ポーカーフェイスもお見通し、体に張るだけで感情を正確に読み取ってしまうAIデバイス

2025年4月26日(土)8時0分 カラパイア


Image credit: Yangbo Yuan / Penn State.


 どんなに思っていることをひた隠しに隠そうとしても無駄な努力だ。この絆創膏サイズのウェアラブルデバイスは、無表情の鉄仮面の下に隠された感情の動きを正確に読み取ることができる。


 体温・汗・心拍など、こうした生理学的な変化は、過去にも嘘発見器で真実を見抜くために利用されてきた。


 だが今やAI技術のおかげで、その正確さはほとんど当てにならない嘘発見器[https://karapaia.com/archives/52265396.html]の比ではなくなった。


 米国ペンシルベニア州立大学をはじめとする研究チームによる実験では、たとえ表情を隠したとしても9割近く正確に感情を読み取ることができたという。


AIが人間の生理学データから感情を読み取る


 このウェアラブルデバイスは、プラチナやアルミなどの薄く柔軟な金属パーツから開発されたもので、体にピタッと張り付いてリアルタイムで人体の生理学データを収集する。


 集められるデータは、皮膚の温度・心拍数・汗・血中酸素飽和度といった感情に応じて変化するものだ。


 皮膚温度の上昇は、驚きや怒りにともなうものだし、その低下は幸福感・恐怖・悲しみが引き金になる。また汗の増加や心拍数の上昇は、恐怖を感じたときに起きる。


 こうした生理学的な変化は、それぞれを単独で見ても、その背後にある感情を確実に知ることはできない。


 だが、こうしたデータを人間の表情と絡めながら多元的に分析することで、より正確に感情を読み取れるようになる。


 その分析を担うのがAIだ。


 収集された生理学的データは、モバイル端末やクラウドに送信され、専用に開発された機械学習モデルがデータを解析。デバイスの着用者が経験している感情を予測するのである。



薄い金属パーツを重ねた構造をしており、きわめて柔軟性が高い。この特性を活かしてデバイスをピタッと人体に貼り付ければ、リアルタイムで皮膚の温度・心拍数・汗・血中酸素飽和度といった生理学的データを収集。これをAIが分析することで着用者の感情を読み取る/image credit : Yangbo Yuan, Hongcheng Xu, Libo Gao, and Huanyu Cheng, Nano Letters 2025


通常で9割以上、無表情を作っても感情を見抜く


 今回の研究では、被験者8人に協力してもらい、デバイスの性能が試されている。


 そのための実験では、デバイスを装着した被験者は、いくつかの映像を視聴。


 映像は特定の感情を呼び起こすよう作られたもので、被験者は幸福・恐怖・悲しみ・怒り・嫌悪といった感情を経験することになる。これをデバイスでうまく当てられるか試されたのだ。


 最初の実験では、被験者には普通に表情を浮かべるよう指示されていた。このときデバイスは92.28%の正解率で感情を当てることができたという。


 だが、もっとすごいのは無表情を指示されたときも、同様の正確さだったこと。


 ポーカーフェイスを浮かべるよう指示された実験でも、デバイスは88.83%の正解率で被験者の感情を見抜くことができたのだ。



ほっぺに貼るとこんな感じ image credit / Yangbo Yuan / Penn State


医療現場で患者の精神的ケアに役立てる


 このようなデバイスが登場したからには、私たちの心の内側はもはや丸裸も同然なのだろうか?


 少なくとも研究チームは他人の感情を徹底的に暴き出そうとは考えていない。彼らが想定するのは、医療の現場での使用だ。


 ペンシルベニア州立大学の博士課程学生ユアン・ヤンボー氏は、ニュースリリース[https://www.psu.edu/news/research/story/high-tech-sticker-can-identify-real-human-emotions]でこう語る。


 「この技術は、心の病に悩みながらも、自らの苦しみを他人にも自分自身にも語れない人々を助ける可能性を秘めています」


 このウェアラブルデバイスがあれば、医師は患者の心の状態をリアルタイムで把握することができる。


 つまり救いを求めながらも己の感情を他人に伝えることができない患者や、自分自身の感情にすら気づかないような患者であっても、その心を正確に診断できるということだ。


 また、見過ごされがちな心の問題の初期症状を発見し、手遅れになる前に治療することもできるかもしれない。



絆創膏サイズのAIデバイスはメンタルケアに役立つかもしれない image credit / Yangbo Yuan / Penn State


 それはそれとして、本当にポーカーフェイスを見破るために使ってみるというのはどうだろう?


 世界的なポーカーの大会では、腕利プレーヤーの心の感情[https://karapaia.com/archives/51985981.html]を知ることは誰にもできない。


 それをこのデバイスで読み取って、視聴者に見せるのだ。無表情の下に隠された高揚や動揺がわかれば、外からは分かりにくいプロのポーカーの駆け引きがいっそう面白くなるのではないだろうか?


 この研究は『Nano Letters[https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.nanolett.4c06392]』(2025年3月24日付)に掲載された。


References: High-tech sticker can identify real human emotions | Penn State University[https://www.psu.edu/news/research/story/high-tech-sticker-can-identify-real-human-emotions] / Stretchable, Rechargeable, Multimodal Hybrid Electronics for Decoupled Sensing toward Emotion Detection[https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.nanolett.4c06392]

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