ウイスキーのトリビア 第2回 10連発!『ジョニーウォーカー』面白トリビア - お酒の席で語りたくなるウイスキー裏話
2025年4月26日(土)17時5分 マイナビニュース
シルクハットにステッキの出で立ちで颯爽と歩く「ストライディングマン」のロゴ、そして特徴的な四角いボトルに斜めに貼られたラベル——。見覚えのある人も多いでしょう。世界中のバーや家庭で愛されるスコッチウイスキー、「ジョニーウォーカー」です。
年間販売量は2億本を超え、世界200以上の国と地域で親しまれるジョニーウォーカーは、まさにスコッチウイスキー界の巨人。古い歴史を持ち、世界中で愛飲されているだけあり、面白エピソードがたくさんあります。お酒の席が盛り上がること間違いなしの、ジョニーウォーカーにまつわる驚きの秘密。10個のトリビアと共にひも解いていきましょう。
食料雑貨店から世界へ! ジョニーウォーカー誕生の物語
ジョニーウォーカーの物語は、1820年のスコットランド、キルマーノックという小さな町から始まります。創業者のジョン・ウォーカーは、父の死をきっかけに、わずか14歳で家業の食料雑貨店を継ぎました。今の日本なら中学2年生です。驚きですね。
当時のシングルモルトウイスキーは品質が不安定なこともありました。そこでジョンは、得意だった紅茶やスパイスのブレンド技術をウイスキーに応用します。複数のウイスキーを巧みに混ぜ合わせることで、常に安定した高品質な味わいを生み出すことに成功したのです。これが、ジョニーウォーカーがブレンデッドウイスキーとして歩み出す原点となりました。
ジョンの没後、事業を引き継いだ息子のアレキサンダーは、時代が産業革命の波に乗る中、その才能をさらに開花させます。1860年代には、今ではブランドの象徴となった「四角いボトル」と「斜め24度のラベル」という画期的なデザインを導入しました。
1909年、ジョンの孫にあたる世代がブランド名を正式に「ジョニーウォーカー」とし、「レッドラベル」「ブラックラベル」といった色による製品分類を開始します。このシンプルで分かりやすいカラーシステムも世界中で受け入れられ、ジョニーウォーカーは不動の世界ブランドへと成長を遂げたのです。
■知ればもっと面白い! ジョニーウォーカーの驚きトリビア10選
【トリビア1】銀幕を飾るウイスキー! 数々の名作映画に登場
ジョニーウォーカーはそのアイコニックな存在感から、数多くの映画作品にも登場し、物語に彩りを加えてきました。近未来SFの金字塔『ブレードランナー』では、ハリソン・フォード演じる主人公デッカードがブラックラベルを飲む姿が印象的です。
『ロスト・イン・トランスレーション』では、ビル・マーレイ演じるハリウッドスターがジョニーウォーカーのCM撮影のために来日する、という設定でコミカルに描かれています。また、『キングスマン』シリーズでは、スパイたちの秘密基地にブルーラベルが登場し、「世界が終わる日を祝うために取っておく」特別なボトルとして描かれ、話題を呼びました。
【トリビア2】あの四角いボトルは輸送のための賢い工夫だった!
ジョニーウォーカーといえば、誰もが思い浮かべる四角いボトル。これは単なるデザイン上の選択ではありませんでした。1860年代、船での長距離輸送が主流だった時代、丸いボトルは互いにぶつかって破損しやすく、箱詰めする際にもムダな隙間ができていました。
アレキサンダーが考案した四角いボトルは強度が高く、箱に隙間なく効率的に詰め込むことを可能にしました。これにより、輸送コストを抑え、より多くのボトルを安全に世界へ届けることができたのです。
【トリビア3】ラベルが斜め24度なのは計算された戦略!
