大場久美子が実践、家の中でできる「ちょいトレ」とは?リハビリの名医に聞く、寝たきり予防のポイント3つ

2024年4月19日(金)12時30分 婦人公論.jp


女優の大場久美子さん(右)と、リハビリテーション医療の第一人者である安保雅博先生(左)(撮影:玉置順子(t.cube))

昨夏、腰痛の悪化から、3週間近くベッドの上での生活を余儀なくされた女優の大場久美子さん。夫や同居する義理の両親のサポートを受けながら、不自由なく動ける状態まで回復しました。再発の予防や、将来寝たきりにならないためにできることを、リハビリテーション医療の第一人者である安保雅博先生に聞きます(撮影:玉置順子(t.cube) 構成:内山靖子)

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<前編よりつづく>

家の中でも《ちょいトレ》を


大場 正直な話、80代の義両親を含めた日々の家事や、保護老犬の世話などに追われて、私、ぜんぜん運動していないんですよ。日光アレルギーもあるので、仕事のとき以外はほとんど外に出ませんし。買い物も夫に頼むか、もっぱらネットスーパーで。

安保 それにしては姿勢がいいですし、身のこなしも若々しい。

大場 私の持ち歌に「スプリング・サンバ」という歌があって、サンバステップを踏みながら、この曲を何十年も歌っているおかげかもしれません。(笑)

安保 なるほど。外にはあまり出ないとおっしゃいましたが、家事やご家族のお世話がいい運動になっているのでは?

大場 腰を痛めたときに診ていただいた先生に教わったのですが、お皿を洗うときは、体をシンクにピッタリつけて前かがみにならないように意識しています。1枚、1枚洗いながら、スクワットもしています。

安保 それはいいリハビリになりますね。全身の筋肉を鍛えるという点で、スクワットは歩く以上に効果がありますから。


「椅子に座ってテレビを見ながらできるトレーニングはいろいろあります」と安保先生。写真は、片方のお尻を上げながら体幹を中心に戻す。背中やわき腹の筋肉を刺激できる

大場 高い場所に置いてある食器を取るときは、思いっきり手を伸ばして、ストレッチもしています。義両親に少しでも栄養価の高いものを食べてもらいたいので、キッチンにいる時間が長いのですが、料理の合間にキッチンで踊っていることもありますね。(笑)

安保 家事も、全身の筋肉をきちんと使って行えば、立派なトレーニングに。大場さんのように家事や介護で忙しい方や、膝や腰が痛くて外で運動するのが難しい方は、家の中で《ちょい足しトレーニング》をするだけでも、十分鍛えられますよ。

大場 《ちょいトレ》、ぜひやってみたいです。たとえば、どんなものがあるんですか?

安保 手軽にできるのは、椅子に座ったままでエアウォーキング。歩くときと同じ要領で、両手を後ろに振って、足を交互に上げる。また、椅子の背もたれを背中でぐーっと押すだけでも背筋が鍛えられます。僕は患者さんに、「朝ドラを見ている15分間、休み休みでいいのでこうした運動をされたらどうですか?」とお伝えしています。

大場 テレビを見ながらできるのはうれしい!

安保 床にうつぶせになり、首を持ち上げた姿勢でテレビを見ると背筋が鍛えられますし、立って画面を見ながら、その場で足踏みするのも、外で歩くのと同様の効果がありますよ。

大場 私、夫と意見が合わなくてストレスがたまったときは、家の廊下を何往復も歩いてストレス解消しています。(笑)

安保 それはいいですね。普段、トイレに行ったついでに、台所に立ち寄って水を飲んでからリビングへ、というように遠回りしていけば、プラス50歩は稼げます。1日8回トイレに行くなら、50×8で400歩増えますよ。

大場 《ちょいトレ》になるのかどうかわかりませんが、毎朝、目が覚めたら、ベッドの上でストレッチをしてから起き上がるようにしています。うつぶせになって全身の力を抜いてから、下半身や腰の筋肉を伸ばし、最後に正座をして背中の筋肉を伸ばしていく。時間があるときは30分ほどかけてじっくりと。

