金栗記念で活躍した男子ランナーたち、注目の5000mは森が優勝、僅差で敗れた佐藤は「負けたら意味がない」

2025年4月18日(金)6時0分 JBpress

(スポーツライター:酒井 政人)


早大ルーキー佐々木がU20日本歴代2位

 4月12日の金栗記念選抜陸上中長距離大会2025で本格的なトラックシーズンが開幕。新家裕太郎(愛三工業)が8分26秒95で制した男子グランプリ3000m障害で学生ルーキーの走りが光った。

 佐久長聖出身の佐々木哲(早大)が8分37秒23(高校歴代2位)の自己ベストを大きく更新するU20日本歴代2位&日本学生歴代8位となる8分29秒05をマーク。世界大会に4年連続出場中の青木涼真(Honda)らに先着して、学生トップの2位に食い込んだ。

 佐々木は5000mでも13分40秒02のタイムを持ち、昨年の全国高校駅伝3区で区間賞を獲得している選手。早大勢は全国高校駅伝1区で日本人最高の28分43秒をマークした鈴木琉胤(八千代松陰高出身)が3月29日のモーリー・プラント競技会5000mでU20日本歴代3位の13分25秒59を叩き出している。正月の箱根駅伝で4位に浮上した名門が黄金ルーキーズの加入でますます楽しみになってきた。

 学生ルーキーでいえば、800mで1分44秒80の日本記録を持つ滋賀学園出身の落合晃(駒大)が男子グランプリ1500mに登場。自己ベストとなる3分44秒18の全体18位で大学初レースを飾った。

 落合は駒大・大八木弘明総監督が指導するGgoatメンバーとして3月中旬から米国・アルバカーキ合宿に参加している。今後は800mで日本学生個人選手権(4月25〜27日)と静岡国際(5月3日)にエントリーしているが、メイン種目でどんな走りを見せるのか。


5000mは森が日本歴代10位で優勝

 注目の男子グランプリ5000mは先頭が1000mを2分40秒、2000mを5分21秒で通過。2800m付近から佐藤圭汰(駒大)がペースメーカーの前に出て、3000mは8分03秒で通過した。

 先頭集団は4000mを10分45秒で通過すると、トップ争いは佐藤、篠原倖太朗(富士通)、鶴川正也(GMOインターネットグループ)、森凪也(Honda)、伊藤大志(NTT西日本)の5人に絞られる。残り2周を切って、佐藤、森、鶴川の戦いになった。

 ラスト1周を12分20秒で迎えると、残り150m付近でトップを奪った森がライバルを引き離す。日本歴代10位の13分15秒07でラスト勝負を制した。2着は佐藤で13分16秒29(全体5位)、3着は鶴川で自己ベストの13分17秒64(同6位)だった。

 優勝した森は中大出身の25歳で、大学4年時は箱根駅伝で花の2区をトップで走り出すも、区間16位だった。昨年の日本選手権5000mで13分16秒76の2位に入るなど、社会人で大きく成長。今大会は、「狙い通り優勝できました。この大会で勝ち切れたことを自信にしてレベルアップしていきたい」と話した。

「箱根駅伝の注目度が高く、大学時代は好きなようにできなかった部分があるんですけど、実業団では自分で考えてできるようになり、陸上をより楽しむことができています。3月はスピード練習がよくできたので、それが実になったのかな。ワールドランキングで東京世界陸上出場を目指すには、アジア選手権が一番ポイントを取れる可能性があるので、アジア選手権に行くためにこの大会に出場しました。アジア選手権とセイコーゴールデングランプリ(3000m)でポイントを稼いで、ぜひ出場を決めたいなと思います」


日本人2位の佐藤は「次は日本記録を狙いたい」

 グランプリ5000mはアジア選手権の代表選考会を兼ねており、優勝した森凪也(Honda)に続き、日本人2位の佐藤圭汰(駒大)も日本代表が有力になった。しかし、佐藤はまったく納得していない。

「スプリント勝負は分が悪いので、ロングスパートをかけていきたいなと思っていました。2000m過ぎに少しペースが落ちたので、ある程度は自分で上げられたんですけど、負けては意味がありません。昨年は『The TEN』が終わってから一回もトラックレースに出られなくて、本当に悔しい思いをしました。アジア選手権の前に海外レースに行く予定もあるので、そこで日本記録を出したいです」

 佐藤は昨年1月に5000mで13分09秒45の室内日本記録を樹立。3月に10000mで27分34秒66のセカンドベストをマークした。しかし、その後は恥骨の疲労骨折などがあり、レースから遠ざかった。それでも今年の箱根駅伝7区を区間新記録で爆走。3月の米国・アルバカーキ合宿でも順調にトレーニングを積み上げて、「昨年より力は絶対についているなという感じはあります」と5000mの日本記録(13分08秒40)の更新に意欲十分だ。

 駒大・大八木弘明総監督によると、佐藤は5月3日のダイヤモンドリーグ上海大会5000mに参戦する予定があり、「圭汰は3000mから自分で行きましたし、本当に成長したなと感じました。常に日本記録を狙うつもりでいると思います」と“大記録”の予感が漂っている。

 その大八木監督が率いるGgoatの選手では、実業団デビューとなった篠原倖太朗(富士通)が13分25秒30で4着(全体18位)。田澤廉(トヨタ自動車)は3600m付近までトップ集団でレースを進めて、13分34秒12の9着(全体28位)に入っている。

 篠原は2月の丸亀国際ハーフマラソンで59分30秒(日本歴代2位)の日本学生記録を樹立。トラックでもまずまずのスタートを切った。一方の田澤は久しぶりのレースを走って、笑顔を見せていた。

「昨季はケガもあり、コンディションが良くないままシーズンを過ごしました。今年も2月までは練習が全然積めていなくて、アルバカーキ合宿でやっと圭汰たちにつけるかつけないかくらいの練習がやれたんです。今回は勝負というよりも、レース感覚をつかむために出場しました。その目的は達成できたかなと思います」

 オレゴンとブダペストの世界陸上10000mに出場している田澤。世界の実力を知る男は、10000mで「26分台」を目指している。そのために今季は5000mで「12分台」を視野にスピードを磨くプランを持つが、冷静に自分を見つめている。

「次はゴールデンゲームズ(5月4日)を予定していたんですけど、練習を積みたいと思うので、ちょっとわからないですね。まだ12分台は無理なので、東京世界陸上を狙っていくのか、冬に結果を残して今後につなげていくのか。ちょっと考えたいと思います」

 9月に国内で開催される東京世界陸上の代表枠は各種目1カ国最大3名。各種目にターゲットナンバー(出場枠)が設けられており、有効期間内に参加標準記録を突破するか、ワールドランキング(Road to Tokyo)においてターゲットナンバー内に入ることで、出場資格を得られる。また出場資格者がいない種目は「開催国枠」(エントリー設定記録を突破した1名)がある。大舞台を目指す選手たちの“熱い戦い”が始まった。

筆者:酒井 政人

JBpress

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