ボトルのラベルが正確に24度傾けて貼られていることにも、明確な理由があります。これもアレキサンダーのアイデアで、ラベルを斜めにすることによって、より大きな文字でブランド名を印刷するスペースを確保しました。
お店の棚に並んだときに他のウイスキーより格段に目立ち、遠くからでも一目で「ジョニーウォーカー」と分かる——。この優れた視認性が、世界的なブランド認知度向上に大きく貢献しました。
【トリビア4】ロゴの紳士はランチ中にナプキンから生まれた?
ジョニーウォーカーのシンボル、「ストライディングマン(闊歩する英国紳士)」のロゴ。この印象的なイラストは、1908年に当時の人気イラストレーター、トム・ブラウン氏によって描かれました。一説によると、ブラウン氏がウォーカー兄弟とのランチ中に、レストランのナプキンの裏にさっと描いたスケッチが原型になったと言われています。
【トリビア5】ロゴの向きが変わった!「KEEP WALKING」の精神
実は「ストライディングマン」のロゴは、2000年ごろに大きな変化を遂げました。それまで左向き(過去を振り返る姿)だった紳士のイラストが、右向き(未来へ進む姿)へと変更されたのです。
これは「過去の伝統を尊重しつつも、常に未来へ向かって前進し続ける」というブランドの哲学を視覚的に表現しています。同時に、「KEEP WALKING(歩み続けよ)」という有名なブランドスローガンも大々的に打ち出され、進化し続けるジョニーウォーカーの姿勢を世界に示しました。
【トリビア6】船長が初代アンバサダー!? 世界へ羽ばたいた秘策
19世紀半ば、現代のような広告宣伝手法が確立されていない時代に、アレキサンダー・ウォーカーは実にユニークなマーケティング戦略を実行しました。
世界中の港へ向かう大型船の船長たちを代理店(アンバサダー)として任命し、それぞれの寄港地でジョニーウォーカーを販売・宣伝してもらう、というものです。「船が航行できるところならどこへでも」という言葉通り、この大胆な戦略によって、ジョニーウォーカーは驚くべきスピードで世界市場へと浸透していきました。
【トリビア7】ラベルの色には意味がある! 一番上の色は?
ジョニーウォーカーは、ラベルの色によってグレードや味わい、熟成年数の違いを分かりやすく表現しています。エントリー向けがレッドラベル。コンビニでも売られているので、気軽に楽しめます。次がブラックラベル。昔は高級酒でしたが、今では大量生産による恩恵で手ごろな価格で飲めるようになりました。よりスモーキーなダブルブラックラベルもあります。
グリーンラベルはモルト原酒のみを使ったバテッドモルトで、ブレンデッドウイスキーで使うグレーン原酒を使っていない点が特徴です。そして、最上位となるブルーラベルは圧倒的に美味しく、シリアルナンバーが付いています。
他にも限定ラベルとして、ゴールドラベルやホワイトラベル、プラチナラベルなど、様々な色がリリースされています。
ちなみに、筆者が飲んだジョニーウォーカーの中で一番美味しかったのは「John Walker Oldest」です。ブルーラベルの前身となる限定ボトルで、創業者の「John Walker」名義で表記されているレアボトルです。まろやかでスパイシー、うまみまで感じました。
【トリビア8】英国チャーチル首相の活力源だった!?
