医師の立場からみた、生活の質を保つために必要な体の機能4つとは?自分の優先順位を決めることで、超高齢化社会の医療費に備える

2024年4月30日(火)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

2023年に厚生労働省が発表した「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」によると、人生の最終段階における医療・ケアについて、半数以上の人が「考えたことがある」と回答したそう。そのようななか今回は、お金や住まいに困らず、将来すんなり逝くための「ダンドリ」について専門家に解説していただきました。医師の奥真也先生いわく「お金を準備するためにはいくら貯めるかの目安があったほうがいい」そうで——。

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超長寿時代を生きるため「マイQOL」を知る


近い将来実現するかもしれない高額医療や最先端テクノロジーをどこまで自分の健康やQOL維持のツールに含めるか。私たちはそれを吟味し、それに合わせてお金を準備することが必要になります。

お金を準備するためには「いくら貯めるか」の目安があったほうがいいでしょう。それを知るために、まずは自分にとって大切なQOL、「マイQOL」が何なのかを把握することをおすすめします。

QOLを大きく左右する要素は人によってさまざまですが、私は医師の立場から「目」「耳」「歯」「膝と腰」に着目しています。

年齢を重ねても、この4つの機能をできるだけ維持することがQOLを下げない生き方につながると考えているからです。

お金のことは気にせず、自分の納得のいく選択肢を選べるならそれに越したことはありません。しかし、多くの人は健康維持のために使えるお金には限りがあります。

そのとき、人生において自分の譲れないものは何か、逆に譲れないものを実現するために何ならあきらめていいと思えるのかを知っていなければ、何にどれくらいお金をかけていいかがわかりません。

自分の優先順位を知って、その順番にお金を使えるようになりましょう。

人生において何を大事にしたいか


優先順位を把握するための「『マイQOL』を評価するワークシート」を用意しました。死ぬまで大事にしたい順にA〜Dを1〜4位と順位づけしてみましょう。

考える上で注意していただきたいのが、「健康な状態で一番失いたくない機能」と「健康が損なわれても最期まで一番残したい機能」とは違うかもしれない、ということです。

たとえば、健康なときは読書や音楽鑑賞、映画鑑賞、旅行をあきらめたくないと考えていても、病気のときには自分で食べられるのが一番と考えるかもしれません。

あるいは、健康なときもそうでないときも大事にしたい機能は変わらない、という人もいるかもしれません。


『死に方のダンドリ 将来、すんなり逝くための8つの準備』(著:冨島佑允・奥真也・坂本綾子・岡信太郎・太田垣章子・霜田里絵・中村明澄・大津秀一/ポプラ社)

「健康でないときに最期まで残したい機能」についても考えて、ワークシートに書き込んでみましょう。

これで自分が人生において何を大事にしたいか、何をあきらめてもいいと思っているかがわかります。

優先順位が低い機能については、お金をかけなくても機能を維持していけるように日々メンテナンスに努めなければ、という意識が芽生えるでしょう。

ぜひ時間をつくってワークに取り組んでみていただければと思います。

お金がどれだけ必要か


「マイQOL」の優先順位を把握できたでしょうか。

次は、それぞれの機能を維持するために、お金がどれだけ必要かを考えてみましょう。

たとえば、「できるだけ視力を維持して本が読めることが一番大事。他の機能はあきらめて構わない」という人は、「視力矯正手術」にお金をかけることを考えるかもしれません。

自分の歯がダメになるのは我慢がならないけれども、すでに歯磨きを怠ってきて、将来は入れ歯になる可能性が極めて高いとします。「けれども入れ歯は嫌だ」と考えるなら、次なる選択肢は「インプラント」です。

インプラントにいくらかかるのかをかかりつけの歯科医に相談するか、インターネット検索をするかして、世間の相場を調べてみましょう。

「音楽を長く楽しみたいから、聴こえを維持するのが最優先」と考える人は、爆音が鳴っているところに長時間いないようにする、大音量でイヤホンを使わないというような生活習慣を維持しながら、いつか高音質の補聴器を使うことを考えてお金を準備しておいたほうがいいでしょう。

「できるだけ長く自分の足で歩けることが最優先事項」という人は、年をとって膝の痛みで歩くのが難しくなってきたら再生医療を受けるという手があります。

自身の細胞を増やして膝に注射することで歩けるようになる場合もあるのです。

脊柱管狭窄症による腰痛に悩む人は、外科手術なしで安全に痛みを解消できる腰椎カテーテル治療を選択することもできます。

このように、自分が選択したい高額医療なり最先端デバイスなりを調べて、お金がどれだけ必要かの目安を知ったうえで準備を始めてください。

「いざ」というときのために


ちなみに私は、「いざ」というときのために一定額をすぐに引き出せる預金として準備しており、家族にもその情報を伝えてあります。

「いざ」の内容によって、その金額で十分足りることもあれば、全然足りないこともあるでしょう。

それでも、ある金額で線引きをして、「何か問題が起こったらこの範囲でQOLを下げない生活ができるようにしよう」と考えておくと、少しだけ気持ちが楽になるような気がします。

優先順位は決まったけれども、健康維持にそれほどお金を使えない人は、優先順位の高い順に日常生活でどのようなケアができるかを考えましょう。

何といっても、今の時代に生きる人は長生きをするのは避けられないのです。

目、耳、歯、膝と腰についてはできるだけ長くその機能を維持するほうがQOLは圧倒的に高くなります。

※本稿は、『死に方のダンドリ 将来、すんなり逝くための8つの準備』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。

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