投資で最初に理解しておくべきはズバリ「やめ時」である。業界歴30年のプロ「増えること、増やすこと自体が目的になっていませんか?」

2024年5月16日(木)6時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

2024年1月から新NISAがスタートし、「投資に興味がある」「知識を深めたい」と思っている人も多いはず。しかし、日興アセットマネジメントの今福啓之さんは「運用を始めるだけで何かすごいことが起こるという期待は違う」と話します。そこで今回は、今福さんの2人の娘とそれぞれの夫に向けて書いた、資産形成の大切な考え方を自著『投資信託業界歴30年の父親が娘とその夫に伝える資産形成の本音の話』から、一部引用、再編集してお届けします。

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短期で達成されるならそれが一番では?


投資の話では決まって「長期投資」って言葉が金科玉条のように出てくるよね。

でも長期投資は別に決まりごとではない。同じ結果がもっと短い期間で得られるなら、それに越したことはないじゃない。

まず「投資のやめ時」の話を少ししておくわ。

我々もよく受ける質問は、「始める話はよく耳にするんですが、いつやめればいいものでしょうか? やめ方は?」なんだよね。

そんな時、僕はあえてこんな風に、木で鼻をくくったとも思われそうな答え方をしてきた。

「やめ時は自分の目標金額が達成された時ではないでしょうか。もし達成されたら一刻も早く投信を全部売却して預金に戻すべきではないでしょうか。だって私たちはリスクが嫌いなんですから、もはや無用なリスクを取り続ける理由はないじゃないですか」。

我ながら言い方がどうかなとは思うけど、これは本音だし本質だと思ってることなの。

「大事で本気のお金」と「リスク」


僕らはリスクが嫌いだ。特に命に近い、家族を守るためのお金については本当はリスクなんて取りたくない。

僕は買わないけど宝くじを買ったり、僕はやらないけどパチンコや競馬に使ったりするお金は、まぁリスクが好きなお金なんだろうね。

でも同じ人の中にもそれとは違う、リスクが嫌いな「大事で本気のお金」があるんだよね。

そして「自分でハンドルを握る人生」を自らつくるためには、そうした「大事で本気のお金」にこそリスクを取らせないといけない。

というかそうしないとその人生は手に入らないんだ——というのが、僕がずっとしてきた話だった。いわば「納得ずくのリスクテイク」だね。

嫌いだけど納得してあえて取るリスク。

嫌いなリスクを取り続けている必要はない


僕は証券会社に10年勤めて2000年に今の会社の前の運用会社に転職した時からずっと、「目標金額があってこそのリスクテイク」という考え方をしてきた。

それをセミナーで話したり何かに書いたり、金融機関の人に使ってもらう資料にしたりしてきた一方、自分自身でも実践してきた。


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もし投信による運用がメチャメチャうまくいって「自分でハンドルを握る人生」を実現するに十分な目標金額が達成されたなら、もう嫌いなリスクを取っている状態を続ける必要はないよね。

それこそ、その人生を楽しむために使っていくべきだ。

投資で陥りがちなこと


でも増えること、増やすこと自体が目的になってしまいがちなのも事実。

うまくいってる時に全部売って預金に戻すなんて、実はなかなかできることじゃないんだよね。

僕も証券会社の営業マン時代に、そういうお客さんをたくさん見てきた。常に「次に儲かるものは何?」って感じ。

僕が証券営業をやってたのはもう30年も前だから今はまったく違うんだけど、当時のお客さんは皆「儲ける」という言葉を使った。

「今度は損した。次は儲けるぞ」という具合にね。

僕らは今、「儲ける」という言葉とは真逆な投資について考えているよね。

でも当時、株や投資信託は余裕資金を使って「儲ける」ためにやるものであって、将来自分で人生のハンドルを握っているために、あえて嫌いなリスクを取るのだ——なんてことを考える人は多くなかったと思う。

※本稿は、『投資信託業界歴30年の父親が娘とその夫に伝える資産形成の本音の話』(星海社)の一部を再編集したものです。

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