安保 それも立派な《ちょいトレ》です。僕の患者さんたちにも「ストレッチをしてから、起き上がるようにしてください」と指導しています。

高齢になればなるほど、寝ている間に体の筋肉が固まってしまうので、そのまま起きると転びやすくなるだけでなく、腰や背中を痛める原因にもなってしまうのです。

大場 以前、肩を痛めたときに、「水泳のクロールの動きがいい」と聞いたので、クロールのように両腕をグルグル回しながら家の中を歩くこともありますね。

安保 大場さんは、無意識のうちに、日々、《ちょいトレ》を実践していらっしゃる。だから、いくつになっても、こんなにお元気でいられるのでしょう。


「歳を重ねると、あっちが痛い、こっちが痛いと憂鬱なことも増えますが、私のモットーは毎日を笑顔で過ごすこと」(大場さん)

50歳を過ぎたら骨密度検査はマスト


大場 寝たきりを防ぐため、ウォーキングや適度な運動以外に、気をつけることはありますか?

安保 食事の内容も大切です。高齢者は少し太っているほうが元気で長生きするので、炭水化物抜きダイエットなどは厳禁。栄養価が高い旬の野菜、筋肉や血をつくってくれる良質なタンパク質、そして体を動かすエネルギー源となる炭水化物をバランスよく摂ってほしいですね。

大場 同居するまで、義両親は炭水化物ばかり食べて栄養のバランスが偏っていたので、目下、わが家のメニューはお肉と野菜が中心です。大先輩のとある舞台俳優さんは、夜の公演が終わった後、毎日のようにステーキを食べていたと聞きました。

安保 肉を食べている人は高齢になっても元気に動ける人が多いです。運動と食事と検診——寝たきりにならないためには、この3つが絶対に欠かせません。

大場 検診は、どんなものを受けたらいいのでしょう?

安保 女性は骨密度の検査を受けて、自分の骨の状態をきちんと把握しておくことが大事。とくに、閉経を迎える50代になったら、骨密度検査はマストです。

数値が低いと骨粗しょう症のリスクが高まり、背骨や大腿骨の付け根、手首の骨などがスカスカになります。すると、わずかな刺激で折れてしまい、寝たきりにつながる場合が多いのです。

大場 私も、退院後に行った別の病院で腰椎椎間板症と診断されたのですが、そこで骨密度検査をしてもらいました。腰と大腿骨の骨密度を測ったところ、ビックリしたのは、同じ大腿骨でも左右で骨密度の数値がぜんぜん違うんですね。

安保 いい検査をされましたね。おっしゃるように、骨密度は場所によってまちまちなので、女性が骨折しやすい大腿骨や脊椎の骨密度を測ってもらわないと意味がないのです。手やかかとを装置に置くだけの簡単な検査では不十分。

大場 数値が低かったら、どうすればいいのですか?

安保 今はいい薬が出ています。毎朝1錠飲むだけ、1ヵ月に1錠飲めばいいタイプもありますので、早めに治療を受けて骨粗しょう症が進まないようにしましょう。また、できれば一度は全身を細かく検査する人間ドックや内視鏡検査を受けて、がんや脳卒中のリスクを早めにチェックすることをおすすめします。

大場 歳を重ねると、あっちが痛い、こっちが痛いと憂鬱なことも増えますが、私のモットーは毎日を笑顔で過ごすこと。60代にもなれば、もはや先のことはわかりませんから、「今日1日を思いきり楽しもう!」って。

安保 大場さんのようなポジティブ思考が一番大切なんですよ。うちの患者さんを見ていても、80代、90代になっても元気な人はいつも身ぎれいにしていて、よく食べ、よく笑い、よく動く。「これをやりたい」と、前向きな姿勢で毎日を過ごしている人は、寝たきりになることも少ないのではないでしょうか。

大場 これからもずっと、大好きな仕事を続けていきたいですからね。先生に教えていただいた、《ちょいトレ》に励んで、70代、80代になっても笑顔で頑張っていきたいと思います。

婦人公論.jp

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