第2次世界大戦という困難な時代にイギリスを導いた名宰相ウィンストン・チャーチル。彼はジョニーウォーカーの熱烈な愛飲家としても知られています。
お気に入りはブラックラベルとのことでしたが、レッドラベルをたっぷりのソーダ水で割り、朝の一杯として楽しんでいました。さらに驚くことに、チャーチル自身が描いた、ジョニーウォーカーブラックのボトルが登場する静物画がオークションに出品され、なんと約1億3,000万円もの高値で落札されたという逸話も残っています。
【トリビア9】英国王室も認めた確かな品質「ロイヤルワラント」
卓越した品質と信頼性が認められ、ジョン・ウォーカー&サンズ社は1934年1月1日に、時の英国国王ジョージ5世から「英国王室御用達(ロイヤルワラント)」の称号を授与されました。英国王室に製品を納めることを許された、ごく一部のブランドだけが持てる大変名誉ある称号です。現在でもジョニーウォーカーはこのロイヤルワラントを保持しており、その品質の高さを雄弁に物語っています。
【トリビア10】青い奇跡と職人技! ブルーラベルとマスターブレンダーの秘密
ジョニーウォーカーのラインナップで頂点に立つ「ブルーラベル」。実はこの最高級品が発売されたのは1992年と、ブランドの長い歴史の中では比較的新しい存在です。ブルーラベルには熟成年数の表記がありません。年数にとらわれず、熟成の頂点に達した最高の原酒のみを選び抜いている証しです。
ディアジオ社が保有する1,000万樽ともいわれる膨大なストックの中から、「一万樽に一樽」と称されるほど希少な、15年から時には60年にも及ぶ長期熟成原酒だけが、ブルーラベルのブレンドのために選び出されます。各ボトルには固有のシリアルナンバーが刻印され、その特別さを保証しています。
究極ともいえるブレンドを支えるのは、マスターブレンダーと呼ばれる職人たちです。驚くべきことに、ジョニーウォーカーの200年以上という歴史の中で、マスターブレンダーの地位に就いた人物はわずか7人しかいません。
2025年現在は、初の女性マスターブレンダーであるエマ・ウォーカー氏が、その卓越した技術でブランドの味を守り続けています。ちなみに名字は同じですが、創業家との血縁関係はありません。
■定番にして傑作! ジョニーウォーカー ブラックラベル12年の魅力
数あるジョニーウォーカーのラインナップにおいて、世界中で最も親しまれ、ブランドの顔とも言えるのが「ブラックラベル 12年」、通称「ジョニ黒」でしょう。1909年の発売以来、1世紀以上にわたり愛され続けるこのウイスキーは、スコットランド各地の蒸溜所から集められた、最低でも12年以上熟成した40種類以上の原酒が見事にブレンドされています。
ブラックラベルの魅力は、その絶妙なバランスにあります。アイラ島由来のスモーキーなピート香、スペイサイド由来の華やかでフルーティーな甘み、そして12年熟成ならではのまろやかさと複雑な味わいが、一つのグラスの中で見事に調和しています。
公式のテイスティングノートによれば、外観はいっそう深みを増した黄金色で、香りは甘いバニラがほのかに感じられる、力強い果実の香り。味わいはクリーミーなトフィーと甘い果実とスパイスが舌の上に広がり、フィニッシュは温かみを感じるスモーキーな後味が残ります。
ブラックラベルは楽しみ方も自由自在です。まずはストレートで、その複雑な香りと味わいをじっくりと堪能するのがおすすめです。少量の水を加えると(トワイスアップ)、香りがよりいっそう華やかに開花し、新たな発見があるでしょう。
もちろん、氷を入れたロックでゆっくりと変化を楽しむのも、ソーダで割って爽快なハイボールにするのも良いでしょう。ハイボールにすれば食事との相性も抜群で、ウイスキー初心者にも親しみやすい味わいです。
次にジョニーウォーカーを飲む機会があれば、ぜひこれらのトリビアを思い出しながら、グラスを傾けてみてください。きっと、いつもとは違う、より味わい深い特別な一杯になるはずです。
柳谷智宣 やなぎや とものり 1972年12月生まれ。1998年からITライターとして活動しており、ガジェットからエンタープライズ向けのプロダクトまで幅広い領域で執筆する。近年は、メタバース、AI領域を追いかけていたが、2022年末からは生成AIに夢中になっている。 他に、2018年からNPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立し、ネット詐欺の被害をなくすために活動中。また、お酒が趣味で2012年に原価BARを共同創業。 この著者の記事一覧はこちら