は、企業が中高年層をサポートすることで、顧客ロイヤリティやLTV(顧客生涯価値)の向上が期待できるとしている。中高年層は一度慣れたサービスを長く利用する傾向があるため、デジタルサポートを通じて顧客との長期的な関係を築くことができる。さらに、新たな顧客層の開拓、既存顧客の維持、口コミによるブランド価値の向上にもつながる。
今後は、企業の競争力やブランド価値を高める観点からも、中高年層へのデジタルサポートがより一層重要になると見られている。地域コミュニティでのワークショップ開催、店頭での個別サポート、月額制のデジタル支援プランの導入など、様々な対応策を検討する必要があるとの見解を示している。