衝撃の大相撲夏場所初日。横綱・大関・関脇が総崩れ。稽古総見で50年ぶりに聞く「琴櫻」の四股名に感激
2024年5月13日(月)14時30分 婦人公論.jp
5月12日、大相撲夏場所が東京・両国国技館で始まりました。「荒れる春場所」のあと、今場所はどうなるのか。『婦人公論』愛読者で相撲をこよなく愛する「しろぼしマーサ」が今場所もテレビ観戦記を綴ります。
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前回「前日車椅子で運ばれた尊富士が110年ぶりとなる新入幕優勝を達成。「皆さんの記憶に残る相撲のために」怪我にめげず強行出場。3賞も全部獲得」はこちら
横綱、大関、関脇が総崩れ
大相撲夏場所は5月12日に東京・両国国技館で初日をむかえたが、横綱、大関、関脇が総崩れするという衝撃の幕開けとなった。
関脇の阿炎と若元春が負け、大関陣の登場となり、カド番の霧島が前頭2枚目・豪ノ山に、貴景勝が前頭2枚目・平戸海に、琴ノ若改め琴櫻が前頭筆頭・大栄翔に敗れた。3大関ともに押し出しで負けた。いよいよ最後の大関として豊昇龍が登場した時、NHKテレビの実況の佐藤洋之アナウンサーが「上位としてはですが、ちょっとヤな雰囲気のなかで結び前の一番にやってきたわけですが…」と言ったが、正面解説の舞の海さんは「豊昇龍の性格として、自分の前に取った3大関が3連敗したことによって、かえって燃えるんじゃないですか」と予想をした。
ところが、豊昇龍は前頭筆頭・熱海富士の上手投げに敗れた。佐藤アナウンサーは透き通るような美声で「大関全滅の初日になりました!」と、予想がはずれた舞の海さんの横で叫んだ。
次に横綱・照ノ富士が新小結・大の里にすくい投げをうたれて負けてしまい、佐藤アナウンサーは「夏場所の初日、上位全滅!」「1横綱4大関、総崩れの夏場所の初日」「関脇以上総崩れという1日にもなりました」と、この波乱の事態を、言葉を変えながら伝えるはめになった。
問題なのが、上位陣の負け方が惜しいというのではなく、対戦相手にのびのびと相撲を取られてしまったところ。2日目からの上位陣の白星獲得のための立て直しに期待したい。
やっと髷が結えた
大の里は出世が早くて髪が伸びるのが間に合わず、やっと髷が結えた状態だ。日本体育大学を卒業し、昨年夏場所に幕下10枚目格付出しでデビュー。入門から6場所で小結になり、先場所はざんばら髪で尊富士と優勝争いをした。
先場所、110年ぶりとなる新入幕優勝を果たした尊富士は、前頭17枚目から今場所は前頭6枚目に昇格したものの、先場所の千秋楽の前日に痛めた右足首の怪我が完治せずに休場。とても残念だ。
国技館の天井近くには、歴代の優勝力士の額が掲げられていて、初日に尊富士の優勝額が披露された。尊富士も出世が早くて髷なので、大銀杏の力士たちの中で違和感というか、凄みがある。初日が終わったばかりで書くのもなんだが、今場所、大の里が優勝したら、髷の力士の額が続き、大相撲史が変わった気がするだろう。
大関復帰を狙う朝乃山は前頭筆頭から小結となったが、巡業中に膝を怪我して休場。ファンとしてかなり残念で、本人もとても悔しいことだろう。
近年の大相撲放送は、力士の怪我や病気の報告が多く、その怪我をどうやってしのいで白星を獲得するかというところに、私の注目は変化してきている。
この日のお目当ては八角理事長
私は5月2日に、入場無料で一般公開される横綱審議委員会による稽古総見が見たくて、早朝に起きて、電車で居眠りをしながら両国国技館へ行った。
両国駅を出たところで、フジテレビの人たちが夕方のニュースのために取材をしていて、私は好きな力士を聞かれた。この日のお目当ては、稽古を厳しく見つめる八角理事長(元横綱・北勝海)だったので、「八角理事長!」と、いつも暗い私としては元気に答えた。しかし、私は放映されなかった。大相撲のことでインタビューされたのが嬉しくて、数少ない友人たちに「テレビに出るかも」とすぐにメールした。夕方に「出なかったよ」と返信がきて、数少ない友人たちに迷惑をかけた。
自由席のため早朝から国技館の外に並んでいた人たちで、前の方のマス席は埋まっていた。後ろの方のマス席が空いていたので相席覚悟で座ったら、八角理事長が見えない位置で悲しかった。
しかし、土俵下で四股を踏みだした照ノ富士は見えた。双眼鏡を取り出して覗いたら、模様が見えた。2020年のアリスのコンサートで双眼鏡を使い、それ以来、引き出しにしまい込んでいたせいで、レンズにカビが生えてしまったのだ。そんなレンズで横綱を拝見するのは失礼なのだが、とりあえず見た。
四股が弱い!どうしたのだろう?と思っていたら、土俵にあがらなかった。総見の日に脇腹を痛めたと、後でテレビのニュースで聞いた。
胸を出します王鵬、ぶつかります聖富士
ぶつかり稽古では、「胸を出します王鵬、ぶつかります聖富士(さとるふじ)」というように、場内アナウンスが流れる。アナウンス担当は、本場所と同じく行司さんだ。
勝てば稽古を続けられる「申し合い」では、勝ち力士に指名されないと稽古ができない。そのためには勝った力士に、自己アピールしなくてはならないので、勝ち力士の前に力士たちが集まる。対戦相手はくるくる変わるので、「東方(ひがしがた)かわって大関・霧島」、「西方(にしがた)かわって明生」というように場内アナウンスがあるので、ありがたかった。
私の周りにいる人たちの会話が聞こえてきた。正代がぶつかり稽古に胸を出したときは、「正代だ、正代だ」と喜んで手を叩き、貴景勝が首を気にした様子を心配し、積極的に稽古しようとする王鵬の姿に「本場所では引いちゃうんだよな、残念だよ」と話している。
琴ノ若の登場の時は、横綱だった祖父の四股名である「琴櫻」でアナウンスがあった。本場所よりも早く、50年ぶりに「琴櫻」の四股名を聞き、ものすごい得をした気持ちになり感激。
そばにいた人たちに「大相撲のどこが好きですか?」と聞いたら、「それが分かんないんですよ。なんかいいんですよ」とのことだった。そう、力士たちのいる風景は、なんかいいのだ。
※「しろぼしマーサ」誕生のきっかけとなった読者体験手記「初代若乃花に魅せられ相撲ファン歴60年。来世こそ男に生まれ変わって大横綱になりたい」はこちら
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